第3話 初めての「外」
ライドは部族の大人の一人、ルイに付き添われて川をくだった。目的の地に着いたのは翌日の朝だった、着いたぞ、ルイの言葉でライドは目を覚ました。
ルイは船を岸へ寄せ、言った。
「俺が案内できるのはここまでだ。この先をまっすぐ行くと「外」だ。くれぐれも気を付けていけ。」
ライドは頷き、お礼を言った。ルイの指さした方角へまっすぐ歩いた。丸半日歩いただろうか。いきなり、目の前に「外」の町が広がっていた。車や自転車、たくさんのお店、そして、たくさんの「外」の人々、初めて見るものばかりだ。ライドはまるで未来へタイムスリップしたかのようだった。お腹が空いたので、果物がたくさん並んだお店へ立ち寄った。緊張しながらもバナナを手に取り、持っていた「カネ」を差し出した。店主は笑顔で受け取り、お釣りを差し出した。ライドも小さな笑みを浮かべて受け取った、なるほど、こう使うのか、そう思いながらも、改めてこんな小さな鉱石が価値を持っていることに驚き、また自分で買えた喜びにひどく興奮した。
だが、興奮が止まぬ内に気付いた。手持ちの「カネ」では1ヶ月も持たない、と。ライドは辺りを見回した。どこを見ても建物と人、狩りが出来そうな森や川はない、いや、あったとしても狩りに必要な道具は全て置いてきた。ムバーバ族の道具は特殊で持ち出しが禁止されていたからだ。「カネ」を見つめながらライドは思った。ここで生きるためには、これを手に入れなければ。
だがどうやって?ライドは歩きながら街中をじっくりと見た。様々な音や匂い、ごちゃごちゃとした景色が一気に押し寄せる。思考が混乱する中で、路上で服を売っている自分と同じくらいの歳の少年が目に入る。ライドは思いきって話しかけることにした。
「何してるの?」
少年は答えた。
「服を売ってるんだよ。」そして続けた。
「君、見かけない顔だね。どこから来たの?良かったら買ってかない?」
ライドも答える。
「うん、少し遠いとこから来たんだ。俺も「カネ」を稼ぎたいんだけどどうやって見つけるの?」
少年はちょっとがっかりしながら言った。
「仕事探してるの?それなら、俺の雇い主に話してあげるよ。色んな仕事を紹介してくれるから。あ、俺の仕事が終わってからになるけど。」
「カネ」を稼ぐことは仕事っていうのか。何にしても何とかなりそうだ、とライドは安心した。
「助かるよ、ありがとう。それまでここに一緒にいていい?俺ライド。」
「俺はイディ。よろしく。」
ライドは日没までイディの隣で服を売る手伝いをしながら色んな話を聞いた。イディはライドが全く物を知らないことに驚いたが、市場で色んな人々を見てきているイディはそれを不思議に思うことはなかったようだ。ライドは聞くもの全てが新鮮で日没まであっという間に過ぎていった。
読んでくださってありがとうございます。これからもライドの行く末を見守ってくださると嬉しいです。