表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RAIDO  作者: 早香
4/5

第4話 リドとの出会い

 店を畳んだのは太陽が沈み人通りが少なくなってからだった。この日売れた服は4着だとイディは言った。ライドはイディが稼いだ金を見た。

「これでバナナが4つは買えるね、でもちょっと少なくないか?」ライドは聞いた。

イディの顔が曇る。

「じゃあ行こうか。」イディはライドの質問に答えず、畳んだ荷物を抱えて歩き出した。ライドは不思議に思いながら付いて歩いた。

「ここだよ。」イディが止まったのは、大きな門の前だった。門の奥には広大な敷地が広がっている。

「ここが?」ライドは尋ねた。

「うん、俺の雇い主、リド・マーリンの家だよ。」

「家!?こんなでかいのが!?」

「リドはここら辺じゃ有名な資産家なんだ、たくさんの人たちに仕事を用意してくれて、町にもたくさんのお金を寄付してくれてるんだ。みんなリドには頭が上がらないよ。だからきっとライドにも仕事を紹介してくれるさ。」イディはゆっくりと門を開けて、中へ入った。ライドも後に続く。

中に入ってしばらく歩くと大きな屋敷が現れた。イディは屋敷の前に立ち、チャイムを鳴らした。しばらくして、大きな図体の男が出てきた。ライドはその貫禄に思わず後ずさった。浅黒い肌に高い身長、いかにも高級そうな煌びやかな布をまとっている。顔には笑みが浮かんでいるが軽々しく近寄れない高圧的な雰囲気があった。

「これ、今日の売り上げです。」イディは売上金を渡した。ライドはその額に驚いた。イディはなんと売り上げの半分ものお金を差し出したのだ。

「おお、今日もご苦労さん、イディ。」リドは笑顔でそれを平然と受け取った。

「して、この子は?」リドはライドを見た。

「あ、ライドといって、仕事を探しているそうなんです。何か紹介してくれませんか?」イディは言った、

「ふーむ・・・。」リドはライドへ顔を近づけた。

「見ない顔だ・・・・少し異国の匂いがするな、どこから来たんだ?両親はどこにいる?」口調は優しいが明らかに怪しんでいる。ライドは少し焦りを感じたが、平静を装うように努めた。

「ライドです、少し遠くから来ました。両親とは途中ではぐれてしまいました。」これはアルが両親について聞かれたときに用意していた言葉だ、余計な事は喋らなくていい、そう言われていた。

「・・・・・」リドは少し黙ったままライドを見つめた。ライドはこれまで人に対してここまで脅威を感じたことがなかった。まるで、ジャングルで毒ヘビに対峙した時のようだ。ライドは自分でも気付かぬ内に冷や汗をかいていた。

「・・・まあ良い。俺に仕事を紹介してくれと頼むやつは色んな事情を抱えているもんだ。」リドはライドの胸の内を見透かしているかのように言った。

「ではライド、お前には明日からイディの隣で靴を売ってもらう。イディ、面倒見てやれ。」

ライドは与えられた仕事に文句を言うつもりはなかったが、どうしても腑に落ちないことがあった。

「あの、」ライドは思い切って切り出した。

「売上の半分というのは少し多すぎるのではないでしょうか。そんなに取られてしまうと十分なご飯が買えません。」

リドの眉毛がぴくりと動き、顔から笑顔が消えた。そして口を開けた瞬間、イディが即座に割り込んだ。

「申し訳ありません。ライドは何も知らないんです。よく言っておきますからお許しください!」

リドはその言葉を聞いて笑みを取り戻した。

「よろしく頼むぞ。」そう言って家の中へ入り、扉が閉まった。

ライドはイディをちらりと見た。

「とりあえずここを出よう。」

敷地の外に出て、ようやくイディは話し出した。

「リドに逆らったらだめだ。ここら辺の人は頭が上がらないって話したろ?リドは単なる資産家ってだけじゃなく、詳しくは分からないけど、町にたくさんの仕事を持ってきたり、町の道路や電気の整備するお金もリドの財源で賄っているって話しだ。政治家だってリドには逆らえないさ。リドに嫌われた人はみんなここじゃ仕事が見つからなくなって他所に行くしかなくなるんだ。」

イディは続けた。

「政治家?」ライドは聞いた。

「・・・政治家も知らないの?えーっと、政治家は、町や国をどうやって良くするか考えたり、みんなの意見を聞いて話し合ったり、とにかく、要はみんなのリーダーさ。」イディは答えた。

「えっ、リーダーでさえ逆らえないってこと!?」ライドは驚いた。

イディは頷きながら続けた。

「そう。それくらいの権力を握っているんだ。でもリドは決して悪い人じゃないんだ。こんな孤児の俺たちにでも仕事をくれる。他所だと子供たちはどんなに貧しくても雇ってもらえず、ごみ拾いや物乞いをするしかない。それに悪党がやってきては子供をさらってどこかに売り飛ばすって話も聞いたことがある。ここはリドが目を光らせているからそんな心配もない。ライド、君はいいところに来たんだよ。」

売り飛ばす?って俺たちを金に換えるってことか!?助けてくれる大人はいないのか!?ライドの頭は混乱していた。「外」はこんなひどい場所なのか!?

「でも、それでも、、半分も持っていく理由にはならないだろ!?金をたくさん持っているっていうならなぜあんな少ない売り上げから半分も持っていくんだ!?子供からこんなに取り上げるなんて良い人のすることじゃない。」

「いや、それが妥当なんだ。そりゃ俺だって最初はなんでって思ったさ。後から知ったけどここでは路上で物を売る場合はちゃんと許可を得ることと毎月場所代がを支払う必要があるんだ。その金額は服が3,4着売れたくらいじゃ払えるような金額じゃないらしい。それをリドが補ってくれているから、むしろ良くしてもらっているんだよ。」

「許可?場所代?また政治家ってやつらにか?」

「いいや、・・法律さ。」

「法律?」またもや聞いたことのない言葉だ。だが、なぜかライドはその言葉に深く惹きつけられた。

「うん、つまりこの世界のルールさ。法律には政治家もリドも、誰も逆らえない。法に反したら警察に捕まって罰金や刑務所に入れられる。でも別に怖がることじゃない。真っ当に生活していたらそんなことにはならないよ。」

なるほど、部族の掟のようなものか、ライドは思った。それと同時にたくさんの疑問が湧いてくる。子供をさらうという悪人たちはなぜ捕まらない?なぜ政治家はイディのような大変な生活をしている子供たちを助けない?なぜ場所代がそんなに高い?これではお金を持っている人ほどたくさん物を売ることができるじゃないか。また、ライドはこうも思った。

・・・とにかく法律だ。「外」は、これを良く知っている者に有利になるようにできているに違いない、と。

「とりあえずもう遅いし、俺の寝泊まりしている場所に案内するよ。」イディは笑顔で言った。

「ありがとう。助かる。」ライドはそう言ってイディの後に続いた。

読んでくださってありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