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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第十章: ゆるゆる休息時間!

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010_08_二人の過去とこれからと#3

「みんなで止める、ですって!? 何回言わせるのよ、私は――」


「何回でも言うけど、破壊神の復活なんてさせない。大体さ、ミライはツバサと一緒に生きたかったんでしょ? だから、一緒に逃げようって言ったんでしょ? だけど、破壊神を復活させたら、二人とも死んじゃうんだよ。それは嫌だったはずだよね」


 案の定思いっきり憤るミライを、負けじとじっと見つめて、わたしははっきりと落ち着いた声で問いかけた。彼女はぐっと息を呑むとわたしからすっと目を逸らし、結局何も答えなかった。


「ツバサも……故郷でみんなに祝福されて、二人で一緒に暮らしたかったんじゃないかって思うんだけど。最初から死にたかったわけじゃないよね。

 二人とも、いっぱい辛いことがあったんだと思うし、それは消すことができないと思うよ。でも今はせっかく二人とも無事、なんだからさ。これからゆっくり、どうするか考えたらいいんじゃないのかな? すれ違ってたこととか、二人で埋めて。そうしたらきっといい方法が見つけられると思うんだ」


 知ったような口をきくな、とか、余計な事を言うな、とか言われるかもしれないけどさ。でも何となく、二人ともどこかですれ違ってしまって、そのままドンドン相手のことを悪い方へ考えちゃってる気がするんだ。どっちが悪いわけでもないのに、そのままなんてやだな。ツバサにご飯を作ろうとしてたときのミライも、それを食べていたツバサも、嬉しそうだったじゃないか。そんな事を思いながら、わたしはきっぱりと二人に伝えた。ミライも、ツバサも息を呑み、ただ黙ってわたしをじっと見つめていた。


 自分が引き起こしたとはいえ、沈黙が物凄く気まずかった。少しの後、そんな重い空気を動かしたのはミライだった。


「これ……破壊神への道を指し示すわけではないの。私が母から聞いた言い伝えでは、『この石の導きに従えば、愛しい人に会える』ということだったわ」


 彼女はすっとわたしの方に近づくと、首からペンダントを外し、わたしの手に握らせた。突然語られたペンダントの話に、わたしは正直かなり戸惑った。一体、何の関係があるんだろう?


「愛しい人……? え、それが何で破壊神への道を指し示すことになっちゃったの? ミライのご先祖様の恋人は破壊神だったってこと?」


 手のひらの上で時折ゆらゆらと揺らぐコンパスの針を見ながらミライに尋ねると、彼女はちょっと困った顔で首を横に振った。


「違うわ。この島で、私の先祖は超越者と暮らしていたそうよ。でも竜人達との仲が険悪になった時に、彼女は私達の故郷に戻されることになった。別れる折に、別れた後でもまた会いに来られるように、と超越者から渡されたもの、という話なの。超越者というのは破壊神をその手で操りその力を使う者達のことよ。だから、超越者に会うということは破壊神に近づくことでもあるわ」


 そっか、超越者のところに行ける、イコール破壊神のところに行ける、なんだ。でもミライの話だと、その二人は恋人同士だったのに、争いで引き裂かれてしまったってことだよね……。なんだか悲しい話ばっかりだ。


「戦いが終わった後、二人は会えたのかなあ……? 会えてたらいいのにな」


「そうね……でも会えたのかどうかは私も知らないわ」

 

 思わず呟いたわたしに、ミライは寂しげな笑みを浮かべて答えた。


「あ、そうだ、これ、返すね。話してくれてありがとう」


 わたしはペンダントを彼女に返そうとしたのだけど、


「それは貴女が持っていて」


 と、どういうわけだか突っ返された。でも、ともう一度返そうとしたけど無駄だった。それなら、大切に預かっておこう。


「しかしさっきの話だと、ミライさんの先祖はその破壊神を鎮められる、と言っていた超越者の男とは断定できないのか……。そのコンパスをもう一度解析してもらったところで、多分何も分からないよなあ……。手掛かりなし、か」


 カンがわたしの手の中のコンパスを覗き込んで、ひどく残念そうにため息をついた。


「……私が母から聞いたその石の伝承はそれだけ。初代皇帝の日記に書いてあったのも、超越者を倒し遺跡から破壊神を司る宝玉を奪い取り、封印したという武勇伝だけ。

 破壊神を鎮める方法なんて、私は何も……! そうよ、今更止めるなんてできないのよ! 私は――」


 悔しそうにうつむくミライの肩に、ツバサがそっと手を置いた。


「大丈夫だ、幸福な未来。方法などこれから探せばいい。今からだってきっと変えられる。君が望むのなら、そのために何かするのなら、彼らも力になってくれるはずだ。無論、私もそうする。

 まずは英雄の眠る【忘れられた都】へ宝剣を取りに行こう」


 ツバサの言葉は力強かった。わたしは「もちろん」と二人に向けて大きくうなずく。


「黒雲……黎明の翼……私は……私も、一緒に行かせて……」


 やっとの思いで声を絞り出すミライを、ツバサが優しく抱き寄せた。ミライはツバサの胸に顔をうずめて静かに小さく肩を震わせ、ツバサは黙ってそんな彼女を見守っている。うんうん、きっと二人ならもう大丈夫だよね。良かったね! ミライ!!


「【忘れられた都】、ね……。さてと、情報も手に入ったことだし、早いところ次の対策を考えないと。さ、早く、リンさんも」


 二人を見つめながらついついちょっとうるっときてるわたしをよそに、くるりと踵を返し、さっさと研究所の建物の方へ歩きながら、カンが極めて事務的に、早口に言った。


「え、ちょっと待ってよ! もう!」


 わたしは慌ててカンを追いかける。彼からしたら、二人のことなんて興味なくって、宝剣とか伝説とかの方が気になるのかもしれないけどさ。もうちょっと、興味を持ってくれてもいいと思うんだけどな。


「けど、あの二人、仲直りできたみたいで良かったよね。これで一安心。よかったよかった! これで後は方法を探してみんなで破壊神を止めればおーるおっけー!!

 それにしても、ああいうのってちょっと羨ましいなあ……」 


 自分のことを振り返ってみると、裏切られた……っていうより、そもそもああいう関係にはなれなかったからなあ。それに、正直に言うと、落ち込んでるところを強くて優しい男前にぎゅってされる、とかちょっと憧れのシチュエーションだったりする。たまには守ってもらいたいな、とか思ったっていいじゃない! 憧れて何が悪い!!


「だからと言って、あまり食い入るように見つめるのも如何なものか」


 誰に問い詰められたわけでもないのに心の中で自己弁護を始めていたわたしを現実に引き戻したのは、苦笑交じりのカンの呟きだった。


「え、ちょっと待って。わたし、そんな顔で見てた……?」


 わたしの問いに、カンはこくこくと、強く素早くうなずいた。確かに見てたけど……そんなつもりじゃなかった……なかったはず。それにしてもカンは他人の事なんて見ていないと思ってたのに、変なところで見られてた!!


 しまった……。


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