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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第七章: ここから探検再開!

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007_09_見つけた先にある未来#3

「ここが白騎士団(ホワイトナイツ)本拠地(ホーム)。さ、どうぞ」


 スタスタ歩くカンを追いかけてたどり着いたのは、街の外れ、外壁に近いところに建つ、レトロモダンでおしゃれな、白い二階建ての洋館だった。建物の片側に作られた半円形のバルコニーが印象的だ。あそこから手を振ってみたらお姫様気分が味わえるかなあ、なんてちょっと想像してしまう。


 重厚な木の扉を開けて中に入ると、玄関ホールにどん、とメッセージボードが置かれていた。


「『ちゃんと新人の面倒を見ること』だって? ちっ、マドカさん対応が早いなぁ……」


 それを読んだカンが軽く舌打ちした。このメッセージがなかったら、もしかしてわたしはほったらかしにされたのかな? だとしたらマドカさん、グッジョブ!


「あ、もう一つ書いてあるよ。『以下から都合の良い時間に丸をつけること。どこかには必ず参加すべし』 ってなんだろう? 何かあるのかな? この表に丸つけたらいいの? ってかわたしの名前がもうある!」


「うわぁ……。詳細は解らないが面倒臭いことが発生したに違いない。忙しい……とか言いたいけど、通用しないだろうし……。仕方ないか。

 ああ、ここに書いておくと共有される仕組みだから、さらっと丸つけてくれれば良いよ」


 いやいやながら丸を付け終えたカンからペンを受け取り、わたしも表に丸をつけていく。お、明日の夕方なら二人とも参加できるみたいだ。


「で、二階は個人の寝室。制服が置いてあると思うから、まずは着替えてもらうか」


 半分独り言のように呟くと、カンは二階に上がって行った。わたしも後を追いかける。制服……って、カンの着てるやつだよね。


「あ……そっか。すっかり忘れてたけどわたしもそれ、着なきゃいけないんだよね……。」


 妄想世界の軍隊チックな、白い折襟のショートコートにパンツ、黒い乗馬ブーツ、さらに白いベレーにとどめの指先の無い黒いグローブの男を見ながら、わたしは思わず大きくため息をついた。


「そう盛大に溜め息吐かれるとな……。まあ俺も……大学三年にもなってこんな厨二感溢れる格好しているのもどうかと思うが……。

 とは言え正式な仕事の時は着用必須だし、特典も多いから仕方ないんだよ。だから断じて俺の趣味ではない。断じて」


 彼はうなだれた。自覚はあるんだなあ。そして大学三年だったんだ。ニートじゃないし、いっこ上? っていうか行雄と同い年?


 え、それ就活とか大丈夫なのかな。余計なお世話だけど、ちょっと心配になる。これから大変そうだな、なんて思いながら彼を見ていて、ふとあることに気がついた。


「あれ? っていうか、中二病な目、元に戻ってる!」


「……魔眼ってアイテム名も片側だけ赤って見た目も、仰る通りだけれども。

 これはアプリをオーバレイ表示できる便利なアイテムなんだよ。ま、見た目と発動コストの都合、使わないときはOFFにしてる」


「ふぅん……」


 言い訳がましいカンを生暖かい目で見ながら、わたしはつぶやいた。彼はあきらめたのか、大きくため息をつくと、


「じゃ、この一番端の部屋を使って。因みに隣が俺の部屋で、反対側の端の一番大きな部屋が団長の執務室」


 がちゃりと扉を開けて、中に入るように促した。


「制服はそこのクローゼットに入っていると思うんだけど……」


 クローゼットを開けてみると、確かに色々入っていた。


「あ、これだね。へー、上は一種類だけど、下はパンツにキュロット、タイトにフレアにプリーツスカート……意外とバリエーション豊富! どれでもいいの?」


「ああ、好きなの選べばいいよ。

 じゃ、一階のリビング――階段降りて右の広い部屋――にいるから、着替え終わったら来て」


 彼は静かにドアを閉め、去っていった。


 よし、レッツ試着。ボトムをとっかえひっかえしてみて、結局プリーツスカートを選んだ。下はスパッツ履いてるし、スカートでも大丈夫でしょ。よし、着替えたしリビングに行こう。


 庭に繋がる大きな掃き出し窓から差し込む光が、リビングを明るく照らしていた。アンティークっぽい、ダークブラウンの木製の大きな長方形のテーブルと、落ち着いた色調のゴブラン織りの布で張られた椅子が並んでいて、何だかリッチな感じだ。


 その向こう側にあるホワイトボードの前にカンがいて、何か刑事ドラマみたいな写真入りの人物相関図を雑な字で書いていた。彼はわたしに気づいて振り返った。


「ああ、リンさん。一応今回の報告用に、分かったことをまとめておこうと思って。

 俺が把握していることはボードに書いておいたから、追加や修正があれば言ってくれる?」


「わかった。うーんと……」


 図に書かれてるのは……【幸福な未来】が元、帝国の奴隷だってこと、皇帝を暗殺して帝国の三つの宝物を奪ったこととそれを二か所の遺跡で使ったこと、それから破壊神の復活を目論んでいること、か。


「あれ? ミライが二つの遺跡にいたって、どうして知ってるの?

