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在宅勤務で倒せ大魔王!~または30過ぎ無職うつ病魔法使いの異世界リハビリ生活~  作者: 於田縫紀
第6章 国の動静。俺の動静。

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第32話 旧友に聞く街の情勢

 本来は徴税使は村長の家に宿泊する。

 でも今回は旧友だからという事で俺の家に招かせてもらった。

 空いている部屋もあることだし。

 なお俺の家に招いたのは他にも理由がある。

 王国軍の部隊が獣人の村を攻めようとした件。

 その辺について王国側の動静を聞こうと思ったのだ。


「それにしてもやっぱり軍はあわなかったか、サクヤは」

「まあな。馬鹿でも家柄がいいのが出世するのはいいとしてさ。その馬鹿が自分の価値を間違って認識していて偉そうにしているのにうんざりした」

「まあ王国軍なんてそんなものさ。付近の国家も最近は仕掛けて来ないからな。馬鹿で家柄だけでも何とかなる。ただそのお馬鹿の1人がこの前自滅したようだけれどな。ドゥフル伯爵家の馬鹿長男、あれ軍でお前の同期じゃなかったっけか」

 俺が話を持ち出すまでもなかった。


「ああ、オマルか。あのバカが何かしたのか」

「指揮下の歩兵2個小隊を勝手に使った上全員未帰還だと」

 そういう扱いになっていたのか。

「何をやったんだ?」

「さあな。親父のドゥフル伯爵は陰謀だとか騒いでいるらしい。誰も聞いちゃいねえ状態だがな。元々評判もあまり良くなかったようだし」


 平和なのはいい事には違いない。

 でもそのおかげでこの国の軍は腐っている。

 無能だが肩書だけは高い貴族出の士官が勝手に部隊を私物化しているなんて事も珍しくない。

 少し前にはやはり伯爵家出身の百人隊長ケントゥリオが部隊を勝手に動かして自分の領地の開拓作業をさせていたなんて事もあった。

 あれでも確か本人の除隊だけで他におとがめはなかったんだっけか。

 そんな事があって少しは軍規も厳しくなったかと思えば、厳しくなったのは下士官以下だけ。

 だいたい軍隊を勝手に動かすなんて謀反と思われても仕方ないだろう。

 まあ腐っているのは軍だけじゃない。

 官僚機構もだ。

 現場に近い処以外はもはやこの国は終わりかけている。

 近くに有力な国が他に無いから維持できているだけだ。


「ところでドゥフル伯爵は何故陰謀とか騒いでいるんだ。根拠でも何かあるのか」

「行方不明になる前にオマル本人が言っていたんだと。『言えないが重大な使命を受けた』とな。ただドゥフル伯爵と取り巻き以外誰もそんなの信じちゃいない。作り話にしろもう少し説得力あるものにしてくれって感じでさ」

 こっちの方の話はこれ以上先はないみたいだな。

 ならもう一つの方から聴いてみるか。


「あと北の方から来た行商人に聞いたんだけれどな。最近向こうで獣人を敵視する怪しい宗教が何か流行っているらしいっていうのは本当か?」

「ああ、あれか」

 ラウルは肩をすくめて見せた。

「あれは何ということはない、ただの怠け者の憂さ晴らしだな。獣人に取られた土地を取り戻して人間の栄光を再来させようって奴だ。実際には獣人は土地を攻めて取った訳じゃないけれどな。

 ただ獣人の集落を攻めて領地を広げる口実になるって訳で、利用しようとする貴族もいるらしい。ま、うちには関係ないけれどな。うちの体制じゃ周囲の獣人集落がないと他国や魔獣から攻撃された場合目もあてられない」

 うちのような弱小領地は獣人と共存してやっとという感じだからな。


「でもこの近所の獣人の村が冬の流行風邪で2つ全滅してさ。ちょっとこの開拓村も厳しくなるかもしれないな」

「そうなのか。あの流行風邪は確かに酷かったが」

「うちのファナはその生き残りだ」

「そうか」

 なおファナはもう寝ている。

 流石にファナの前ではあの村が全滅した話をするのは気が引けるしな。

 ファナが早寝早起きでちょうどよかった。


「でも今はあまり街方面へその子を連れて行かない方がいいな。さっきも言ったとおり獣人を攻めようなんて貴族がいる御時世だ。正直街の方はあまり獣人にとっていい空気じゃない」

 なるほどな。

 そこまで考えてふと思いついた。

「まさか行方不明になっているオマル、獣人を攻めようとしたんじゃないだろうな」


「いくらあの馬鹿でもそんな事はしないだろ」

 ラウルの意見はこうだ。

「そもそも一般人と獣人が歩兵で戦って勝てる訳が無いだろ。相当な戦力比があったとしてもだ。確かにドゥフル伯爵は獣人を攻めようという側の貴族(バカ)の1人だ。でも獣人に歩兵部隊を向ける馬鹿はしないだろ。せめて魔法部隊1個分隊か、強力な賢者・大魔導士レベルの魔法使いを同伴させなきゃな。まあその辺は流石に百人隊長ケントゥリオレベルが如何こうできるもんじゃないが」

 魔法部隊関係は流石に軍でも千人隊長レベルでないと動かせない。

 その辺を務めているのは現役の大貴族本人自身とか国王家遠戚とか辺りだ。


「確かにそうだな」

 俺はそう返事するが頭の中ではある疑問というか疑念が燻り始めている。

 もし馬鹿オマルが領土拡張の為に獣人を排斥する宗教を利用しようと思ったとしてだ。

 あの魔法使いが力を貸してくれると確信したらのってしまうのではないか。

 奴は馬鹿だから貴族家の栄光とか権力とかを無造作に信じている。

 だからそれにあの魔法使いが従うと思ったのではないか。


 もしそうだとしたらラウルの言う通り、当分はファナ連れで街に出ない方がいいだろう。

 そんな空気が広がっているとしたら危険すぎる。

 学校に通わせるというのも無理そうだな。

 元々上級貴族が幅を利かせて面倒なところだったけれど、今はもっと駄目そうだ。


 そんな事を考えて俺は気付く。

 ここはあくまで仮想世界だったよなと。

 でも例え仮想世界であっても俺自身にとってここは大切な場所だ。

 ファナだっている事だしな。

 何とか平和で幸福であってほしい。

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