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代償愛  作者: リリ
4/10

竜族の娘

今回は少し長めのなんとやらです。

…ここは何処だろう。

冷たい液体だな…


「…✕✕✕、やっと貴方の××××を見つけたの…」


よく聞き取れなかった…

まるで私の✕✕✕を拒絶するかのような…

私は✕✕✕と言う✕✕✕だと本能が教えてくれた…


「これでようやく貴方が目覚めるわ…」


目覚める?

私は寝てるのか…


「貴方は私だけのものよ…絶対に失う訳にはいかない…」


私は薄目を開けて声の主を見た。

よく見えない…

多分女の人…

私は何をしているのだろうか…

よくわからない…

冷たい液体が身体を覆っている感覚は分かるけど…


「あの憎たらしい女も貴方が目覚めれば恐怖に(ヒザマズ)き、そして死を待つだけの身体となるわ…フフッ…フフフフフ…」


私はあの子以外のヒトは嫌いだ…

こいつの様に私を利用する事しか考えてない…

でも、私がここから抜け出る事は出来ない…

私はここを出て会わなければならない…

私と居た名前もわからないあの子に…

その為ならこんなところ…

私は目を見開いた!




「ふわぁ〜…眠い…」


私が大きな欠伸をしているとアカメがやって来て言う。


「サリエラ、村の皆とは仲良くやってけそうかの?」

「うん。リラもアスレートも優しいし、メルティも面白いよ!」

「そうかそうか!それは良かったのう!」


アカメが嬉しそうに笑う。

最近は特に何も無く春風の村のグラシアスから度々手紙が送られてるくらいだ。

私も最近は特にリラと遊んだり、狩りに出かけたりしているんだ。

そうそう、今はアカメの家ではなくて村の外れの森でリラと暮らしてるんだ。


「サリエラ…こっち…来る…」

「あいよー!それじゃ、アカメ、またね!」

「うむ。またの!」


私はアカメに手を振ってリラの元へ行く。


「これ…する…狩り…行く…」

「了解だよー!」


私はリラとともに洗濯物を畳んで、解れた場所を直す。


「にゃあ…難しいなぁ…」

「フフッ…サリエラ…頑張る…」

「よっし!やっと出来たぜ!これでどうだ!」


私は直し終わった服を広げてリラに見せる。

リラは少し楽しそうに頬を緩ませて言う。


「サリエラ…上手…裏…縫ってた…違う…」

「フッフーン♪サリエラちゃんは日々進化しているのであーる!」

「フフッ…そうだね…そろそろ…狩り…行く…」

「了解っ!」


リラの後を追って森へ出る。

そして、いつもの様に森の果物を採ったり、野菜を採ったりしていると…


「リラ、珍しく動物が居るみたいだよ。どうする?」

「待つ…獲物…何処か…知る…」

「それなら私も手伝うよ!」


私は最近手に入れた能力の千里眼で辺りを見回す…

リラも磁場で獲物の位置を探る。


「居たよ!あっちの方向に猪が六匹!」

「まだ…鹿…八匹…居る…」

「あいよ!」


私はリラと獲物の背後に回って一匹ずつ仕留めていく。

七匹仕留めたところでリラが言う。


「これ以上…駄目…帰る…」

「そうだな。帰るか。」

「大量…肉…パーティー…」

「おー!久しぶりの肉パーティーだー!」


私たちは家に帰り、村の皆に分けるものとそうでないものを分ける。


「猪…二匹…アカメ…アスレート…グラン…」

「わかった!一匹は半分にすればいい?」

「うん…野菜…レナ…一個…森人参…」

「ん?一個でいいの?」

「うん…沢山…ある…」

「なるほどね。じゃあ、今日はこれだけね?」

「うん…ご飯…終わる…行く…」

「はいな!」


私は外でテキパキと二匹の猪と三匹の鹿を捌く。

