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第一話 婚約破棄

「侯爵令嬢アーシャ・リベラルタ、お前との婚約を破棄する!!」


 煌びやかなパーティー会場で、この国の第一王子パプロンはそう叫んだ。


 このパーティーは王子の15となる誕生日を祝うもので、その主役である王子の突然の発言に、それぞれ挨拶に勤しんでいた各領地の有力貴族達も何事かとこちらに注目してくる。


 (第一王子、名前はパプロンだったかしら……? 弱っちぃから興味の欠片もなくなっちゃったのよね。

 それにしても、半分は優しさで出来ていそうな名前だと言うのに、こんな大広間で面と向かってひどい事を言うなんて、全く優しくないわ。

 酷い人…… 強くぶった方がいいのかしら?)

 そう考え、ドレスの下に隠し持っていた練習用の剣を取り出し、王子に突きつけた。


「ひぃぃぃ……!! え、衛兵! 衛兵ぇぇぇ!!」


 王子の声を聞き、バタバタと衛兵が走って来る。


 しかし、王子の婚約者である私を取り押さえてよいものかと思っているのだろう、互いに顔を見合わせて困惑の表情だ。

 (はあ、仕方ない、王子にいきなりこんな事を言い出した理由でも聞くか。)

 私は剣を下に向け王子に向き直った。


「……パプロン様」


「な、なんだ! 婚約破棄なら取り消さないぞ!!」


「一体どうして婚約破棄などと思い立ったのか、お聞きしてもよろしいですか?」


 周りの貴族達も気になるのか王子の方を見る。


「それは…… これが原因だぁああ!!」


 王子は叫び声と共に白のタキシードスーツをバッと脱ぎ捨て上半身を露出させた!!


「「きゃあああああっ」」


 パーティー会場にいた若い女性たちが顔を赤くして嬌声を上げる。


「この破廉恥がァ!」


 私は容赦なく王子の鳩尾に剣をぶっ刺した。


「ごはっ!」


 もちろん練習用の木剣なので身体を切ったりは出来ないが、強い衝撃に王子はガクッと膝をつき、ピクピクと体を折り曲げる。


「王子ーーーーッ!!」


 衛兵が真っ青になって叫び声を上げ、いよいよ私を取り囲む。


「はあ、一撃でその様ですか…… 全くを以て情けないですよ?」


「そ……… れ、だ………」


 王子がかすれた声で何かを言う。


「え?」


「お前は…… 暴力的すぎる…… 俺はもう、嫌だ……」


「そんな…… これくらいで」


「これくらい、じゃない…… 俺が、一応、婚約者だからと、会いに行ったら、いつもいつも剣の稽古だ……!

 俺の体を見ろ……アーシャ。 青アザだらけだ。 もう我慢できない、俺は……」


 そう言って王子は近くにいた小柄な女の子を抱き寄せた。


「このミリエッタと婚約する!」


 そう王子が言った相手は私と同じ公爵の位を持つ家の娘ミリエッタだった。


「きゃっ、王子ったら大胆」


 ミリエッタ嬢は王子に抱きつき、私をキリッと睨む


「そんなわけで、あなたにはここで退場してもらいましてよ、最悪の!暴力女! ……ああ、今までなんて痛い目にあって来たのかしら、可哀想なパプロン! でも、もう大丈夫、私が婚約者となったからにはね」


「……」


 うーん、これは参った。周りを見てもこの婚約破棄と婚約成立を歓迎しているムード。どうやら私の味方はいないようです。


 そりゃそうですね……

 土壇場の婚約破棄なら国も混乱しますが、まだ王子も若いですからね。


 私は屋敷に帰ったら父親が怒り狂う姿を想像し、少し息を吐くのであった。

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