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代償愛  作者: リリ
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私の名前

今回は特にはないでふ。

「試験体002、貴様はこれより"花嫁"としてアレの元に行ってもらう。」


試験体002…それが私の名前…

猫の遺伝子を組み込んで超回復能力(スーパーヒーリングコア)と自在に出し入れが出来る爪を手に入れた"化猫(ネコ)"と呼ばれる人種らしい…

この世界では能力の劣る者は花嫁(イケニエ)としてある人の元へ送られる決まりがある。


「承知しました…我らが始祖の命を実行いたします。」


"我らが始祖"はこの世界の管理者であり、この世界の全てのヒトの管理をしている。

しかし、この世界で唯一"ある人"だけはその管理を逃れていた。

私のか細い腕に頑丈で重たい石の輪がつけられる。


「試験体002、その役目を全うせよ…死に絶えるその時まで…サル!」

「なんだ?」


猿とゴリラの遺伝子を組み込むことにより、忠実性と剛腕を手に入れた種族"山猿(サル)"と呼ばれた少女が気だるげに言う。


「試験体002をかの地へ送れ…」

「お?ゴミ捨ての依頼か?久々に腕がなるぜ!」


山猿が嬉しそうに私の身体を軽々と持ち上げて私に言う。


「キッキッキ!せいぜい頑張れよ!過去の遺物さんよ!」

「騒ぐなクソザル…」


私は誰にも聞こえない程の小さな声で言う。


"過去の遺物"はとある博士の作り出したヒトの事を指している。

私が試験体002と呼ばれるのはその博士の第二の作られたヒトだからだ。

それは我らが始祖の力を唯一受け付けない事を意味する。

我らが始祖は自らの血を媒体とし、幾多のヒトを作り出した。

山猿もその作られた一種である。


「我らがヒトの世に末永い反映があらん事を!行くがいい!サル!」

「キキーッ!オレに任せろ!」


私は山猿に担がれたまま、ある人の住む場所に来た。

山猿は荷物を置くように私を放り投げて言う。


「キキーッ!オレが運ぶのはここまでだキ!後は自分でたどり着けキ!アバヨ!」


私は山猿が逃げる様に帰るのを放り投げられた状態で見送って姿が見えなくなったのを確認する。


「行ったみたいね…」


私は「よいしょっと…」と重たい石の輪だらけの身体を持ち上げる。


「全く…こんなに重りを乗せなくても自力で行くというのに…動きにくいわね…」


とてもではないが見た目によらない怪力の持ち主である。

自分で言うのもどうかと思うけど…


「もうちょっと重いヤツはなかったのかしら…200Cキャンスの石輪5個程度じゃ身動きを封じるどころか、無いも同然なんだけど…」


ちなみに1Cは君たちの世界に合わせると約1200kgである。

つまり、しれっと1200t(240t×5個)の重りじゃあ、何も無いも同然と言っているのだ。

某ボール探しアニメの様な壊滅的なパワーインフレだ。

そのうち別の惑星から強ぇ奴がやって来てワクワクしそうだが、これ以上の言及は謹んでおこう。


…とまあ、こんな凄く強い私が何で花嫁に選ばれたのかと言うと、"我らが始祖"が言うには心に重大な欠陥が見つかった為との事であるが、多分私が"我らが始祖"の命令を聞かずに施設の屋上で寝てたからであると考えられる。


そんな事でこの扱い?!と君は思うだろう…

しかし、これがこの世界の掟なのだ。

掟破りは死罪、"我らが始祖"の命令に背けば死罪、屋上で寝れば死罪…

つまり、始祖の命令以外は全て死罪なのだ。

私があの場で殺されなかっただけまだマシなのだ。

多分あいつなりの同僚への配慮なのだろう…


「ま、私にとっては関係ない事だね…」


私は耳を済ませて近づく遠くの声を聞く。


「偵察隊か…この状態じゃ撃退出来そうにないな…奥に逃げるか…」


私は森の奥へと駆ける。


「きゃっ?!」


突然何者かに足を掴み上げられてしまった。


「化猫風情がこの地に何の用だ…」


ギロりと私を睨むその眼が深紅に輝く…

私は恐怖に震えそうになる身体を抑えながら言う。


「それがヒトにものを訪ねる時の態度か?教育がなっとらん様だな?」

「クハハハハ!」


私の問いに豪快に笑うその眼は敵意を消していた。


「面白い…この状況であえて挑発する度胸…気に入った!」


そいつが私の足を下ろす。

暗闇が少し晴れてそいつの全容が明らかとなる。


「…ッ?!あなたは…!!」

「あぁ…お前らが"ある人"と呼ぶ者…ベルエールだ…お前の名はなんだ。」


私は…


「なんだ、名すら与えて貰えんのか?それとも、教えてはならぬのか?」


ベルエールは見た目通りの悪戯な笑みを浮かべている。

私は必死に名前を考える。

ベルエールは面白そうに笑いながら言う。


「よい!なら、私がお前の名を考えてやろう。お前は私の新しい名を考えるんだ。面白いだろ?」


クスクスと笑うその表情はまるで天使の様だった。

私は考える…

彼の名前を…


「フフン♪私の方が早く考えたぞ!お前はサリエラだ!私の生まれ故郷の勇気を司る猫の神だ!どうだ?良い名であろう?」


嬉しそうなその表情は少年そのものだった。

私はその顔を見て閃いた。


「アカメ…なんてどうかしら?」

「アカメ…?」

「ダメ…かしら?」


私がそう言うと彼は堂々という。


「良い名だ!ならば、私はアカメ・ベルエールを名乗ろう!」

「じゃあ、私はサリエラ・ベルエールかしら?」


彼は少し赤い顔で言う。


「何故そうなる…?」

「嫌なら変えるけど?」

「嫌とは言っておらぬ!!」

「じゃあ、決まりね!とってもステキな名前だし、大切にするよ。」


そう…

私の今までの無機質な名前なんかとは違うステキな名前…

初めて貰った素敵な名前…

私の大切な名前…


「そうするが良い!せっかく、私が考えたのだ。大事にしてもらわなければ意味が無いしな!」

「そうだな。名前は大事…だからな…」


私の意識はここで途切れた…



















…夢を見た。

とても楽しい夢だった。

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