そして、アカメたちの分の二匹の猪も捌いて血抜きをしておく。

リラはその間に中で野菜を調理していた。


「よし。出来たっと…リラー!出来たよー!」

「うん…持つ…来る…」

「はいよー!」


私はこれから食べる分の血抜きした猪と鹿をリラの元に持って行く。

リラがそれを包丁で切って手際よくフライパンに入れる。


「にゃあ…私もホウチョー使ってみたいなぁ…」

「駄目…サリエラ…包丁…危ない…」

「えー…」


私は仕方なく椅子に座って出来上がるのを待っていた。


「サリエラ…出来た…お皿…とる…」

「はーい!」


こんがりと美味しそうな匂いをさせながら、リラの料理がテーブルに並ぶ。


「おおー!美味そうだー!」

「フフッ…サリエラ…肉…好き…リラ…頑張った…」

「いつもリラの料理は美味しいからどうやって作るのか気になるよー」

「フフッ…内緒…」

「まあ、教えてもらっても私一人じゃ出来ないけどね…」

「フフッ…少し…冷めた…食べる…いただきます…」

「うん!いただきます!」


あっという間に二人で目の前にあった料理を食べ終える。


「美味しかった〜!ごちそうさま!」

「うん…ごちそうさまでした…」


そして、二人でお皿を台所に片付ける。


「洗い物は私に任せて!」

「フフッ…サリエラ…お皿…割る…」

「き、今日こそは一枚も割らないもん!」

「フフッ…期待…しない…」

「ひっど!私だってやれば出来るんだからねっ!多分…」


私は少しぎこちなく食器を洗い始める。

リラはその横でテキパキとフライパンとかを洗っていた。



「やっと出来たぁ〜…」

「フフッ…一枚…割る…」

「そ、それは手が滑ったんだよ?!」

「サリエラ…上手…一枚…割る…無い…」

「つ、次は割らないもん!」

「フフッ…期待…しない…」


そんな風に軽口を叩きあいながら出かける用意を済ませる。


「リラ、早く行くよー!」

「サリエラ…待つ…」


リラが重たそうに何かを持ってきていた…


「何それ?」

「わからない…アカメ…見る…分かる…」

「そうなの?アカメって見かけによらず凄いんだね!」

「フフッ…アカメ…聞く…拗ねる…」

「じゃあ、今のは内緒だね!」


そして、私たちは獲物を物々交換して、最後にアカメの元へと行く。


「ふん。私が村の者をみすみす売る様な真似をすると思うてか!残念だが、私はそんなに腐ってはないぞ!今すぐここから出ていくが良い!」

「サリエラ…こっち…」


私はリラに呼ばれて太い樹の裏に隠れる。

アカメの家から一人の黒髪の少女が出て来てアカメに言う。


「せいぜい、奴に用心する様に伝えるんだな。竜の血を引く者よ…そして、その血はいつか取り返す事も忘れるな。」


黒髪の少女は陽に当たってるにも関わらず闇に溶ける様に消える。

アカメが怒りを剥き出しにして言う。


「あんにゃろー!言いたい放題言うだけ言いやがってー!次あったら食い殺してやるー!」


アカメは大きなため息をついて言う。


「はぁ〜…スッキリしたのじゃ!」


リラがアカメの元へ行こうとしていたので私もアカメの元へ獲物を持って行く。


「おー!アリアールにサリエラでは無いか!元気にしておるか?」

「うん…リラ…元気…サリエラ…元気…沢山…」

「リラと二人で取ってきた猪肉だぞ!」

「猪とはこれまた珍しいやつが居たものじゃな!有難くいただくのじゃ!」

「これ…見る…」


リラが重そうな何かをアカメに渡すとアカメが驚いた様に目を見開いて言う。


「これは何処で見つけたのじゃ?!」

「…?リラ…家…庭…埋まる…」

「なんじゃと?!こんなものがまだあったとは…私ももっと念入りに探れば良かったのじゃ…」

「んで、これはなんなの?」

