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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第一章: いまから探検開始!
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001_04_ことあるごとに課金され

「王都ソリドゥスへようこそ!」


 門番にかけられたいかにもRPGな台詞にちょっと感動した。この街ってそんな名前だったんだ。


「あの時計塔が探検家協会。わかりやすいっしょ?」


 セイがそう言って大通りの先、やや左手に見える、他の家々の屋根からぴょんと飛び出た時計塔を指差した。


 そこに向かって、おしゃれだけど若干歩きづらい気がする石畳の大通りを進んでいく。大通りの左右は商店みたいだ。色々な看板が出ているし、装備品やアイテムらしきものが綺麗にディスプレイされている。


 大通りの先は広場で、左手に時計塔と、豪華に彫刻の施されたファサードを持つ石造りの大きな建物があった。さっきはほとんど見てなかったけど、このオシャレでクラシカルな感じ、テンション上がる。



「お疲れ様です。クエストクリアおめでとうございます。報酬をお支払いするには、探検家協会への本登録が必要になりますが、どうされますか?」


 柱に彫刻が施されていたり、天井からガラスのシャンデリアが吊られていたりと中々豪華な感じのホール内にあるカウンターの一つで、きっちりした感じのお姉さんが迎えてくれた。


 本登録……体験じゃなくてゲームを続けるかどうか、だよね。うん、当然続ける。でも、登録したら払うってことは、体験だけの場合は報酬払ってくれないってことなんだ。


「登録、お願いします!」


「では、【探検用情報端末(エクスプローラ・ギア)】で登録情報をご確認下さい。

 クエスト報酬5ホーラをお支払いしておきましたので、そちらも併せてご確認下さい」


 わたしは言われた通り、ギアの画面を確認する


――リン

――保有免許(ライセンス): 探検家

――5 ホーラ


 おお、探検家として登録された。で、ホーラっていうのがフォルトゥナの通貨単位で、今の手持ちがここに表示されてる、ってことみたい。5ホーラがいくら相当なのか分からないけど、なんか嬉しい。


「ご登録有難うございます。今後も当協会へのご協力、よろしくお願い致します。

 新人の方の応援のため、武器と防具のレンタルクーポンを2枚ずつ差し上げています。レンタル店で武器と防具を無料で借りることができますので、探検にお役立て下さい。

 他に何か、質問等ありますか?」


 ギアの画面にクーポンが表示された。今回借りた武器と防具を初期装備としてもらえる、とかではないんだね。とりあえず2回分は武器と防具はあるけど、その先は自分で何とかしなきゃいけない、と。ホーラ、頑張って稼がなきゃ。


「あ、そうだ、素材の買い取りもお願いしたいんですが」


 探検家協会で換金するように、と【素材】を渡されたことを思い出し、わたしはカウンターに袋を載せた。


「はい、こちらで承ります。ホーンドラゴンの角と皮、それに肉ですね。状態も良いです。ありがとうございます。報酬を振り込みましたので、ご確認ください」


 お姉さんが袋の中身を確認するとそう言った。ギアを見ると、5ホーラ加算された、という通知が出てきた。おー。なんかもらえたみたい。登録情報を開くと、10ホーラになっていた。おお、クエスト報酬が二倍だ! 


「ホントは【解体】免許(ライセンス)ないと素材取れないんだよね? こんなもらえるんなら、取った方が良いのかな。でも、あんまりやりたくないなあ……」


 取っておいた方が良いのかどうか迷って、セイの方を見る。


「【解体】あると素材買い取ってもらえることもあるけど、割と安かったりするし。

 【解体】ないと受けれん仕事もあるけど、たまにだし。

 それに試験受けんといかんし、解体すんのグロいしめんどーだし、パーティで誰か一人もってりゃいーし。

 だからウチは取ってない」


 セイが首を振った。あ、素材を売って追加の収入源にするのは、【解体】をパーティの誰かが持っていればいいんだ。じゃあ、わたしが解体の免許を取らなくても、持ってる人を探してパーティに入ってもらえばいいってことか。そっちの方がいいなあ。やめとこうっと。


「もし各種免許(ライセンス)を取得される場合は、探検家協会のあちらのカウンターで受け付けております」


 わたし達の会話を聞いていたらしい受付の人が、反対側のカウンターを手で示した。まあ、何か他の免許が必要になったら来よう。


「じゃ、そろそろログアウトしよーぜ!」


 セイはそういうと、探検家協会から出て、広場に面したオープンカフェのような場所に向かった。建物には、INNの文字があった。宿屋、兼カフェみたいだ。


「宿屋で寝るとログアウトできっから。あ、でもその前に次の話と……あとナビのインストール!

