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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第十章: ゆるゆる休息時間!

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010_02_スイフトフェザーは喰えるやつ#2

「で、獲るのはスイフトフェザーでいいかい? あれならこの辺にもいるから、そうだと助かるんだが。テラーフェザーって言われると、ちょっと遠出しなきゃならないし、他の大型生物は俺達じゃ厳しいんだが」


 早口に、ノーと言いにくいようにカンがミライに尋ねた。他のものがいいって答えたら、ロコツにめんどくさい顔するんだろうな。そんな彼に、ミライがはっ、と軽く息をついた。


「素早い鳥は普段の食事だから、本当はもっと特別感のあるものがいいけれど。でも仕方ないわね。所詮、貴方達黒雲に捕らえられるのはその程度みたいだもの」


「なら良かったよ。そうそう、特別なものより食べ慣れたものの方がいいさ」


 思いっきり見下した感じで言われたことは華麗にスルーして、カンはスイフトフェザーでいいってことを念押しするようにミライに答えた。


 ん? 普段の食事……? でも、さっき研究員さん、普通は食べないって言ってなかったっけ。あ、違う。一般階級、特に女性は普通食べない、って言ってたんだった。じゃあ誰なら食べるんだろう? あと、強くなりたいとか言ってたっけ……。


 そうだ! それって戦士の食事なんじゃないかな!? ってことは、自分のじゃなくてツバサの食事に文句言ってたんだ!!


「ふふふ……何で肉って言い出したか分かったかも」


 ようやく導き出せた結論に、わたしは思わずにやにやしてしまう。きっとツバサって回復したばっかりだから、消化のいいものとか……そうだ、確かミライは飲み物って言ってたから、栄養ドリンク的なものを出してたのかも。弱ってるときに肉もどうなの、って感じだけど、ミライからしたらこっちの対応の方が変だったのかも。


「え? 何でなの?」


 呟きが聞こえたらしいカンが、そう聞いてきたけれど、


「ふふふふふ……少しは人の気持ちも考えてみたら?」


 と、わたしは答えを言わなかった。いつもわたしをおいてけぼりにして話を進めるから、この機会にちょっと仕返ししちゃおう。我ながら大人げないなあ、とは思うんだけど、でも分からないけど話が進んでいく悲しさを少しは味わったらいいんだ。そしたらきっと、ちょっとは気を付けてくれるかもしれない。そうだといいな。


 カンは困った顔だけど、まあ頑張れ。



「ま、リンさんがどんな悪巧みをしているかは分からないけれど、とりあえずスイフトフェザーは発見した。

 ……ちょっと遠いな。もっと近づかないと」


 草原を歩き回り、獲物を探していたら、少ししてカンが声を掛けてきた。彼の視線を追うと、離れたところに四羽のスイフトフェザーらしき影を見つけることができた。


「あら? ここからじゃだめなの? 戦士はこのくらいの距離で仕留めるわよ」


「ええ? 100メートル近くあるから無理。ちょっと待て、戦士ってことは、投槍で? でも竜人の身体能力ならやりかねないか……?

 まあ……とにかく取ってくるから、二人は向こうで他の食材調達しておいて。木の実とかキノコとか、色々あるはずだから。それほど凶悪なのはいないと思うけど、襲われないようにだけ気を付けておいて。スイフトフェザーが獲れたらそっちに向かうから、それまで待ってて」


 カンは軽いため息交じりに色々とわたし達に指示すると、銃に弾を込めスイフトフェザーに近づいていった。あれ? 近代兵器、負けちゃった?


 でもまあとにかくそっちはカンに任せて、わたし達は他のものを取りに行こう。というわけで、わたし達はカンが指差した、すぐ後ろに広がる森に入った。


 よく採集系のクエストをやっていたというプロ村人の言ってたとおり、その辺りには食べられるものが色々あったようで、ミライが喜んでいた。彼女が美味しいというものを中心に、色々な食材を集めていたら、少しして銃声が響いた。


「お、銃声がしたけど、スイフトフェザー獲れたかなあ?

 ……え? ミライ……?」


 ミライに声を掛けて振り向くと、がくりと膝をつき、崩れ落ちる彼女が目に入った。え? どういうこと? 今の銃声ってまさかスイフトフェザーじゃなくてミライを撃ったなんて、そんな訳ないよね? 流れ弾? でも距離が離れてるし、森の中だし、大丈夫だよね? とにかく急いで彼女に駆け寄る。


 彼女は咳き込んだ後、ごふ、と嫌な音を立て、口から真っ赤な血を吐きだした。


「ミライ!? 大丈夫!? ねえ、しっかりして」


 わたしは慌てて彼女を抱き起す。どうしたらいいんだろう? どうしよう? どうしていいか分からず、ただ彼女を抱えて、声を掛けることしかできなかった。


「ふ……ふふ……あははははは」


「え……?」


 急に、重症なはずのミライが笑い声をあげ、口元を拭うとひょいと起き上がった。


「凄い慌てっぷりね。今までで一番の反応かしら。それにしてもまさか、こんなに簡単に騙されるなんて。やっぱり貴女って単純よね」


 けらけら笑いながら、ミライが呆然とうずくまったままのわたしを見下ろす。ええと……どういう事?


「この実を潰すと真っ赤な汁が出るの。血みたいでしょ? 昔よく、こうやって遊んだわ」


 ミライの手には、潰れた何かの実らしきものが握られていた。ホントに血っぽい色なんだけど、血じゃなくて植物の汁、ってこと?


「えーと……じゃ、別に何でもなかったってこと? ああ……とりあえず良かった」


 わたしはほっと胸をなでおろした。


「けど、もうこんな悪趣味ないたずらやめてよね。心臓に悪いよ。まさかカンに撃たれたんじゃないかと思っちゃった。いや、カンがそんなことするとは思わないけど、流れ弾とかさ。とにかく、ミライに何かあったら困るんだから!」


 びしっとミライに言うと、彼女は苦い顔をして俯いた。


「そういう言葉は聞き飽きたわ。貴女って本当にあの馬鹿と……」


「え、何……?」


 小さく呟いたミライの声は良く聞こえなかった。わたしが問い返すと、彼女は首を振り、それきり黙ってしまった。仕方なくまた果物集めに戻ると、がさり、と音がした。


「え、血……にしては元気そうだ。一体何が?

 何、性質(タチ)の悪い悪戯? へえ……そういうの、竜人もやるんだ。ふぅん……この実、本当にそれっぽいね。面白いな」


 スイフトフェザーを背中に担いだカンがこっちにやってきた。彼はミライをとがめるでもなく、赤い実を取ると手のひらで潰して楽しそうに見ていた。


 言われてみればそういうイタズラ、やったりやられたりしたことはあるなあ。その辺は彼女達もわたし達もあんまり変わらないのかも。


 ま、でもこんなイタズラを仕掛けてくるあたり、少しは心を開いてくれたのかもね。うん、そう思おう。


「あーあ。なんだか一気に疲れちゃった。そろそろ帰ろっか」


「そうね、早く帰って料理しましょう」


 わたし達はクレーディトに戻ることにした。


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