「とある科学者の遺した架空の生物の遺伝子…禁忌の箱(パンドラボックス)じゃ…私はこれを探し求めていた…こんな危険なものを放置する訳にはいかんからの…」


私の中である考えが浮かんでくる。

そんなはずは無いと思っていたけど、口から出たのはそれを知ろうとする意思。


「それって、アカメの事と何か関係があるんだろ?」


アカメは嫌そうな顔をして言う。


「どうせいつかは話さんとならん事じゃ…良いだろう。だが、ここで話すには場所が悪過ぎる。リラ、お前はサリエラと共に例の場所まで行ってくれ。そこで私の全てを話す。」

「………わかった…」


リラはそう言うと私の手を引いてすぐに家に帰り、遠出の支度を始めた。

私は言われるままにリラと遠出の支度をする。


「例の場所…凄く…遠い…長旅…なる…」

「そうなんだ。じゃあ、今日の獲物が役に立つね!」


私がそう言って食べ物を取りに行こうとするとリラが私の服の裾を掴んで言う。


「ダメ…例の場所…食べ物…持てない…決まり…」

「がっくし…まあ、それなら仕方ないね。」


早朝の出発になるとの事だったので夕暮れ前には夕飯を食べて毛繕いをして寝た。



少女の夢を見た…


「ねぇ…✕✕✕はいつかまた会えたら、✕✕✕とこの歌を歌ってくれる?」


竜の尻尾の少女は不安そうに猫の尻尾の少女に言う。


「もちろんよ。私たち二人の約束だからね!」


猫の尻尾の少女が当然だと言う様に胸を張って言う。

そこへ狐の様な尻尾の少女がやって来て言う。


「✕✕✕お姉ちゃんと✕✕✕さん!博士が呼んでたよ!」

「わかった!」

「はいよ!」


3人の少女はその場を後にした…



「ふわぁ〜…眠たい…」


私は言われたくらいの時間に起きた気がした…


「むにゃ…お姉ちゃん…さん…危ないよ…」


リラは嬉しそうに寝言を言いながら寝ていた。

私は窓際に行き、まだ暗い夜明け前の空を眺めて夢で歌っていた歌を歌う…

その姿はまるで昔を懐かしむ者の様に…



「朝の陽が昇り…陽炎は陽に溶け…余を照らす…世も輝きて…」


静かな歌が小さく響く…

少し間を置いて、誰かが言う。


「歌…リラ…故郷…歌…」


声の主はリラの様だ。

声から察するに、驚いた表情をしているだろう…

私は振り返らずに言う。


「あのね…私、誰かは忘れたけど、誰かに初めてこの歌を教えてもらったの…いつかまた会えたら一緒に歌おうねって…何故か今まで忘れてたんだ…こんなにも大切な歌を…」

「そう…」


リラは声こそ落ち着いているもののまだ少し動揺しているようだった。

大切な人によく似た私の表情と思わぬところから聞こえた自分の故郷の歌に…

私は振り返って満面の笑みで言う。


「さてと!私達もご飯を食べたら「例の場所」って所に行くんだよな!めいっぱい食っておかねぇとな!」

「うん…サリエラ…お皿…並べる…リラ…料理…作る…」

「はいな!」


私はお皿を割らないように慎重に並べる。

リラはテキパキと料理を作る。


「完成…」

「早くない?!」


あっと言う間に美味しそうな料理が食卓を彩る。


「フフッ…昨日…作る…ある…」

「なるほどな。早く出る事を見越してって事だな!」

「そう…」


私達は食卓につき手を合わせる。


「「いただきます」」



「ごちそうさま…」


リラは凄い速さで完食して鼻歌を歌いながら外に出て行く。


「早いな…」


私はモチャモチャとゆっくり食事を食べ終えると同時にリラが帰ってくる。


「フフッ…丁度…時間…」


リラが楽しそうに窓から見える日の出を見つめる。

私はお皿を片付けてそっと食器を洗い始める。

リラがふと昔を懐かしむ様に言う。


「リラ…故郷…景色…綺麗…例の場所…同じ…綺麗…」

「そうなんだ。」

「うん…楽しみ…」