 ナビないと、パーティメンバーの場所どころか、自分の場所すら分からんし! そんなんまぢ死ぬから!!」


 オープンカフェのテーブルの一つにつくと、セイは机をドン、と叩いて、怒り交じりに言った。言われてみれば自分のいる位置って地図に表示されてない。わたし、かなり方向音痴だし、地図って読めないから、ナビは絶対いる。


 ええと……ギアのメニューに【アプリストア】ってあるから、ここからダウンロードできるのかな。ナビ……あった、これだ。


「え? 1ホーラ? 有料なの? ないと死ぬ機能なのに??」


「そそそ。もらえるホーラも多いけど、けっこー課金あるんだよねー」


 インストールしようとして有料なことに驚くわたしに、セイがうんざりしたように言った。でも、ないと困るんだし、さっき10ホーラ貰ったし、まあいいや。


 インストールをタップするとすぐにナビがインストールされ、先ほどのマップ上に青い二重丸が表示されるようになった。わたしの現在位置だ。これでよし、と。


「リン、土曜の2時って空いてる? 何か新しい魔物退治のクエスト始まるらしくって、ウチらそれやろうとしてるんだ。いけそうなら、ログアウトした後予約よろしく!」


「うん、大丈夫。じゃあ予約しとくね」


 土曜日のその時間ならバイトもないから、ちょうど良かった。


「今日はそろそろログアウト時間だから、詳しいクエストの話は後でする……あ、そーだ。明日の授業の後は? 予定なかったら、カフェいこーぜぃ! めっちゃいいとこだから!!」


 セイはやや早口に言うと、慌てて席を立った。ホントだ、そろそろログアウトの時間だ。体験申し込みの時に、必ずログアウト時間を守ること、って口酸っぱく言われたっけ。


「夜バイトあるけど、それまでなら大丈夫」


 セイにそう答えて、わたしも席を立つ。今いるカフェの奥にある宿屋に向かうと、ふくよかなおかみさんが迎えてくれた。宿屋は一人ずつしか受け付けてくれないらしく、先にセイが宿泊手続きを済ませた。客室に向かう彼女を見送ると、次はわたしの番だった。


「いらっしゃい! 泊まるなら……そうだね、2ホーラってとこだね。 どうすんだい?」


 2ホーラ……? しかも相手を見て決めた感じ? 新人だからってぼったくられてるとか??


「ああ、ケガしてたりすると看病しなきゃなんないからね! 追加料金をもらってんのさ。

 それとね、うちに泊らずその辺でやり過ごそう、なんて考えは勧めないよ! ソリドゥスの騎士団に取っ捕まっちまうからね」


 疑いの目を向けられるのは慣れてる、とでも言うように、おかみさんはふっと息を吐き、笑顔で答えた。


 この話、どういう意味なのかな? ええと……ケガ……ダメージを受けたら、値段が高くなるってこと? それから、泊まらなかったら……っていうのは多分、宿屋からログアウトしないと、何かペナルティくらう、ってことかな。


 これは、大人しく払うしかなさそうだ。セイがやっていたようにギアを差し出す。どうもこの世界はスマホ――じゃなくてギアだけど見た目は同じ――決済が普及しているみたいだ。


「じゃ、二階の一番奥の部屋で休みな。ゆっくり休んで、次に備えな!」


 指定された部屋に行くと、中にはベッドとサイドテーブル、それからタンスとツボがあった。タンスとツボを調べてみたけれど、何も出てはこなかった。ちょっと恥ずかしいけど、誰も見てないからまあいいや。


 寝るとログアウトって話だったから、わたしはふかふかのベットに横になり、目を閉じる。だんだんと頭が重くなって、何だか本当に眠くなってきて……。


 わたしの意識はそこで途切れた。

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