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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第三章: とつぜん遺跡探検!

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003_08_話題選びは難しい

 この前と同じように、セイとわたしは授業が終わった後でカフェ・フォルトゥナにやって来た。週替わりなのか、イタリアフェアは終わって、フランスになっていた。ヨーロッパ縛りなのかなあ。


「やっべ、フォアグラとかあるし! ウチそれにする! ってかそれしかなくね?」


 セイのやたらハイテンションな声に、慌ててメニューボードを見てみる。ホントだ! スペシャルランチに牛フィレとフォアグラのロッシーニって書いてある! でもお値段2500円。普通のランチの約3倍だ。……うん、普通のでいこう。


「わたしはBセットのカスレ? にする。食べてみたい気はするけど、予算オーバーだし」


 頼んだのがどんな料理か分からないんだけど、前のもおいしかったし、このカフェなら何頼んでも大丈夫でしょ。まあ、確かに高級食材(フォアグラ)は気になるけど。


「えー、リンも食べたいなら食べればよくね? おカネのこと心配してほしいモノをガマンするとかありえんし。てかそれ、ずっと手に入らんヤツじゃね? ウチはまず手に入れて後からかせげばおっけーって思うけど」


 セイはふっと息を吐き、呆れたようにそれだけ言うと、この前と同じ窓際の席に向かっていった。そういう考え方もあるけど、でもわたしは持ってないのに使っちゃうのっていやなんだよね。



「ってかそういえば、ウチらと別れた後、カンと一緒に何やったの? 楽しかったぁ?」


 わたしが席に着くと、セイがニヤニヤしながらテーブルに身を乗り出して聞いてきた。どういう意味で聞いてるんだか……まあ、普通にどうだったかを答えればいいか。


「あ、遺跡に行ったよ。ちょうど遺跡に行くのに護衛を探してる人がいたから、それを引き受けて」


「えー? じゃ三人?? 何それつまんね。

 ってか知らん人といきなり一緒に行くとかあり得んし。遺跡探検もあり得んけど……。リン、何やってんのぉ? ヤバくね??」


 セイはかわいい顔を思いっきりしかめた。やっぱり、いきなり知らない人と一緒に行くのはまずかったみたいだ。


「うん。ヤバかった。そいつ遺跡探検の途中でテラーフェザーに襲われた時、真っ先に逃げ出しちゃって。結局そいつは逃げるための盾用にわたし達を連れてったみたいなんだ。

 もう、ホントひどい目にあったよ!」


 思い出すとやっぱり怒りがこみ上げてくる。


「えぇ? ダマされたわけ? だから知らん人と一緒に行っちゃだめなんだって! FXはフツーのゲームじゃないんだから、信用できる人以外のゆーこと聞いちゃダメだし! もぅ!!」


 セイに半ば呆れられつつ怒られてしまった。


「うん。それは今回よーくわかった」


 本当に、そこは反省してる。今回の件は騙そうとする人がいるっていう授業料って思おう。いきなりゲームオーバーとかにならなかっただけよかったと思おう。


「ってかそれ大丈夫なん? 緊急帰還とか使うと一気にホーラ無くなるっしょ? 次の仕事行ける?」


 心配そうにセイが聞いた。わたしはぱたぱたと手を振る。ホントはその後教授にもらった報酬とかあるんだけど、そこは黙っておかないと。


「あ、それは大丈夫。ええと……テラーフェザーはカンが倒してくれて無事だったから、ホーラはそんなに無くなってない」


「ウソ? まぢで? あいつ強かったの?」


 びっくりするセイに、わたしは首を横に振る。


「ううん、そういうわけじゃないみたい。何かよくわかんないアイテムの効果っぽいけど、あわててたし詳しいことは聞かなかった」


 そういえば、色々ありすぎてうやむやになってたけど、カンもなんだか色々謎だったよね。遺跡で会った謎の屈強なオネエのマドカさんとも知り合いっぽかったけど、詳しい関係は教えてくれなかったし……。何か隠している感じで怪しい。


 あ、っていうか、今にして思えばあの三人、グルだったんじゃない? 女の子を見なかったっていうの、三人で口裏合わせてたんじゃないかな!? でも、だとしたら何で……?