私がお皿を洗い終えるとリラが言う。


「出発…時間…無い…」

「待って!着替えてない!」


私は大急ぎで着替えて先に外に出たリラの元へ行く。



しばらくリラに着いて森の中を歩居ているとリラが突然足を止める。

私もリラの後ろで何かの気配を感じ取って止まる。


「近く…いる…」

「うん…気を引き締めて進もう。」


私たちは先ほどよりも気を引き締め、気配を殺して森を歩く。

リラが何かを感じて歩みを止める…

私は千里眼を使って言う。


「アカメ?いや、違うなぁ…誰だありゃ…」


リラは首を傾げてよくわからないと言いたげだった。

私は千里眼で見ながら言う。


「んー…アカメみたいな鱗はあるんだけど、アカメじゃないっぽい…」

竜人(ドラゴニュート)…」

「アカメ以外で居るならばそういう事だろうな…」

「近寄らない…」


そう言ってリラが迂回しようと足を動かした瞬間、何かがこちらに飛んでくるのを感じた。


「危ねぇ!」


私は咄嗟にリラに体当たりする。

背中に激痛を感じながら言う。


「なんだ…てめぇは…」


竜の腕を持つ少女が爪から鮮血を滴らせながら言う。


「答える必要ない…お前達殺す…それが役目…」

「サリエラ…逃げる…強い…」

「駄目だ。さっきのこいつの速さと強さを見ただろ?それに私が怪我をしている以上、血の匂いを辿られれば奇襲をかけられる。」


竜の腕を持つ少女が静かに言う。


「竜の鼻は犬より鋭い…懸命な判断…」

「そりゃどうも。んで、お前はなんでその腕を使っているんだい?」

「答える義理はない…リリアル見つける…それが目的…」

「なら、詳しい事を教えてくれれば私達も一緒に探せるのだが?」

「答える義理はない…」

「つまり、わからねぇんだな?」

「…」

「だったら、なおさら人手が必要なんじゃねぇのか?1人でどんなやつかも分からねぇもんを探すより余程効率的だと思うのだが…」


竜の腕を持つ少女は一瞬考える様にして言う。


「別にいい…アリスは1人で探す…」

「お前、アリスって名前なんだな。私はサリエラだ!こっちはリラ!」

「アリアール・リリエラ・ラシェール…リラ…名前…」

「うっ…あ…」


少女が頭を押さえながら蹲る…


「おい!大丈夫かよ!」

「う…あ…来るな…」


近寄ろうとすれば鋭い爪の一撃が行く手を阻む。

少女の身体が徐々に竜の鱗を纏い始める。


「や…めて…怖い…助け…て…」


少女が完全に竜の鱗に覆われる。


「クハハハハハハハハ!我ガ名ハ、ベルゼニュート!感謝スルゾ雑兵(ゾウヒョウ)ドモ!貴様ラガコイツノ心ヲ揺サブッタオカゲデ我ハ外ニ出ラレタ!褒美ニ極上ノ死ヲ与エテヤロウ!」


その眼がリラを見る。


「マズイ!リラ!避けろ!」


だが奴は私の声を合図としたかのように爪を前に突き出し、凄まじい速さでリラに接近する。


「危ない…」


リラはギリギリのところで4本の尻尾で爪の一撃を防いでいた。

ベルゼニュートはゲラゲラと下品に笑いながら言う。


「イイゾ…我ヲモット楽シマセロ!」

「サリエラ…逃げる…リラ…一人…充分…」


リラがそう言うとベルゼニュートが楽しそうに言う。


「クハハハハハ!我ニ一人デ戦オウト言ウカ雑兵風情ガ…オモシロイ…望ミ通リ貴様カラ殺シテヤロウ!」


私はベルゼニュートが喋っている隙を狙って背後から爪をその背中に突き刺そうと飛びかかる。


「邪魔ダ…」


ベルゼニュートの尻尾で軽く吹き飛ばされてしまった。

私は痛みと怪我で動けなくなる。


「…許さない!」


リラの青い瞳が深紅に染まり輝く!


「クハハハハハ!雑兵ノクセニ生意気ナ!」


リラから十本の尻尾が現れる。


「アリエス…力…貸す…」


リラの銀髪が金色に輝く!


