011_03_死者の都の盗掘者#1
「うわぁ、やっぱりまた骨……。何でこう、竜人側のダンジョンってホラー系ばっかりなの? 地下は骨しかないの??」
階段を降りた先、地下に広がる洞窟でわたし達を迎えたのは、以前【第二の都】に忍び込んだ時と同じく人のものらしき骨だった。 ああ、やっぱりちょっと……だいぶ怖い。ツバサ、何でこんなところに隠しちゃったかな、って正直思っちゃう。
「地上は生者の、地下は死者の都なのよ。そして死者の都なのだから死者がいて当然だわ。大体、どうしてそんなに怖がるのかしら。ホント、頼りないわね」
ミライが呆れたように言った。どうして、って言われると困るけど、怖いものは怖いよ。ミライは怖く……ないみたいだな。そもそも町の地下に墓地が広がってるっていうのもなんだかイヤだけどなあ。いやまあ、日本だってお墓の隣に家とかあったりするけど……でもこんなロコツに骨があるわけじゃないし。でもそういうもの、として受け入れるしかないか。
「黒雲は破壊神の僕、死を振り撒く存在、と伝説は語っているのだが、骸に怯えるとはな。やはりお前達は本物の黒雲ではない、ということか」
ツバサがくすりと笑って言った。そういえば【第二の都】の地下でミライにも同じような事言われたなと思い出して、わたしも思わずくすりと笑ってしまった。
「こんな時に何笑ってるのよ。早く行きましょ。敵の黒雲に、遭わないとも限らないのよ!」
そんなわたし達をミライが急かす。そうだった。リスクオンの事はカン達が押さえておいてくれると思うけど、何が起きるかは分からないし。気を引き締めて進もう!
わたし達はツバサの案内の元、複雑に入り組んだ死者の都を奥へ奥へと進んでいった。
「これは……どういうことだ? 入り口が崩されている、だと?」
しばらく進んだところで先頭を歩くツバサが足を止め、辺りを見回して驚きの声を上げた。近づいてみてみると、崩れた石壁のものらしき破片がそこら中に散らばっていた。
「ツバサが宝剣を隠しに来た時は、こうなってなかったってこと?」
わたしが聞くと、彼は大きくうなずいた。
「じゃあ、その後で誰かがここに来て、入り口を崩して無理矢理中に入ったってことになるけど……。でも一体誰だろう? リスクオンは遺跡探検が上手くいってないからわたし達に頼んだわけでしょ? ここを見つけていたら、大発見だってもっと言いふらしてそうな気がするなあ」
上手く行ってない風にわたし達に見せかけてわたし達をここへ誘い出すための罠とか……? でも邪魔な奴らを片付けろって話なら、こんな面倒な事せず直接戦った方が簡単だと思うから、やっぱりそんなことしたってリスクオンにメリットはないよね。ジョーはメリットのない事はしないし、それにわたし達に弱味を見せる、なんて事はもっとしないから、それはないと思うんだよね。
「さっきの話だと、ツバサ以外にここを知っている人はいないんだよね?」
「ああ、ここの事を知るのは私だけだ。真の英雄の墓所は歴代の戦士長にだけ伝えられているのだ。そして、私以外はもうこの世にはいない」
わたしの問いに、ツバサは大きくうなずいた。
「うーん、ここって結構奥の方だけど、でも全体としては今もお墓として使われている場所なんだよね? だったら探検好きな誰かがたまたま見つけちゃった、とかかな。あ、それとも戦争の資金稼ぎに皇女が宝物を掘り起こそうとしてる、とか!」
英雄以外の偉い人のお墓もあるのか分からないけど、あるとしたらすごい宝物とか一緒に埋めてるイメージあるし、やっぱり盗掘とかあるんじゃないかな。それに皇女は今お金が必要なはず。おお、我ながらいい推理じゃない? と思ったんだけど、
「偶々ではこうは行かん。皇女というのは無くはないが……。彼女だとすると今更、という気がするな。我々との戦に勝った時に帝国はこの辺りの略奪を終えている。それに戦の準備ならもう済んでいるはずだ。此度、彼女は黒雲から武具や食料の多くを調達したはずだが、その支払いの代わりが黒雲がこの地に来る事の許可だったのではないか? だとすれば、彼女が自分の手駒に盗掘を指示することもあるまい」
と、あっさりツバサに論破された。
「さっき宵闇の牙が、皇女が黒雲にここへ来ることを許可した、みたいなことを言っていたわね」
ミライもこくこくうなずき、ツバサの意見に同意した。ツバサは腕を組み、壁にぽっかりと空いた穴を険しい表情で注意深く見ながら、壁の向こうにゆっくり進んでいく。
「あれ……? よくよく見るとこれ、“壁”に穴が開いてる。落ちてる破片も、同じ材質っぽいし。扉があったわけじゃないのかな」
その辺に落ちていた石の欠片をいくつか見比べてみるけれど、どれも同じ壁の材料に見える。
「扉はあるのだが、岩を使った隠し扉なのだ。壁にしか見えん。知らなければ絶対に気づかぬはずだ。現にここは、過去の帝国の略奪からも守られていたのだから」
ツバサは振り返らずに答えた。普通は絶対気づかないはずなのに、今回はこんなことになってるのはおかしい、ってことか。だからたまたま、というのは無いって言ったのか。でもツバサ以外に知ってる人はいないわけでしょ? どういう事なんだか。
「それじゃやっぱり、淀んだ黒雲が持っていたような、黒雲の不思議な力で見つけたのかしら?」
ミライが呟いた。そういえば帝国に行ったとき、カンは壁の向こう側の空洞とか見つけてたよね。何かそういうアプリがあるっぽかったから、それを使ったって可能性はありそうだ。
「確かに能力的には、わたし達の方がここを見つけれる可能性が高そうだけど。でも……」
プレイヤーだとしたら、一体誰なんだろう? こっちに来られるのは金騎士団とリスクオンだけのはずだけど、金騎士団は遺跡探検に興味なくって、リスクオンは探検が上手くいってないって話なんだよね。うーん……。他に誰かいるのかな? わたし達みたいにこっそり目を盗んでやって来てる人がいるとか?
「うーん、やっぱり今は考えても分からないね。とにかく、先に進もう!」
「そうだな。侵入者がここで何をしたか、の方が気掛かりだ」
「そうね」
わたし達は謎解きを切り上げて、急いで奥に向かった。