「なになに、考えこんじゃってぇ。あ、カンの事、気になってるとか??

 ってかぶっちゃけどう?」


 考え込んでいたら、セイが再び楽しそうにニヤニヤして聞いてきた。もう、何でこのコはすぐそういう方向にもっていこうとするんだろう?


 どう、って聞くけど、自分がそれを聞かれたら、きっと無いって即答するんだろうな。そう思いながらわたしはセイの問いに軽くため息をついた。


「どうって言われても。気になるのは気になるよ。でもそれは、色々隠してる感じだからなってだけ。あいつ、絶対おかしい!」


「まあ、装備とかいろいろおかしいよね」


 セイがクスクスと笑った。


「いや、そうかもしれないけど、そんなんじゃなくて、何か隠してるって感じ! 何か――」


「お待たせしました。スペシャルランチです」


 上手くセイに伝えられないでいるうちに、何かすごいキツイ、嗅いだことのない匂い――強いて言うなら土? カビ? かな――のする皿をウェイトレスさんが運んできた。わたしは思わず顔をしかめた。


 ま、食べ物も来たし、いくら考えてもあの三人の事は分からないし、それにセイに何かあらぬ方向に話を捻じ曲げられそうだし、この話はここで終わりにしよう。


「わー、めっちゃいーにおい!! トリュフだ!」


 喜ぶセイの前にあるのは、分厚いフォアグラらしきものがのった分厚いステーキだった。黒っぽいソースがきれいな模様を作っているけど、そこにトリュフが入ってるのかな? 庶民にはこの匂いキツいなあ。 


「Bセットです」


 と、わたしの前に置かれたのは、湯気を上げる素焼きの植木鉢みたいな鍋だった。煮込み料理かな? 見た感じトマト煮込みっぽい。


「いただきまーす!」


 言い終わるより早くセイがナイフを入れた。脂の滴るフォアグラと、中がきれいなピンク色のステーキが重なってめちゃくちゃおいしそう!


 わたしも食べよう。アツアツの鍋にスプーンを突っ込むと、大きなソーセージやらゴロゴロした肉と、その間を埋めるように豆がどっさり入っていて、かなりのボリュームだった。スプーンですくって口に運ぶ。熱っ! ハフハフしながらようやく飲み込む。


「やばい、めっちゃおいしい! 特に豆! お肉とかの旨味が染みこんですっごくおいしい!!」


 やばい、スプーンが止まらない。結構こってりだけど、トマトの酸味もあってかパクパク食べられるから不思議。そしてすっごくあったまる。最近寒くなってきたからいいかも。


「ふーん。てかフォアグラヤバい! まぢしあわせ! これはぜってー食べた方がいいって。

 リンももっと稼げる仕事しよーぜ! そしたらおカネの心配しなくていーし! 遺跡探検なんかじゃなくってさ!」


 セイがフォークをこちらに向けて振りながら言った。


「でも、遺跡探検楽しかったよ。珍しいものもあったし、テラーフェザーとかもいたし、セイも今度いっ――」


「あはは。遺跡とかありえんし」


 あの時の事がやっぱり気になるわたしは、もう一度遺跡に行ってみたいなと思って、ちょっとだけ期待を込めてセイを誘おうとしたのだけど。言い終わる前にあっさりばっさり断られてしまった。


「そう……だよね。やっぱ儲かる仕事の方がいいよね!

