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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第九章: どきどき帝国潜入!

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009_05_帝国行きはどうなるの#2

「帝国に行くことだけ考えるなら、スターリングに入りさえすれば、船は奪うなりして何とかなるはずです。普段と違ってそこに人目はないでしょうし。

 気になるのは船を動かせるか、ですけど……。レイさん、その辺何とかなりません?」


 カンが一気に、早口にそう言ってレイさんを見た。


「ああ、それなら僕で何とかするよ」


 レイさんはこくこくとうなずき、ごくごく軽く請け負った。


「だったら問題ありませんね。

 というか、恐らく防衛戦の最中が唯一の機会かと。勝てなかった場合、帝国に行けなくなりますから」


 レイさんの答えにカンはほっとした様子だった。話がさらっと進んでいくけれど、彼が何を言ったのか、わたしにはすぐには理解できなかった。でもしばらくして、ようやく気が付いた。


「負けるかもしれないから、見捨てて帝国に行こうってこと?

 勝てなかったら、なんて考えないで、勝つ方法を考えようよ。みんなで頑張ろうって言ったばっかりなのに。それじゃ銀騎士団(シルバーナイツ)はどうなるの?

 それに負けたら、リスクオンは……セイ達、そうとは知らずに帝国を侵略することになるんでしょ? そうしたら……きっと沢山犠牲が出る! そんなのだめだよ!」


 銀騎士団が負けてしまったらどうなるかを考えると怖くなる。ヴァーチャルの、ゲームの戦争と見せかけて、竜人の側には本当に犠牲が出るんだ。そんなこと、絶対しちゃだめだ。止めなきゃ。そう思って抗議したけれど、彼は首を振った。


「勝つのは正直厳しいと思う。騎士団三つを合わせたって、数は圧倒的に少ないし、恐らく連携も上手く取れない。

 それに、今回スターリングを防衛できたとして、帝国侵略が止まるだろうか? 恐らく運営内でも揉めて、彼らの中で決着がつかなくて結局こんなプレイヤー間での代理戦争みたいになったんだろうけど、特に利権が絡んでるだろう過激派側が一回負けたからって大人しく引き下がるか? 何とか別の手を考えるはずだ。だから――」


「数でこっちの方が劣ってるんなら、なおさらわたし達が抜けるなんてダメだよ!

 銀騎士団(シルバーナイツ)金騎士団(ゴールドナイツ)、仲良くなさそうなのは不安だけど。でもシンさんは協力するって言ったし、戦うってなれば協力できるよ!

 リスクオンを止めれば有力なギルドは無くなるし、過激派だって諦めるかもしれない。わたしはこの世界を壊したくない。だから帝国侵略も、破壊神の復活も、どっちも――」


 カンの言う事はそうかもしれない。だけど、それは受け入れられない。そう抗議するわたしの声は、バン、という大きな音に遮られた。ハッと音のした方を見ると、怒りを露わにミライが机を叩き、立ち上がっていた。


「全く、何を下らない事で争っているのかしら。どうせ帝国は破壊神が滅ぼすのだもの、どうなろうと関係ないわ。黒雲同士の関係もどうでもいいの。

 破壊神は復活させる。そのために私は早く宝剣を取り返したいのよ。だから帝国に少しでも早くたどり着ける方法を取りなさい。これ以上私を待たせないで」


 彼女はピシャリと言った。ミライは帝国を憎んでいるから、そう言うのは悲しいけど仕方ない、とは思うんだけど。カンはどうしてわかってくれないんだろうって、ホントはちょっと泣きそうだ。でも、負けるわけにはいかない。わたしは大きく息を吸い込み、もう一度言い返そうとして、


「ちょっと待ちなさい。みんな一旦、落ち着いて頂戴。全く、誰も彼も自分の意見を通すことに必死すぎだわよ。これじゃ話が進まないわ」


 落ち着いた低い声で、マドカさんに止められた。思わず息を呑み、そちらを見る。


「まず事実確認よ。レイ、カンの予想って合ってるのかしら?」


「僕はそっち側じゃないから真相は分からないけど、まあそうだろうね。人が増えた弊害だよねえ、やだやだ。

 ま、だからこそ、別の手を探してるわけだし」


 マドカさんに聞かれて、レイさんはうなずいた。


「別の手……?」


「……あれ? ちょっと待ってよ、カン君言ってないの、僕らの目的? 困るなあ。

 そっか、だからリンちゃん、こんなにヒートアップしちゃったわけね」


 わたしが聞くと、レイさんは困った顔でため息を吐いた。レイさん達の目的……。そういえば、聞いてなかった。世界を壊す気はないって言ってたから、ならいいかって思っちゃったんだけど、何であんなにミライ達を追いかけてたのか、ちゃんと訊いておけばよかった。