 っていうかソリドゥス南の遺跡の時、ホントは彼女のこと見てた?」


「……悪いね。彼女みたいなこっちの住人の事は、出来るだけ騎士団員以外には知らせない方針なんだ。だからあの時はああいう対応にさせて貰った。

 開拓村の地下の遺跡の件はレイさんから聞いたよ」


 彼はほんのちょっぴり気まずそうに答えた。でもFXの仕組みを考えたら仕方ないか。責めるのはやめておこう。


 気を取り直してホワイトボードに戻る。【黎明の翼】については帝国の将軍だって事と、皇女と夫婦関係って事が示されていた。ミライとの間はクエスチョンマークだ。


「お互い知り合いだったのは確かだよね。でもミライはずいぶんツバサを憎んでる感じだった。帝国に行ったことが……皇女と結婚したことが許せないって感じがしたなー。

 あ、ツバサの事好きだったとか?」


 わたしが言うと、カンがミライからツバサに、好意? と書かれた矢印を加えた。


「リンさんはあの将軍と一緒にいたよね? その時何か聞いた?」


「ううん、彼女との事は何にも答えてくれなかった。ツバサはミライをどう思ってたのかな。殺したり帝国に連れて行ったりしないでわたし達に託したあたり、何かあると思うんだけど。わからないや」


 わたしは首を振った。


「ま、今のところはこのくらいか。また何か分かったら、随時書き加えていこう」


「うん、わかった」


 とりあえず、今はこれ以上書けなそうだ。もっと彼らの事、分かるといいんだけど。


「そうそう、何か運営の依頼を受けたら報告を上げることになってる。報告に不備がなければ、掛かった経費+αが後で支給される」


 それって赤字にはならないってこと? え、騎士団すごいな。こんないい待遇なんて、嫌われるのも分かる気がした。


「後説明しておくべきことは……規則か。

 規則は一つ。如何なる時も良識を持って判断すること」


 ううん? 何かあいまいな感じだ。規則ってそんなんでいいのかな? リスクオンはもうちょっと色々あったような気がする……ジョーが何か言ってたし、ギルドの壁にも貼ってあったけど……覚えてないや。


「それって規則なの? もっとこう、やっちゃいけない事とかないの? そんなんで大丈夫なの?」


 わたしが聞くと、彼は肩をすくめた。


「さあね。まあ規則を作った人が良識で判断した結果じゃないの、細かく決めるよりも一人一人が自主性を持って考えるようにした方がいいって。

 ま、ここに来る人はそれで大丈夫、って信じられてると思えばいいんじゃないか? ……俺が言うのも何だけど」


 性善説なのかな? 別に何か悪い事しようと思ってるわけじゃないからいいんだけど。


「ま、規則はそれだけ。

 後は……ログインしたらこの部屋に集合、かな。打ち合わせとかはここでやるから。

 ログアウトは二階の各自の部屋からどうぞ。

 ……さてと、そろそろいい時間だから、俺はお暇させて頂くよ。次のログイン時間は多分連絡が来ると思うから、そうしたらその時間で予約しておいて」


「わかった。じゃあ、また次の時に」


 彼はわたしの言葉に軽く手を上げて答えると、さっさと二階に行ってしまった。わたしもその後を追う。さっきもらったばかりの自分の部屋で、ベッドに横になり、色んな事があったなあ、と思い出しながら目を閉じる。


 再び目を開けるとちゃんと現実に戻って来ていた。実際に異世界だったわけで、そのままそっちから戻って来られなくなるんじゃ、なんてちょっとだけ心配したんだけど、そんなことはなかった。別にわたしが向こうに転移してるわけじゃなくて、単に機械を遠隔操作してるだけなんだから、そんなことは起きないんだけどね。とにかくよかった。


 セイやリスクオンのみんなとのこととか、気になることはあるけれど、頑張ろう!


いつもお読み頂きありがとうございます。

これまでのまとめと次の予告の本話が本章の最終話です。一応、ゲームの謎の大枠が明かされた本章、お楽しみ頂けていれば幸いです。


皆様の忌憚のないご意見、お待ちしております

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