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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第七章: ここから探検再開!

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007_06_わたしが見つけた真実は#2

「異世界転移なんかじゃなくて、センターのVR装置の中から、異世界にある何か、たぶん黒い雲のように見える機械を操って、こっちを探検してて……。

 で……そこに、わたし達の姿の画像を……多分プロジェクションマッピングみたいに重ねたのが、このゲーム(フォルトゥナ)だと思います」


 わたしは意を決して、自分の考えを声に出した。


「ふぅん……で、どうしてそう思ったのさ」


 レイさんはそっけなく言うと、何か探るような目でじっとわたしを見た。すごいプレッシャーを感じるけど、わたしは負けじと睨み返す。


「あの人がわたし達のことを黒雲って呼んでました。全然違うはずのわたし達の区別がつかなかった。彼から見たら全部、同じ黒い人型に見えるんだって。

 彼が本当にこっちの世界の人なら、画像の部分は見えないから、そうなりますよね」


 わたしの答えに、彼は何も言わなかった。表情からも何も読み取れない。でも聞いてはいるみたいだから、続けよう。


「こっちにいるのはその機械だから、ケガがすぐ直せるのも、現実より大きな力が出せるのも変じゃないです。

 異世界のホントの生き物なんだから魔物……危険生物がやたらリアルなのもうなずけます。

 ホントに未知の世界なんだから、運営が新発見に報酬出したりするのも納得がいきます。

 このゲームの変な――普通のVRMMOと違う――部分全部、ここが異世界だって考えたらつじつまが合います!!」


 一気に言い切って、わたしはふう、と一度深呼吸した。とにかく考えたことはすべてぶつけた。レイさんのいう通り、妄想に過ぎないのかもしれないけれど。でも、そう考えるとしっくりくるんだもん。それ以外、考えられない。


「なるほどねぇ。

 しかしさっきから思ってたんだけど、ごく僅かな接触時間しかなかった竜人の言うことなんてよく信じられるねぇ。それで話を組み立てるなんてさぁ」


 レイさんは不思議そうな顔をしていた。さっきまでのなんだか試すような、探るような視線ではなくて、ホントに分からないって顔だった。


「彼らの話は一番作り話っぽかったけど、一番真に迫って聞こえたから……。

 でも何が、とか何で、とか言われたら、全くさっぱり分からないんですけど……」


 わたしもどうしてかはよくわからず、なんだか変な答えになってしまった。でもレイさんは何故か明るい笑顔だった。


「ふぅん……面白いね。……あ、危ない! 避けて!!」


 レイさんの叫びにふと見ると、突然大きな白い塊がすっ飛んできた。


「うわぁっ!?」


 わたしは慌てて後ろに下がる。結構派手な音と砂ぼこりを立て、カンが地面に叩きつけられていた。いやー、ぶつからずに済んでよかった。


「痛っ……! ああ、もう、だから言ったのに! もう沢山だ! ……無理ゲーもいいとこだ! ちっ……回復が追い付いてない!」


 悪態をつきながらようやく上体を起こす。彼の左の肘から下はごっそり無くなっていた。


「ご苦労様。大丈夫かい?

 お陰で有意義な時間を過ごせたよ、僕としては」


 レイさんは軽く微笑み、カンに手を差し伸べていた。意外といい人なのかな。


「だったらいいんですが。

 で、その有意義な時間の結果、次はどうすることにしたんです? もうこれ以上時間稼ぎはできませんよ」


 カンはその手をとらずに起き上がると、肩をすくめた。態度もそうだし、言い方も何かちょっとトゲのある感じだ。実はレイさんのこと嫌いなのかな? レイさんは大して気にしていない様子だけど。


「何の話をしていたか分からないけれど、そいつの説得には成功したのかしら? 

 あの男が来るわ! 本当に倒せるの!?」


 レイさんが答える前に、こちらに向かってゆっくりと近づいてくるほぼ無傷の男を見ながら腹立たしげに少女が吐き捨てた。彼女には、わたし達の話は伝わってないみたいだ。


「幸福な未来……。もう一度だけ言う。宝物を返せ」


 真剣な面持ちで男は強く言った。壊れたのか敢えて持っていないのか、セイと戦っていた時の波打つ刀身の大剣(フランベルジュ)は手にしていなかった。


 レイさんがわたし達に何もするな、というように手で制している。結局成り行きに任せる、というのが結論みたいだった。いいのかなそれで。


「……ねえ、どうしてそんなに破壊神を復活させたくないのかしら? 貴方はあの時、あんなに死にたがっていたじゃない。名誉だとか誇りだとか言って。

 ああ、でも今や野心家の皇女と皇帝の座に就こうとしているのだったわね。この世で最高の地位……それなら生き永らえたいのも当然かしら。私が殺したあの男がそうだったように!」


 少女は嘲笑した。あの時っていつなんだろう? それに、さっきから言ってる皇女とか皇帝っていうのは? なんか分からないけど、やっぱり彼女は彼をすごく憎んでいるってことだけはひしひしと伝わってくる。


「最高の地位? そんなものはどうでもいい! 私は戦士だ。力なき民を死なせぬために戦い死ぬことが務めだ」


 男はきっぱりと答えた。彼女が思ってるみたいに、皇帝とかそういう地位には興味があるわけじゃなさそうだ。この辺は、やっぱり彼女の誤解だと思うけどな。でもじゃあ、一体何でそんな誤解が生まれちゃったんだろう? そんなことを考えていた間に、


「だったら、死ねばいい」


 低く、冷たい声で告げ終わるより早く、少女が走り、手にした短剣で男の腹を刺した。

 男は苦痛と哀しみの混じった瞳で真っ直ぐに彼女を見ていた。多分避けることも、いや返り討ちにすることだってできたはずだ。でもあえて刺されたんだ。一体、何のために?


