表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
在宅勤務で倒せ大魔王!~または30過ぎ無職うつ病魔法使いの異世界リハビリ生活~  作者: 於田縫紀
第4章 雨期は農繁期。でも他にも色々と

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/56

第22話 季節外れの行商人

 2年目の農業も順調だ。

 ジャガイモもキヌアもいい感じで生育している。

 強いて言えば耐センチュウ対策用の芋畑の方が今ひとつ。

 まだセンチュウが育っていないせいか被害が今ひとつ確認できない。

 もう少し経つと被害もわかるようになるのだろうけれど。

 被害が少なそうなものを選んで交配させ、種を作ってまた植えて……

 その計画はまだまだかかりそうだ。

 あとは昨年ジャガイモやキヌアのところはソラマメと大麦。

 これも順調。

 雑草取りもマルチもどきのおかげでかなり少なめ。

 畝の間を特製の鍬でかき取るだけもある程度取ることが出来る。

 

 そんな感じでうんえいからの仕事をあまり気にせず、農作業中心にやっている最中。

 ラマを数頭引き連れて行商人がやってきた。

 雨期、こんな辺境の開拓村まで出向いてくる行商人なんて普通はまず無い。

 しかも今回の行商人は珍しい事に若い女性、それも単独らしい。

 なので村中の人々が行商人の滞在している村長の家に集まった。

 皆さん物珍しいのが好きというべきだろうか。

 でもまあこんな田舎は娯楽が殆どないから仕方無い。

 勿論俺もファナのほか、使用人の皆さんと一緒にやじうま根性丸出しで見に行く。


 売っているものはなかなか面白い。

 基本的な塩とか砂糖等の調味料、トウモロコシ酒といった一般的なものは当然。

 この辺には無いフォーク状の農機具や刃がギザギザになった草取り専用農機具。

 衣装用のカラフルな布地。

 元々のここの文化では存在しない紙や筆記具なんて貴重品もある。

 そんな訳でついつい色々と買い物をしてしまった。

 ファナにねだられたり使用人の皆さんの『これ便利そうなんだけれど』という視線に負けてしまった面もある。


「今まで見かけなかったのだがどこから来たのじゃ?」

 村長のそんな質問に行商人の彼女はにこりとして応える。

「ローサと申しますわ。生まれは遠く東にあるニホンという処です。今はあちこちで面白いと思う素材を仕入れて、気ままに旅して商売しております。以降宜しくお願いいたしますわ」


 何、日本だと!

 気のせいじゃないよな。

 俺は行商人の顔を気付かれないように観察する。

 そこそこ若い女性だ。

 だいたい俺のアバターと同じくらいの年齢設定だろうか。

 だが顔だけでは日本人かどうかはわからない。

 だからある質問をしてみる。

「ニホンのどの辺の生まれですか。俺の知り合いはイタ

バシにいたらしいけれど」

「それは奇遇ですね。隣のネリマ、シャクジイという寒村です」


 間違いない。

 この女性は使徒(プレイヤー)か同僚か、さもなくば敵だ。

 そしてこいつも俺がこの世界外の存在という事に気づいただろう。

 ひょっとしたらこの世界の人間とは違う観点の情報を入手できるかもしれない。

 ただ危険の可能性もある。

 どう出ようか。

 ステータス画面では使徒(プレイヤー)もこの世界の人間も敵も区別はつかない。


「それなら奇遇ついでにサービス致しますね。この本を一冊どうぞ」

 向こうからアクションを仕掛けて来たようだ。

 俺は本を受け取る。

「さて、私は明日の朝までここにお世話になります。ですので何か御用がありましたら是非ともお声をおかけ下さい」

 きっと何か本に書いてあるのだろう。

 ただ他人に見られてまずい事が書いてあったら困る。


「サクヤ様、もう行きましょう」

 何故かファナがご機嫌斜めになったのでここで帰ることにする。

 なお色々購入した農機具などはリアカーを持ってきたので使用人に運んでもらう事にした。

 俺自身は本だけ持ってファナと帰る事にする。

 ちょっと歩いたところでファナが俺の方を見た。

「サクヤ様はああいう女性がお好みですか?」

 えっ?

「うーん、考えてもみなかったな」

 つい正直に答えてしまう。

「だって若くて美人ですし、サクヤ様もずっと顔を見ていたじゃないですか」

 そうだったかな。

 でもさ。

「それはちょっと懐かしい地名を聞いたからだと思うぞ。それにファナの方が綺麗だし可愛い」

 あ、つい本音が出てしまった。


「もう、そうやって誤魔化して」

 むくれたふりをしているが機嫌は直ったようだ。

 それくらいは今では大体わかる。

「それじゃ私はミラちゃんの処に行ってきますね」

「はいはい」

 ミラちゃんというのは村のファナより少し年下の女の子だ。

 今は一緒に遊んだり文字を教えたりもしているらしい。

 さて、家に帰って本を確認するとするか。


 そんな訳で家に戻ってきて、早速俺の部屋兼寝室で本を開く。

 本そのものは手のひらサイズでちょっと分厚い手帳のような感じ。

 革表紙で中は和紙と同じような手すきの紙。

 行商人から買ったものと同種の紙だ。

 まず開いた最初のページは白紙だった。

 以降そのまま白紙のページが続く。

 まさか本当にサービス品だったんじゃないだろうな。

 そういう疑いを持ち始めた頃、やっと俺は問題の記述を発見した。

 アドレスと時間、それと『user:guest pass:Yanamca』とが書いてある。

 なおこの場合のアドレスとはいわゆるWebのアドレス。

 ちなみにこのゲーム外のものだ。

 時間は『11:30PM~0:00AM』とある。


 外の世界の現在時間を確認する。

 現在時間は午後9時03分。

 今夜ファナ達が寝たらログアウトして出かける事にしよう。

 ゲーム外ならファナや村の心配はしなくていいだろう。

 そう俺は判断するとアドレスと時間のメモをテンポラリへと転送。

 書籍は机の引き出しの奥へ仕舞った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