 ところで、ジョーがこの間のスパイニードラゴン退治でギルドの設立資金クリアしたって言ってたけど」


 そのショックをごまかすように笑って、わたしは話題を変えた。


「そそそ。これでギルド作れるし。で、ジョーがこの前ゆってたとーり、ウチらはソリドゥスじゃなくて、スターリングを本拠地にしよーとしてるんだよねー。今後イベント増えるってウワサだしぃ」


「それで次、スターリングまでの荷物運びの護衛の仕事するんだっけ。

 あれ? でも、設立資金足りてるんでしょ? わざわざ新しく仕事受けなくても、スターリングまでの移動ならゲートを使えばいいんじゃないの?」


 クレーディトまでは一瞬で行けた。そっちの方が速くていいんじゃないかと思って聞くと、セイが分かってないな、というように大きくため息をついた。そしてちっちっちっ、と人差し指を振りながら、ちょっと得意げに語り出した。


「リン、あまいよぉ。ゲート代いるし、ゲートは武器とか持ち込めんから別料金で送らなきゃだし。だからまぢ高くつくんだって。ひどくね? 

 けど仕事を受ければ武器も持っていけるし、逆に稼げるからそっちのがおトクなの!」


 最後はびしっとわたしに指を突きつけ、高らかに宣言した。この辺の得なやり方って部分は、きっとジョーの受け売りじゃないかな。セイってそんな節約志向じゃないし。


「でも護衛ってことは襲われるってことだよね……」


「そりゃあ、そーでしょ。じゃなきゃつまらんじゃん」


 セイはそういって笑った。むしろ襲われること――というよりは襲ってきたのを返り討ちにすることかな――を楽しみにしているようだった。わたしとしては何もないならそれに越したことはないと思うけど、何か起こるのがRPGのお約束。きっとまた戦闘になるんだろうな。


「けど、次の仕事またリカ達も一緒なんだよねー。ギルド設立のためにみんなそろってないと、だからしゃーねーけど、まぢゆーうつ」


 セイがついさっきウェイトレスさんが片付けた机に突っ伏した。


「リカ達、って? あ、もしかしてスパイニードラゴンを一緒に倒しに行ってた人達?」

「そそ。リカとその親衛隊。リカはジョーとバイト先が一緒の知り合い。何かやたらジョーに馴れ馴れしくてまぢウザい。メーワクしてんの気づけよってカンジ」


 彼女はとても不機嫌に答えた。自分の前で彼氏にやたらべたべたされたら、凄く腹が立つから当然といえば当然かも。


「けど、そんなんだったらなんで?」


「あいつもギルド作りに関わってて、かなり人集めてんだよねー。後、ウチらほどじゃないけど強いし、便利なアイテムとかアプリとか免許(ライセンス)とか親衛隊に揃えさせてっから。

 だから協力せざるおえない? 的な」


 セイは口を尖らせた。要するに便利だから、か。そういう上手く利用しよう、みたいな感じ、あんまり良くないと思うけど。


 それにしてもリカって人、すごいな。アプリとか免許とかって、別にパーティの誰かが持ってればなんとかなるの多いし、高いから、自分では買わないで他の人――親衛隊ってのもすごいよね――に買わせてるのか。いい作戦かも。って、わたしにはできないけど。


「でも、それじゃギルドできたらその悪女っぽい人もずっと一緒なの?」


「そーなんだよねー。けどまあ、次の仕事もその後もどーせパーティは別だしー。

 だいたいあいつなんてジョーは相手にしてなくて、あいつが空気読まずべたべたしてるだけだし。だからウチは別に気にしてないし」


 余裕なのか、強がりなのかはちょっと分からない。この辺はあんまり触れない方がいいかな。


「そっか。じゃあ気にせず、普通に仕事すればいいよね。

 っていうかセイ、今度はちゃんと一緒にやろうね?」


 ホント、次はドタキャン、なんてことがないようにしてほしいんだけどな。大丈夫だよね、なんて思いながらセイを見る。彼女はだいじょうぶ、とこくこくうなずいた。


 次はギルド設立するっていう事だし、さすがにこの前みたいなことにはならないよね。

 リカとその親衛隊の事は気になるけど、まあ仲良くできるように頑張ろうっと!


読了有難うございます。キャラクターや展開始め、新しい情報の多かった本章も、このまとめの現実回で終了です。いかがでしたでしょうか?

次回からはまた元のメンバー+本話に名前だけ登場した人物と護衛のクエストです。


評価・感想・ブックマーク等いただけますと大変嬉しいです。

私を喜ばせてどうなるものでもないのは承知しておりますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

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