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隠遁生活一日目と魔法薬

 さて二月、リフトブラウ第四週の光の日から隠遁生活の始まりです。

 二月も終わりだから少し春めき始めている。

 ちなみに、昨日は誘拐当日なのでカウントしない。

 だから、今日が隠遁生活の一日目だ。

 朝から気持ちのいい目覚めだった私は昨日を振り返る。




 精霊樹の下でマジックハウスを起動してから、アーテルと二人でその家の中を探検した。

 見たところ時空間魔法で家の中の空間を広げているみたい。

 外から見た時以上に、中は広くて部屋数が多かった。

 もちろん、トイレもお風呂も完備されている。

 トイレは浄化魔法が付与された魔道具で、掃除も簡単そう。

 そして、お風呂場はアウイナイト公爵家本邸と変わらないくらい、広いし大きな湯船もあった。

 しかも、天井には窓があって夜空と精霊樹が見える。

 これは最高の景色だね。

 シャワーだけでもいいけど、やっぱり今日から湯船に入っちゃう?


「アーテル、今日は湯船も入りたい?」

「うん、入りたい!」


 アーテルも賛成してくれたので、湯船に取り付けられている魔石に魔力を注ぐ。

 今日はデスパンサーとの戦いで魔法を使ったけれど、ほとんど魔力は減っていない。

 魔力を注ぎ終わると、魔石に付与された魔法が発動してお湯が湯船を満たす。

 アーテルは一人で入れるから、その間に私は晩御飯の準備をしようかな。


「アーテル、先に入っていいよ」

「はーい」


 マジックドロワーから石鹸や着替えを出してアーテルに渡す。

 綺麗な景色のお風呂が楽しみなのか、誘拐された後だけれど笑顔を見せてくれるアーテルに少し安心した。

 私はゆっくり入ってねと声をかけてから、キッチンに移動する。


 これから晩御飯を作るんだけど、何を作ろうかな?

 さっき倒したデスパンサーは、解体してない状態でマジックドロワーに入れちゃってる。

 だから、まだ使えないしと言うかデスパンサーが美味しいのかも分かんないんだよね。

 それは今度調べるとして、今日は普通にマジックドロワーにある材料で作ればいいか。

 じゃあまずはサラダかな。

 この世界の食べ物の名前は元が日本の乙女ゲームだからか、同じ名前の物が多い。

 とても分かりやすくて助かります。

 もちろん、オークの肉みたいな魔物の肉とか、この世界独自の野菜や魚、果物も沢山ある。

 サラダに使う為に、レタスとキュウリ、後は茹でて柔らかくなった数種類の豆をマジックドロワーから出す。

 少し前に大豆も見つけたから、どこかに味噌や醤油が無いかな? って考えてる。

 この二つがあれば料理のレパートリーがめっちゃ増えるよね。

 当たり前だけど、お米も欲しいです。

 そして、お米があるならもち米もあるだろうし、そしたらみりんも欲しいね。

 そんな事を考えながら、レタスをちぎりキュウリを切る。

 次に卵に酢と塩胡椒、植物油を取り出してマヨネーズを作った。

 ちぎったレタスに切ったキュウリ、柔らかい豆を一つのボウルに入れてマヨネーズで和える。

 よし、サラダは出来た。

 メインはどうしよう。

 そうだ! バトルチキンを焼いてバジルソースをかければいいかな。

 バトルチキンは好戦的な鳥系の魔物。

 けれど低ランクでも倒せて、普通の鶏と似た味の結構美味しいお肉だ。

 キッチンに備え付けられた魔コンロの魔石に魔力を注ぎ、スイッチを押す。

 次にフライパンとバトルチキンのもも肉を出して焼き始める。

 その間にバジルとニンニク、オリーブオイルに胡桃。後はチーズに塩と胡椒を用意する。

 本当はバジルソースって胡桃じゃなくて松の実なんだけど、松の実が無いから胡桃で代用。

 もう一つの魔コンロをつけて、胡桃をローストしておく。

 ここでメラン様があの部屋に置いてくれていた、フードプロセッサー的な魔道具を取り出してその中に材料を入れる。

 そして、魔道具を動かして材料が細かく砕かれて混ぜ合わさったらバジルソースの出来上がり。

 味見するととても美味しく出来ていたので私は満足です!

 メインとサラダが出来たので、スープは作り置きの野菜たっぷりスープと、買っておいたパンをマジックドロワーから出せば晩御飯の完成。


「我ながら美味しそうな晩御飯が出来たんじゃない?」

「姉さま、お風呂から出たよ」

「おかえり。お風呂どうだった?」


 テーブルに並べられた料理を見て、嬉しそうに笑うアーテル。


「うん、気持ちよかった。姉さまの作った晩ご飯美味しそうだね! 」

「ふふ、良かった。あれ、アーテル髪の毛ちゃんと拭けてないな」

「あ、ほんとだ。えへへ、いい匂いがしてお腹が空いたから急いじゃった」


 私は魔法でアーテルの髪を乾かして、ヘアーブラシで少し髪をといて整えておく。

 これでよし。


「アーテルの髪も乾いたし、ご飯にしよっか」

「はーい」

「じゃあ、いただきます」

「いただきます!」


 まずはサラダを食べる。

 うん、美味しい! 

 シャキシャキのレタスとみずみずしいキュウリ。ホクホクした豆がアクセントになって、そこに出来たてのマヨネーズの美味しさが加わる。

 次はメイン。旨みの濃いバトルチキンのもも肉にバジルの香りと、ニンニクやチーズ、胡桃の旨味がよく合う。

 ううー、こっちも美味しい!