「ベルゼニュート…お前の罪は万死に値する…」

「フン!雑兵ガ図ニ乗ルナヨ?」


ベルゼニュートが凄まじい速さでリラの首を切り裂こうとその爪を振るう。


「やめておけ…」


リラは涼しい顔をして片手でベルゼニュートの爪を止めていた。


「雑兵ゴトキガ我ニ軽々シク触レルナァ!」


ベルゼニュートが怒りを露わにしてもう一方の爪で切り裂こうとする。


「聞こえなかったか?やめておけと言っている。」


ベルゼニュートの爪が左右共に粉々に砕け散る。


「調子ニ乗ルナァ!」


ベルゼニュートがさらに怒り、リラに猛攻を仕掛けるがリラは涼しい顔をして避けていた。


「だから、やめておけと言っただろう?」


リラの尻尾による強烈な右フックがベルゼニュートを抉る!


「ガハ?!」

「ベルゼニュート…年貢の納め時だ…消えるが良い…」

「雑兵風情ガイイ気ニナッテンジャネェ!」

「まともな判断も出来ぬかベルゼニュート…良い!ならばその魂に叩き込んでやろう!」


ベルゼニュートがリラに突っ込んでいく、リラはそれを避けては尻尾で数発殴る。

リラが圧倒的に見えたこの戦いに私も安心して治癒に専念出来ていた。

しかし、強過ぎる力には制限がある。

リラが突然距離を取り始める。

ベルゼニュートを遠くから尻尾殴り続けていた。

ベルゼニュートは先ほどより余裕がある表情になっていた。


「ドウシタ雑兵…先ホドノヨウナ勢イガナイゾ?口ダケカ?」

「チッ…」


心無しか、リラの輝きも薄れてる様な…


「リラ…すまぬ…ここまでじゃ…」


リラの尻尾が九本になり、輝きが消える。


「はぁ…はぁ…アリエス…時間…倒せない…」

「クハハハハハ!雑兵!貴様ノソノ(チカラ)ニハ時間制限ガアルヨウダナ!今マデノ礼ハタップリト返サセテモラウゾ!」

「ぐっ!」


リラはベルゼニュートの攻撃を九本の尻尾で受け止める。

ベルゼニュートの猛攻にリラが防戦一方となる。

やがて、防ぎきれずにベルゼニュートの攻撃が通り始める。


「ガハッ!」


リラがベルゼニュートの強烈なパンチをまともに腹に受けて吐血する。

ベルゼニュートが叩きつけるように尻尾でリラを薙ぎ払う。

リラは大木に叩きつけられて意識を失っていた。


「終ワリダ…雑兵…雑兵ニシテハ強カッタゾ…」


ベルゼニュートが漆黒の球をリラに向けて投げ飛ばす。

凄まじい衝撃が発生する。


「はぁ…はぁ…間に…合った…ぜ…」

「ホウ?生キテオッタカ雑兵メ…」

「悪ぃが、私はしぶといんでね。そう簡単には死なねぇよ。」


私は抱えていたリラを戦場の隅へ横たわらせる。

そして、ベルゼニュートを睨んで言う。


「さっきまでの私とは一味も二味も違うぜ?ベルゼニュートさんよぉ?」

「フン…雑兵ガ何度来ヨウト同ジコトダ…」


私は素早くベルゼニュートの背後に回って言う。


「これを見てもそれが言えるかな?」

「グウッ?!」


ベルゼニュートの左腕の鱗が全て切り落とされ、ベルゼニュートが片膝をつく。

ベルゼニュートの鮮やかな鮮血がその左腕から滴り落ちる。


「貴様…許さン…許サんゾオオオオおオ!」

「予想通りだ。この鱗自体がベルゼニュートで、それを剥げばお前は倒せる。まさかとは思ったが、こんな簡単な攻略法で良かったとはな…リラとアリエスが時間を稼いでくれたおかげでお前の弱点がわかった。」

