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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第三章: とつぜん遺跡探検!

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003_03_初心者連れは何のため

 カンの叫び声に慌てて振り返ると、何かが鋭い爪を向けてこっちに飛び掛かってくる。避けなきゃ、とわたしは後ろに跳んだけど、


「痛っ」


 少し間に合わなかったようで、爪がガードした腕を掠めていた。襲ってきた黒っぽい何かはストン、と軽く着地すると向きを変え、再びこちらを攻撃しようと様子をうかがっている。武器は預けちゃったし、一体どうやって戦ったらいいんだろう? 助けを求めて、ちらりと二人の方を振り返ると、


「じゃ、後はまかせたよ~」


 と一言、ダッシュで逃げ出すドッポの後ろ姿があった。


「えっ……!? ちょっと、一人だけ逃げるなんてひどい!」


 追いかけたかったけれど、それはできなかった。魔物がじっとわたしの方を狙っている。逃げ出したら、その瞬間に襲われる。


 そいつはスイフトフェザーを二回り大きくしたような、全身黒っぽい羽根で覆われたドラゴンのような鳥のような魔物だった。腕と足の先にはさっきわたしを掠めた鋭い爪が生えている。まともにくらったらざっくり裂かれるだろう。でも逃げるのは無理なんだ。戦うしかない。こうなったら素手で殴ってやる、とぎゅっと拳を握ったところで、


「……退いて」


 と、いう声と同時にわたしと魔物の間にカンが割り込み、手にしたごく短い棒のようなものでそいつを殴る。瞬時に魔物はぱたりと倒れ、ピクピクと痙攣した。


「一撃? うそ、凄い……」


 実は強かったんだ。いろいろヒドイこと言ってごめん。


「早く逃げよう。効果は大して続かないから」


 彼はドッポが逃げて行った方に視線をむけ、わたしに逃げるように促した。わたしはコクコクとうなずくと、全速力で走り、次の部屋に続く扉に向かう。


 扉までもう少し、というところで魔物のものっぽい甲高い鳴き声と、走る足音が聞こえてきた。倒した訳じゃなかったみたい。とにかくそれは無視して扉の中へ駆け込む。後からカンも入ってきて、扉をしめた。幸い、扉を開けて入ってくる、ということはなかった。


「ふぅ……良かったあ! ありがとう」


 呼吸を整え、ひとまず彼にお礼を言うと、


「いや、もう少し早く気付くべきだった。彼の話からしてこの辺りは警戒しておくべき所だったんだ。悪かった」


 彼は首を振り、そう謝った。気づかなかったのはしょうがないと思うし、知らせてくれなかったらきっともっとひどいダメージ受けてたから、謝らなくてもいいのにな。


「ううん、ケガも大したことないから大丈夫。

 それより……すっかり忘れてたけどさっきの魔物、保護対象とかじゃなかった?

 それにさっきのって、武器だよね? 持ち込んでいいの?

 何かペナルティとか、とられたりしない?」


「テラーフェザー? ペナルティはないから気にしなくていい。

 そんなことより、彼を追いかけたほうがいいんじゃないかい?」


 心配するわたしにそう答えると、彼は部屋の先を顎で指した。


「そうだ、ドッポ! いきなりわたし達を置いて一人だけとっとと逃げ出すなんてひどすぎる! 捕まえて文句言ってやる!」


 前にいたカンを追い越して、部屋の出口の方へガンガン進む。あいつ、絶対許さない!

 ランタンを持っていたドッポがいなくなって、探検用情報端末(ギア)の懐中電灯アプリだけで少し暗くて心もとないけど、どうやら一本道みたいだしこのまま進めば良さそうだ。早く追い付かないと。


「酷いって言うけど、ま、仕方ないよ。俺達は護衛なんだし」


 カンはふっと軽くため息をつくとそう言い、イライラしながら大股で歩くわたしの斜め後ろを静かについてきた。


「確かに護衛だから、魔物の攻撃は受けなきゃだけどさ。だからってわたし達を置いてさっさと逃げ出すなんてやっぱり許せないよ!!」


 彼のようにあきらめて無理やり納得するなんてできないわたしに、彼は少し困った顔をして頭をかくと、


「遺跡で護衛してくれる人を探すのは難しいんだ。報酬が見込めないからそもそも遺跡に行く人が少ないし、遺跡内は武器がほぼ持ち込めなくて勝手が違うから、たとえ有害生物駆除で実績があっても、まともに戦えないことも多い。

 だったら遺跡に行きたい、って初心者を格安で連れて行って、いざって時に盾にして逃げた方が安上がりじゃないかい? それでそいつらがゲームオーバーなら報酬を分けなくていいし。

 ああ、多分今回はそれ狙いだね、提示した報酬の配分も割と多めだったし。さっきのところまでしか行ったことないと言ってたから、前回ここで死ぬか緊急帰還するかしたんだろうね。それでそこの盾用に俺達を連れてきた。

 ふうん……悪くないアイデアだな」


 説明する、というよりは自分の考えを整理するように早口で語った。


 ええと……それって、最初っからわたし達を利用するつもりだった、ってこと?


「悪いよ! 最悪なアイデアだよ! 役に立ってくれるか分からないけど高い分け前を要求する経験者より、安く使い捨てられる初心者をだまして利用するなんて、そんなのひどすぎるよ!

 わたし達、利用されたんだよ!? 何でそんな無関心なの!?」


「何でって言われても……まあそんなもんだろ、そういうルールのゲームなんだから。誰だってその程度のことは考えるさ」


 わたしの怒りを理解できない、とでも言うように、カンは眉間にしわを寄せて淡々と答えた。彼はだまされた方が悪い、って考えるタイプなのかな。そんなのおかしい。


「それに利用したって意味じゃリンさんも同じだろ? 遺跡に行くのに彼の免許が必要だった」


「確かに、そうだけど……。でもそんな利用してやろうとかって悪意はないし……」


 カンの一言に、わたしは思わず口ごもる。免許持ってる人がいれば遺跡に行けるし、それに発見した分の報酬も一部はもらえるし、ってことで飛びついたのは確かだけど。


「ああ、悪かったよ、余計なこと言って。忘れて。それより先を急ごうか」


 カンは苦笑いして、視線をそらすように扉の方を見た。そうだ、何にしてもドッポを捕まえて一言文句を言ってやらなきゃいけないし、それにここから先のまだ行ってない場所で遺跡探検もしなくっちゃ。そう思い直して先を急ぐ。


 やっぱり特に何もない部屋をもう一つ抜けたけど、ドッポの姿はなかった。結構あっさり魔物を倒せたから、そんなに離されてはいないと思うけど、一向に姿が見えない。もしかして実はどこかにまた隠し通路でもあったんだろうか、なんて不安になったところに、


「あああああ!! 痛い! 痛い!! くそっ、放せ!!! 何で! 何でこんなところに!!!!」


 隣の部屋の方からドッポのものらしき悲鳴が聞こえてきた。


「これ、ドッポの悲鳴だよね!? 何があったんだろう? もしかしてまた魔物!? とにかく、急がなきゃ!!」


 わたしは大急ぎで隣の部屋へと駆け出した。

読んで頂きありがとうございました。悲鳴の理由とは!? 次も読んで頂けたら嬉しいです。

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