「すごく美味しいよ!」

「ほんと? 初めて使うキッチンだから緊張したけど、大丈夫そう?」

「うん! 姉さますごいね!」


 食事が終わったらアーテルを寝かしつけて、私もお風呂に入る。


「ふぅ、気持ちいいなぁ。さっきはゆっくり見られなかったけど、本当に精霊樹が綺麗。

 あー、こんなにもぴったりな場所があって良かった」


 精霊樹を見上げながら物思いにふける。

 これから大変だろうけど、何とかなるよね。

 アーテルもいるんだし、どうにかするさ!

 そう考えながらお風呂を出て、私も部屋で眠った。




 はい、振り返り終了。

 思ったよりも順調だし、アーテルも落ち着いていて安心した。

 はてさて、今日は何をしようかな?

 この辺りの探索もしてみたいし、メラン様の魔法薬のレシピも試したい。

 でもまぁ、昨日の今日だし家でゆっくり魔法薬を作ろっかな。

 だけど、その前に朝ごはんを作らなきゃね。

 朝は簡単に、スクランブルエッグにサラダとソーセージ。

 後は、昨日と一緒で作り置きしているトマトスープと買い置きのパンを出す。

 うん、シンプルだけど美味しそう。

 アーテルの部屋に入って起こす。


「アーテル、朝だよ。起きて」

「う、うーん。ねえさま?」

「おはよう。体調は大丈夫?」

「うん、大丈夫」


 アーテルは眠そうに目をこすりながら受け答えをする。

 体調は大丈夫そうだね。良かった。

 環境が思いっきり変わったし、昨日は誘拐された事によるストレスもあっただろうから心配だったんだ。

 今後もその辺は注意しておかないと。


「朝ごはん出来たから、顔を洗ったりしておいで」

「はーい!」


 アーテルが顔を洗ったりしている間に、キッチン横にあるテーブルに料理を並べる。


「それじゃあ、いただきます」

「いただきます!」


 二人で楽しく話しながら朝食を食べた。


「今日は、何をするの?」

「うーん、魔法薬を作ろうかなって考えてる。せっかくメラン様のレシピが載った本も貰ったしね」

「ぼく、見ててもいい?」

「いいよ。だけど危ない物もあるから勝手に触っちゃダメだよ」


 そう言うと元気な返事が返ってきたし大丈夫だろう。

 家の中を探検した時に見つけた、調合室に入る。

 机の上にマジックドロワーから材料を取り出し、本を見ながら作り始める。


「まずは下級治癒ポーションかな?」

「あれ? 姉さま、下級治癒ポーションはもう作れるんじゃないの?」

「うん、作れるよ。けど、メラン様のレシピは材料や作り方が少し違うんだ。だから試してみようと思って」


 アーテルは納得したようで深く頷いていた。

 さて、まずは薬草のクラウトとヒール茸、乳鉢と乳棒をマジックドロワーから取り出しておく。

 そして、クラウトとヒール茸は細かく刻んで乳鉢に入れてすり潰す。

 次に魔法で水を出す。この水は出来るだけ綺麗でいい水が良いって書いてあった。

 なので普通の水を出す『ウォーター』の魔法ではなく、光属性を混ぜた合成魔法『クリアウォーター』を使う。


「よし、『クリアウォーター』」


 魔法で出した水を乳鉢に注いで混ぜ合わせる。

 ここに朝露草の実から取れる果汁を入れて、別の器を用意して乳鉢の中身を濾す。

 普通の下級治癒ポーションには朝露草の果汁ではなく、ハルデニアの花を入れる。

 だから、そこがメラン様特製オリジナルレシピのポイントみたい。

 で、いつもは清潔な布で濾していたんだけど、メラン様の本に調合スキルのアーツを使えば、簡単に濾せてしかも品質良くできるって書いてあったので試してみる。


『フィルトレーション』


 ちなみにアーツとは魔法スキル以外のスキルで使える技のようなもの。

 魔力を消費するものとしないものがあり、消費するものであっても魔法を使うほどの魔力は必要ない。

 さっき使った調合スキルのアーツは魔力を必要とする方。

 さて、用意した別の器に注がれた液体をポーション専用の瓶に移す。

 そして、最後に魔力を注いでポーションが光れば完成だ。

 失敗の場合は光らないから分かりやすい。


「出来た」

「綺麗な緑色だね」


 アーテルの言う通り、思った以上に綺麗な緑色になった。

 普通の下級ポーションはもっとくすんだ色だから、メラン様のレシピのおかげだね。

 ついでに鑑定もしてみよう。


 下級治癒ポーション

 とある人物のレシピで作られた通常よりも効果が高い下級治癒ポーション。

 副作用も起きにくく素晴らしい出来だ。


 おお、効果も高いんだ。

 これなら中級や上級の治癒ポーションも期待出来るし、他の魔法薬も凄そうだな。

 この後、お昼ご飯を食べてから中級治癒ポーションや他の魔法薬の作成に取り掛かることにした。


「ご飯も食べ終わったし、続きをはじめよっか。アーテル、ずっと見てるだけで楽しい?」

「うん! 魔法薬ってキラキラしてて見てるだけで楽しいよ」

「そっか。一応、家から本とかも持ってきてるから飽きたら言ってね」

「はーい」


 さて、中級治癒ポーションの作成に取り掛かった所であることに気がついた。

 普通の中級治癒ポーションの材料はあるけど、メラン様のレシピの材料は無い。

 朝露草の実はたまたま買ってたけど、他はマジックドロワーの中を探しても無かった。

 ありゃりゃ、これは明日素材採取かな。

 まぁ、ここは素材の宝庫ウーアシュプルング大樹海だから大丈夫でしょ。

 アーテルに作れなくなった事を伝えて、その日は二人で本を読んで過ごした。

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