「雑兵風情がァァァァァアァァァァアァ!」


ベルゼニュートが怒り狂い、凄まじい速さで殴りかかってくる。


「遅い!」

「ぐアっ?!」


ベルゼニュートの顔の鱗が半分落ちる。

私は静かに言う。


「お前の負けだ…とっとと失せねば死ぬだけだぞ…」

「雑兵が…我をここまで…ぐっ…まだだ…まだ我は暗闇に帰るわけには…」

「ベルゼニュート、お前は暗いのが嫌いか?」


ベルゼニュートは何が言いたいのか分からないと言いたげに私を見る。


「私は見ての通り、化猫(ネコ)だから暗いところも好きだし、明るいところも好きだ…」

「だからなんだと言うのだ…我は…」

「安心しろ。暗闇が怖いと言うなら照らしてやろう…だから、今は帰るが良い。お前にも照らされる権利はある。私が照らしてみせる。だから…」


私はベルゼニュートを抱き寄せて言う。


「その心に私を刻み込め…そして、安心して待っているがいい…」


ベルゼニュートは涙を流していた…

何も言うことも無く鱗が全て剥がれ落ちる。


「ベルゼニュート…お前の涙…ちゃんと刻んだからな…」


私の中に何かの力を感じた…

でも、私は今はそれは気にしない事にした。


「お姉ちゃん…」


サリエラの腕の中で小さな声が零れ落ちた…

〜メモを含めた用語紹介〜


第二人格(セカンドコード)

この世界には強過ぎる力を抑制する為に第二人格と言う特殊な人格を形成する事がある。

第二人格は元々の人格をコピーした性格になる事が多く、通常の人格よりも遥かに強い力を持つと言う。

また元々多重人格(インフィニア)だった者は主人格以外の人格が第二人格となり、主人格(オリジナル)とは違った性質になる事もある。

また第二人格が認め、信用した者に同様の力が芽生える事もある。


幻界能力(アンリミットスキル)

この世界において神をも凌駕する力は幻界能力として扱われる。

通常の能力(スキル)よりも遥かに強い能力で所有者の素質により、その能力が決まる。

同じ能力でも所有者の力や性格、素質によって異なる能力になる。

そして、多くの場合は第二人格のみ扱える能力である。


終焉能力(クロアデュール)

この世界において全てを無に還す文字通り終りの能力。

多くは火属性と雷属性の力で天照の太陽(アマテラス)全能の轟雷(ゼウスブラスト)等と読者の君たちが良く知る神の名が使われる事が多い。

他の能力の様に制限はあるがそれ以上に最強無敗の力を得る為、ローリスクスーパーハイリターンくらいの恩恵を受けられる。


第二の力(ジンツウ)

この世界において、主に第二人格が扱う力で神に匹敵する力を持つと言う。

無から有を生み出したり、自在に体質を操ったり等が出来る。

現在わかっている中では、主人格で第二の力を扱えるのはアカメだけである。


主人格(オリジナル)

この世界において主として使われている人格をさし、第二人格を形成する際の基盤となる人格。

主人格があって初めて第二人格は機能する。


アリエス

リラの中にある第二の力(ジンツウ)を操る能力であり、リラの第二人格である。

リラの大切にしているものを守るためにその力を奮い、ありとあらゆるものを無に帰すと言われている。

十の幻界能力(アンリミットスキル)がある。


ベルゼニュート

アリスの中にある第二人格でアリスとは全く違う人格である。

元々は竜種(ドラゴン)としてアリスの中にある破壊の意思が集まって出来た人格であり、アリスの破壊の意思を抑制する為の人格だったもの。

アリスの心の鎖(マインドリミット)によって何も無い暗闇に長い間封印されていた事からこの世界を恨み第二人格へと変化した。

竜の力を自在に操り、主人格となるアリスよりも凶悪かつ残虐性のある攻撃を行う。

また怒りを力に変える能力がある為、些細な事でもすぐ激怒する。

また非常に高圧的な言動を行う。

しかし、それは能力を行使する為の演技で本当は少し気弱で優しい性格。

サリエラの優しさに触れて考え方が変わったらしい。



〜人物紹介〜


アリス

種族:幼竜(ドラゴノイア)

能力:竜化(ドラゴソウル)

詳細:この世界では珍しい竜種の少女。

この世界では古来より竜種は存在していたが、人型の竜種は極めて目撃情報も少なく、わからない事が多いと言う。

主に両腕を竜の腕へと変化させて戦う事を得意としている。

生き別れたと思われる家族を探している。

第二人格のベルゼニュートを制御する力がまだ弱い。

本人はベルゼニュートを恐れているが、ベルゼニュートがアリスと非常に似た性格なのは知らない。

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