「あっ……」


 刺した短剣を抜けずにいる少女の手を掴み、男は彼女をそのまま自分の方へ引き寄せ拘束した。しまった、と思い駆け寄ろうとしたけれど、レイさんに止められた。


「放し――」


 締め落とされたのか、少女の声が途切れた。ぐったりした少女を片手で支え、男は小さな黒いナイフを取り出した。


「待って! 止めて! その子を――」


「幸福な未来を頼む」


 最悪の事態を避けようと叫ぶわたしに、男は哀しそうな笑顔で何かを頼んだ。そして彼女の髪をつかむと、素早く手にした黒いナイフを振る。少女の白い髪が切り落とされ、男の手に握られた。彼は彼女の体を地面にそっと横たえると、踵を返した。そのあとに、血が点々と続いていく。


「いいんですか、宝剣?」


 カンがレイさんを見た。何だかあまり関心なさそうな感じだ。レイさんはため息をついた。


「駄目だって思うなら、止めてくれれば良かったんじゃない?」


 この二人のことはよく分からないけど、今は無視。それより彼女だ。わたしは倒れた少女に駆け寄った。どこもケガはしていないようだし、息もあった。良かった。気絶しているだけみたい。ほっと胸をなでおろしたところに、レイさんが声をかけてきた。


「あ、ところでさ、どうかなぁ、君、やっぱり僕らの仲間にならない?」


「嫌です」


 わたしはぴしゃりと即答した。それを聞いてレイさんは額に手を当て、目を閉じてうなだれた。


「でも、その少女……と、多分あの男の事も、かなあ、とにかく異世界の住人の事が気になるんだろう?」


「それは、そうですけど」


 わたしが答えると、レイさんはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、わたしのマントをちらりと見た。


「それで、どうやって調べるつもりかなぁ?

 君はリスクオンの所属だよねえ。ギルドで仕事しなきゃいけないし、それって確か、駆除メインじゃなかった?」


「あ……。そっか、今回はたまたま、竜騎士を倒せってクエストだったけど、それだってギルドは乗り気じゃな――」


「クエストだって? あの武闘派ギルド(リスクオン)に依頼が行った?

 それでリンさんは、あの将軍閣下を倒しに?」


 レイさんの指摘にがっくりきてたわたしに、カンが驚いた様子で詰め寄ってきた。


「え? うん。まあ倒したがってたのはセイで、わたしはもう一回彼と話したかっただけだけど。

 わたし達、開拓者村のイベントで彼に会って、あっさり倒されちゃったから」


 わたしが答えると、カンは思い切り眉根を寄せてすごい勢いでレイさんを振り返った。レイさんは困った様子で首を振った。


「僕は知らないよ。やだなあ、何だか面倒な話みたいだね」


 カンにそれだけ答えると、彼はわたしの方をじっと、また探るような目で見た。


「まあ彼も帰ったことだし、この先リスクオンに竜人関連の話は来ないだろうね。

 だからどっちか選びなよ。このままリスクオンでお友達と魔物討伐に精を出すか、僕らの仲間になって彼らを追うか」


 せっかく誘ってくれて、一緒に頑張ろう、って言ってくれたセイ達と別れて、この何となく信用できないって言うか、嫌な感じの二人と一緒かあ……。でも、そうじゃないとこの子の事もあの人の事も何も分からないわけで……。


「ちょっとカン君、君も勧誘頑張ってよ!」


「勧誘って……大体そこは選択制じゃないでしょう? それに彼女は全て答えたわけじゃ――」


「君はつまらない事を言うね。全部答えられないのは君も、それに僕も同じでしょ?

 ま、今回が例外なのは認めるけど、こんなケースだし仕方ないよね。

 それにさあ、ただでさえ人手不足なのに不測の事態が生じてるっぽいし。彼女は君と違って面白そうだし」


 眉間に深ーいしわを寄せてレイさんを睨むカンに、レイさんは飄々と答えた。それを見て、カンはめんどくさそうにため息を吐いた。


「だったら、俺が何か言う事でもないでしょうよ。そんな権限もありませんし、どうせつまらない意見でしょうし。

 別に彼女がやりたい方を選べば良いと思いますけど」


 この二人も何を言ってるのか、イマイチ分からない。でもわたしのやりたいこと、かあ。リスクオンでやってる魔物退治って、やりたいことだっけ?


 違うな。どうしてやってたかっていうと、魔物退治自体はちょっと苦手だけど、せっかく誘ってもらったし、何したら良いかわかんないし、セイ達みんなと一緒にいたいから頑張る、って感じだ。楽しかったけど、ついて行かなくちゃって必死になってたところもあった。


 この子達の事、もっと知りたいっていうのは、今のわたしの素直な気持ちなんだ。こっちの方がわたしのやりたい事、だ。それに組織が変わったからって、セイ達と一緒にいられなくなるわけじゃない。金騎士団と一緒に戦ったこともあったんだし。


 ようやく、見つけられた気がする。


いつもお読み頂きありがとうございます。

今後の参考に評価・感想・ブックマーク等お待ちしております。

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