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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第九章: どきどき帝国潜入!

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009_10_見つからないのは辛すぎる

「一応、見える範囲は誰もいないようだね。出よう」


 カンがそっと扉を開け、あたりを見回した。地下墓地から出た先は小さな部屋だった。なんか床とか壁に赤黒いシミが見える。さっきのミライの話からすると……うん、考えない、考えちゃダメだ。ぶんぶんと頭を振って嫌な想像を追い出し、急いでこの不気味な部屋を出るように二人を促す。


「そっちの扉から外に出ましょう。本当に“外”だから気を付けることね。勢い余って足を踏み外さないようにしなさい。死ぬわよ」


 ミライがそう言って、木の扉を開けた。外に出ると、ミライの注意が大げさでもなんでもないことがよく分かった。扉の外は石の階段の上――正確には階段状に石を積んだピラミッド――で、踏み外せば一気に下まで転がり落ちそうだった。


「宮殿に繋がる通路があるわ。こっちよ」


 ミライが指す方に向かう。そんなに広くはないピラミッドのふちを進み――落ちそうで怖かったけど――、角を曲がったところで通路らしきものが下に見えた。


「これは屋根みたいだね。この下が本物の通路ってことか。下に降りられれば宮殿に侵入できるわけだけど……」


「やっぱり、見張りがいる?」


 わたしが聞くと、彼はうなずいた。わたしもこっそりのぞいてみる。


「何、あのドラゴン……ドラゴンかな? 武器持ってるから、兵士?」


 多分タイラントドラゴンの頭部を象ったフルフェイスの兜に、黒光りする鱗を重ねた鎧を着た兵士が二人立っていた。だけど、なんかちょっと微妙なデフォルメ度合いで、全体に着ぐるみっぽい感じもする。


「本当に何にも知らないのね。あれは黒竜の戦士。主に皇族の警護担当の精鋭戦士団よ。

 神殿との間にまで置いているなんて、あの女も疑り深いこと」


 ミライが呆れたように、ハッ、と短くため息をついた。


「じゃあそれって強いってことだよね? 二人もいるし……あ、ちょっと待って、通路の向こうからまた誰か来た」


 見るともう二人、同じ格好の兵士が現れた。


「見張りの交代時間みたい。まとめてこれで、眠らせちゃおう!」


 わたしはカバンを指差す。


「そうだね、じゃあリンさん宜しく。俺が投げると……多分大惨事が発生するから……」


 カンがちょっぴり目を伏せた。ふふん、任せとけ! わたしはカバンから催眠スモークを取り出し、通路の下の見張りに向かって投げ込んだ。


 少しして、どさり、と人が倒れる音が立て続けに聞こえた。

 

「あ、そうだ。そんな精鋭の戦士だったら、その着ぐるみ……じゃなくて鎧奪って変装するとかどうかな? 交代し終えたって体で、城内に入るの。少なくとも、今のままより良くない?」


「そうね。珍しく役に立つ意見を言ったわね」


 わたしの提案に、ミライがうなずいた。一言多いけど、気にしない。わたし達は屋根からロープで通路に降りる。


「それにしても黒雲の力、出そうと思えば出せるのね。凄いものだわ、彼らをこんなにあっさり倒すなんて」


 武器と鎧をぐっすり眠る彼らから剥ぎ取りながら、ミライが信じられない、というようにつぶやいた。本当は強いんだろうな。


 兵士は随分大柄なようだったし、交代要員は二人だから、小柄なミライとわたしの二人で一つを着ることにした。わたしが下でミライを肩車する感じで鎧と兜を着こみ、そのまま城内に潜入する。ちょっと見づらいけど、隙間から何とか外は見える。


「まずは宝剣を探すわよ。置くなら宝物庫だと思うわ。急ぎましょう」


 ミライの案内で、わたし達は宝物庫に向かった。変装したとはいえおっかなびっくり進んでいたのだけど、精鋭部隊の着ぐるみ鎧の効果は絶大で、普通の兵士はみんな道を譲ってくれた。


 そんなわけで、わたし達は宝物庫に無事たどり着いたのだけど……。ホントここの警備は大丈夫か。大体こんな誰だか顔が見えない鎧なんて、セキュリティ的に良くないと思うんだけど。彼らはすごく強いらしいから、倒されて入れ替わる、なんて事態は考えてないのかな。まあ、そのおかげで無事なんだけどさ。


 おっと、そんなことより探さなくちゃ。見づらいし鎧も脱ごう。



「あれ……? 宝剣、どこだろう? もう全部探したと思うんだけど、見つからなかったね」


 三人で宝物庫内をくまなく探したけれど、宝剣は見つからなかった。見落としがないか、もう一度見てみるけど、やっぱりそれらしきものはなかった。一体、どこにいってしまったんだろう?


「くっ……ここには置かずに、皇女が自分で持っているのかしら? あの女、よっぽど他人が信用できないのね。もしかしたら宝剣を手に入れたことすら黙っているのかしら? 厄介だわ。でも、どうにかあの女を捕まえて宝剣を出させないと。

 どうしても宝剣が必要なのは貴方達も同じでしょう? 何とかするのよ。何も手に入れずに帰るなんてあり得ないわ!」


「無理だ。流石に警備の中皇女を拘束するなんて。危険だ。失敗だよ。戻れるうちに戻ろう」


 焦るミライに、カンがため息を吐き、首を横に振る。


「貴方達のその力なら――」


「ちょっと、二人とも落ち着いて。それに宝剣だけじゃなく、ツバサも――」


 ヒートアップするミライとネガティブ全開のカンを何とかなだめようと、わたしは割って入った。そこへ突如、声が響く。


「黒雲!? 何故こんな所に!?」


 入り口のところにタイラントドラゴンの着ぐるみ鎧が、黒い石の刃がついた木剣――レイさんがマカナ、とか言ってたっけ――を突き付けていた。その後ろには軽装――っていうか半裸――の兵士達が大勢、黒い石の穂先のついた槍を構えて従っていた。


 うわあ、本物の精鋭登場だ。しかもすっかり囲まれてる! やばい、内輪揉めなんてしてる場合じゃない!


 なんとかしなきゃ!!


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