「カン、アンタがちゃんと話しなさい。もう少し早めに言ってたら、こんなに拗れなかったかもしれないのよ。

 ミライはもうちょっと待ってて頂戴。実行するのはこの二人よ。で、こういうの、納得しないまま無理やり決めると、思わぬところで失敗の原因になったりするから。

 早く、確実に帝国から宝剣を取り返したいなら、今は少し待つことね」


 マドカさんが二人を順に見て、落ち着いた声で言った。カンは額を押さえてうなだれていた。ミライはため息を吐きつつ、もう一度席についた。


「目的はゲートの制御方法を見つけることさ。それが分かれば、侵略の件も片が付くはずなんだ。

 今のところは彼女の遺跡での行動とゲートの動きに相関がありそうだから、それを調べてる。それで、帝国に行く必要がある。しかも、なるべく早く」


 カンはやや早口に言った。ゲート……? そういえばシンさん達にやたら訊いてたっけ。珍しいと思ったら、それでだったんだ。けど、もうちょっと分かりやすく言ってほしいな。これじゃイマイチ分からない。


「えっと……ゲートが広がって、物を沢山持ち返るメドが立ったから、帝国侵略することにしたんだっけ。じゃあ、ゲートを閉じれたら、それもなくなるって事か。

 ミライが破壊神を復活させようとしたから、ゲートが広がった……。

 あ、じゃあ破壊神の復活を止めれば、ゲートも閉じれるし、一石二鳥?」


 今までのことをまとめると、そんな感じかなと思って聞くと、彼はどちらともつかないような、微妙に困った顔をした。


「まあ、それは仮説だけど。ゲートの拡大が加速したのはソリドゥスの遺跡の時からだから、そうじゃないかって。でも破壊神を復活させないこととゲートを閉じることが本当にイコールかは調査中。

 ただまあそういうことだから、帝国侵略までにゲートの制御方法を見つけられれば解決はできるはず、だ。

 あ……分かってると思うけどこの話は他言無用で。恐らく他は誰も知らない情報だから」


 結局どっちなんだろう? カンの話は何だかはっきりしないけど、でも今は破壊神の復活を防ぐ方向でいいよね。ならいいや!


「うーん、でも、それだと帝国侵略までの時間を稼いだ方がいいから、スターリングは守った方がいいんじゃない? イベント自体はそんなに長時間じゃないんだし、勝ってから、でいいんじゃないの?」


「それはそう。でも低優先度。帝国に行ける機会があるなら早い方がいい。

 それで、マドカさんにお願いしたいんです。正直なところ銀騎士団はマドカさんさえ加勢に来てくれればそれで満足だと思います。後の二人は早々にやられた、とか言っても疑わないし困りもしないはずです。

 ですから俺達が帝国に密航している間、スターリングで戦ってもらえませんか? 勝手な事を言っているのは重々承知してますが……」


 カンは上目遣いにマドカさんの方を見た。ちょっとそう言われると悔しいけど、でも会議の時のアマネさんを見るに、そうなんだろうな。


「そぉねえ……。そう言う事ならいいわよ。アンタ達のためにひと肌脱いでア・ゲ・ル」


 片手を頭の後ろに当て、何かくねっとセクシーポーズを取りながら言うマドカさん。脱いだらすごそう……って違う違う。何考えてるんだわたし。


「全く、くだらない話で随分待たせてくれたわね! 貴女が余計な事を言わずに従っていたら良かったのに。フン、まあいいわ。早く帝国行きの準備をするわよ」


 今まで何とか大人しくしていたミライが、いら立ちを押さえきれない様子でわたしに詰め寄った。


 ……ん? 帝国行きの準備? ミライ、どういうつもり?


いつもお読み頂きありがとうございます。

次の回で議論も決着の予定です。

皆様の忌憚のないご意見、お待ちしております。

また面白かった/つまらなかったを、下の評価ボタンをぽちぽちして教えて頂けると助かります。

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