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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第九章: どきどき帝国潜入!

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009_08_帝国行きの船の上

「えっと……あ、あれだ。赤い二重線の入ったやつ!」


 事前にレイさんから聞いていた船を見つけて駆け寄る。


「ミライさんと操縦席に行って、始動させて」


 カンに言われた通り、船に飛び乗り操縦席へ向かう。舵輪の横の穴に差し込まれた鍵をいっぱいに回すと何かライトが点いた。どうやら船が動き出したみたいだ。あんまりエンジン音とかしないから、不安だけど。


「動いたっぽい! カン、早く!」


 桟橋に残る彼に声を掛ける。彼は船を繋いでいたロープを外してそれを肩に引っかけると、船を押し出し、そして飛び乗ってきた。


「ひとまず成功かしら。あら? この船……だれも漕いでいないのに動いてる? 超越者達が使ってたっていう、漕がずに動く舟かしら? 動くものが残ってるなんて」


 自動で進んでいく船にミライは驚いていた。


「ん? 超越者ってのはこの島にいた遺跡の主のことだろ、そんな物が?

 それに、動かない物なら残っているのかい?」


 彼女の言葉に引っ掛かることがあったらしく、ちょっと弾んだ声でカンが尋ねた。


「彼らに関する伝説に、そういう不思議な道具が色々出てくるわ。船は実際帝都の宝物庫にあったわね。壊れてて動かないから、本物か確かめようがなかったけれど。でも見たことのない材料で作られていたから、皇帝は本物だと思って自慢げに話していたわ」


「へえ……。遺跡だけじゃなく、遺産もあったんだ。ここの文明より彼らは大分進んだ物を持っていたのか。ここに残ってないのは奪われたのか破壊されたのか……」


 ミライの答えに彼は目を輝かせて、しばらくあれこれ考えを巡らせているようだった。大体死んだ魚のような目をしてるんだけど、こと遺跡関連だとスイッチ入るのか、いきいきしてるんだよね。いつもそうだといいのにな。


「けど帝都にあるなら見てみたいもんだ……。行けないなんて、全く」


 ため息を吐く彼はとても残念そうだった。



 そんな会話の間、まだスターリングからいくらも離れないうちに、急にあたりが真っ白になった。


「凄い霧! 何にも見えないよ! 大丈夫かなあ?」


 船の舳先の辺りからもう既に真っ白な様子に心配になって、つい不安を口にしてしまった。


「【霧を吐く鏡】は大抵こんなものよ」


 ミライは水面を見つめ、大したことはないと強気に言った。何か変な単語が出てきたけど、多分この湖――どうやら海じゃなくて湖らしい――の名前だよね。いつもの変な翻訳のせいだから、気にしない、気にしない。


「遭難の危険が大きいから、私達も舟を出すのは陸地からごく近い部分だけよ。

 ……まさか、それも知らずに渡ろうとしてた訳じゃないわよね?」


 ミライが思い切り眉間にしわを寄せ、若干震える声で詰め寄ってきた。ええと……わたしは知らなかったんだけど……。正直に言うべきか迷って、カンに助けを求めて視線を送る。


「ま、自動操縦システムがたとえ何も見えなくても目的地に連れていってくれるはず。この辺で危険な大型生物に遭遇したって報告も無かったはず。それに衝突回避機能も搭載してるはず」


 でも、彼はそっけなく答えただけだった。しかも何だか頼りない。


「何を言っているか分からないけれど、対策があるならいいわ」


 ちゃんと翻訳されなかったのか、諦めたのか、ミライはため息交じりに言った。


「っていうかそんな言い方だと大丈夫だなんて全く思えないんだけど!」


 諦めることができずに、わたしはつい不信感を出してしまった。


「だとして何かできる訳じゃないから、大人しく乗ってればいいんじゃない?

 それに俺達の誰かが操縦するよりは、システムの方がずっと安全だと思うけど」


 カンはあっさりと言い切った。うーん、まあ、そうかもしれないけどさ。でも何か不安だな、って気分てあるじゃないか。どうにも、通じない。


「ところで、ミライさんは舟で来たんじゃないの? それこそどうやって島まで逃げてきたんだい?」


 珍しく、カンがミライに聞いた。さっきの話だと舟を出すなんて自殺行為って事になるから、言われてみれば確かに不思議だよね。


「破壊神への道を指し示す道具を持っているの。それを頼りに、必死で舟を漕いだわ。その日は特に霧が濃かった。だから誰も追って来られなかったのよ」


 そういってミライがが胸元から引っ張り出したのは、小さなコンパスのようなものだった。カンがそれを手に取り、くるくる回しながら楽しそうに観察していた。


「おお、凄い。ちゃんと島の方向を指してる。北とか一定の方角を指してるわけじゃないらしいね。どうなってるんだろうな、これ? 超越者が作った道具だよなきっと。これ、どこで?

 あ、そういえばミライさんのその腕の羽根、超越者の特徴と似ているよね、大分羽根が薄いけど、普通の竜人とは違う。ああひょっとして超越者の子孫? じゃあそのコンパスも――」


「これは皇帝から奪い返したのよ」


 彼女はピシャリとそれだけ言って、早口で推測を続けるカンからコンパスを取り上げた。


「……そうか。悪かったよ、あれこれ詮索して。興味のあることだとつい……空気読めなくて」


 カンは気まずそうに謝ると目を伏せた。ミライにとって、聞いちゃいけないことだったんだろうな。でも「奪った」じゃなくて「奪い返した」って言ったから元々ミライのだった、ってことだよね。だったらカンの予想通りなんじゃないかと思うんだけど、どうしてそんなに言いたくないんだろう? それ以外にも何かあるのかな? そのうち分かったらいいんだけど。


 でもこの島を指し示すコンパス、か。これだけを信じて全く方向の分からない霧の中、どこにあるか分からない島までたった一人で舟を漕ぎ続けるなんて、どんなに辛かっただろう。


「……大変だったんだね」


 それを思えば、地図で場所は追えるし、自動で進んでるこの状況を辛いなんて言えないよね。わたしが言うと、ミライは急に、初めて会ったときのような、暗い目をしてわたしを睨んだ。


「知ったような口を聞かないで。それにどうってことないわ。破壊神の下に行けば全てを終わらせることができるのだもの。そのためなら何だってするわ。

 二度と行きたくない故郷に帰ることも、危険を冒して宝剣を奪い返すことも」


「ミライ……」


 何て声を掛けたらいいのか分からなくて、わたしは言葉を続けられなかった。世界を滅ぼすなんてやめてほしいけど、そう言ったところで、説得なんてできやしないことは分かる。


 とにかく……今は帝都に行ってツバサに会う事だけ考えよう。そうしたらきっと、見つかることもあるはずだ。


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