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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第三章: とつぜん遺跡探検!

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003_01_ドタキャンするは金のため

 いつもの宿屋で目を覚ますと、ベッドの脇に前回拾ってメンテナンスに出しておいた剣が置いてあった。これでわたしも専用武器持ちだ! なんか嬉しい。防具はレンタルしなきゃなんだけど。


 装備を整えて集合場所に向かう。すぐに華やかで目立つ二人が見つかった。だけどそこにはセイとジョー以外にも、上級者っぽい見た目の探検家が数人いる。集まって何か話しているようで、なんだか入る隙間がない。どうしようかと迷っていたら、ちょっと離れたところに、ぼんやり成り行きを眺めている村人がいた。


「どうしたの? なんかあったの? あの人達誰?」


「さあ。よく分からないがジョーの知り合いらしい。もしかしたら今日、中止になるかもね」


 ヒマそうな村人……カンに聞いてみると、彼は興味なさそうに答えた。カンはなぜか無関心だけど、中止なんてそんなの困る。詳しく聞こうとしたところで、他の探検家との話がまとまったのか、セイとジョーがこっちに走ってきた。


「あー、二人ともゴメン。俺とセイ、急遽あいつらと別のクエスト受けることになったから。スパイニードラゴンってレアな魔物狩りでさ、ギルド設立に向けた資金稼ぎのために絶対クリアしときたいんだ。

 ……ってわけで、申し訳ないが今日は解散」


「まぢごめんねぇ、リン。けどスパイニードラゴン狩れるチャンスってなかなかないしぃ、まぢ強い魔物らしーからウチらもリンたちの面倒みれんし」


 申し訳なさそうにジョーとセイが口々に謝った。ええと……それってカンの予想通り中止、ってこと? そんなのあんまりだ。どうしよう、考え直してもらえないかな……なんてわたしがどう反応しようか迷っている間に、


「了解」


 とだけカンが即答した。それを聞いた二人は安心したようで、ぱっと顔を輝かせた。


「じゃあね! 後は二人でヨロシク~!!」


 嬉しそうに手を振って、先ほど話していた人達の方へ足早に戻っていった。


「あ、ちょっと……!」


 何か言おうにも時すでに遅く、去っていく二人を見送ることしかできなかった。



「ええと……なにこれどういうこと?」


 どうしたらいいか分からず、ついイライラをさっき即答した村人に向けてしまう。


「要するに、急遽いいクエストが見つかって、村人たちが邪魔になったわけさ」


 彼は怒るでも悔しがるでもなく、淡々と答えた。


「えええ? 邪魔って……。そんなのひどくない? 約束してたんだよ? それなのにドタキャンなんて!」


「ま、仕方ない。そういうものだよ。好条件のクエストは見つけたら即取らないと儲からないから。

 ここでゴネたところで向こうはもう決めてるし、多分契約金も払い込んでる。だから何か言ったところで時間の無駄さ、お互いにね」


 わたしのいら立ちには全く共感することもなく、彼は相変わらず冷めた調子で言って、肩をすくめた。納得いかないけど、これ以上彼に何か言ったところでのれんに腕押し、って感じなのでやめた。


 それより今日、この後どうするかを考えなくちゃ。せっかくログインしたんだし、ボーッとしててももったいない。……あ、そうだ。


「ヒマになっちゃったからさ、今からこの近くにあるっていう遺跡に行くのはどう? 宿屋にポスターあったじゃん。気になるから、行ってみたいんだけど」


「ふぅん、遺跡ねえ……」


 わたしの提案に、彼は腕を組み、眉間にしわを寄せ首を傾げた。やっぱりセイ達と同じく、遺跡なんて儲からないからダメって言いたいのかな。


「でも――」


「ちょっとそこの二人、初心者だよね~?」


 腕を組んだまま何も言わないカンをもう一押ししようと思ったところに、ちょっと間延びした声が割り込んできた。


 声に振り返ると、サンドカーキのサファリシャツとハーフパンツに編み上げブーツ、そして頭にはサファリヘルメットという、いかにも探検家な服装をした、小柄で小太りな男がこっちを見ていた。エジプトで発掘とかしてそうな感じ。


「遺跡に行くような話、してたけどさ~。遺跡に入るには【免許(ライセンス)】が必要だけど、キミ達持ってるの?」


「免許……? ううん、持ってないよ」


 わたしは首を振る。でもそれって、ダンジョン探検するにも免許取らないきゃいけなくて、しかもそのためには何ホーラか取られるってこと? どんだけあくどいゲームだよ!


「免許がなきゃ、残念だけど遺跡には入れないよ~。宿屋の遺跡探検免許試験のポスターにも書いてあったでしょ~?」


 宿屋のポスター……あ、あれそんなこと書いてあったんだ。内容全く読んでなくって、遺跡ってとこしか見てなかった。免許試験のポスターだったんだ。


「あ……そうなんだ。残念」


 じゃあ遺跡は諦めなきゃダメかぁ。がっくり肩を落とすわたしを見て、彼はニヤリと笑った。


「でも、免許を持ってる人がいれば、一緒に入ることはできるんだよね~。

 ボクは遺跡探検の免許持ってるよ。よかったら、一緒に行かなぁい?」


 唐突な提案だけど、どうしよう? 遺跡には行ってみたいけど、免許がないからわたし達だけじゃ入れないわけでしょ。で、彼がいれば、遺跡に入れる。ならいい話だよね。


「……ボク、結構あの遺跡探検しててさ~、隠し通路とかも知ってんだ~。普通は入れないところにも連れて行ってあげるよ~。

 それにもし遺跡探検免許試験受けるつもりなら、一回遺跡にいっておくと試験が楽になるよ~」


 彼はそっとわたしに近づくと声を落としてささやいた。普通は行けない場所、かあ……。なんとも魅力的な響き。


 魔物狩りの時も経験者がいた方が心強かったし、やっぱり、詳しい人に連れて行ってもらった方がいいよね。そう思いながらカンの顔をちらりと見ると、相変わらずどんよりとした目でぼんやりと男の方を見ているだけで、何の感情も読み取れなかった。


「え、凄い。本当に? わたし、連れて行ってほしいな。

 いいよね、カン?」


 さすがに知らない人と二人っていうのもちょっと気まずいし、カンにも同意を求める。彼とも一回会っただけだし、コミュニケーション能力は残念だからあんまり意味ないかもしれない。でもそれでも、二人より三人の方がいいと思うんだ。


「え? ううん……まあ、そうだね、いいか。……後学のためにも。

 で、条件は? 単に遺跡の案内してくれる、なんてボランティアではないだろ?」


 乗り気でないながらもOKすると、カンは男の方に視線を向けた。なんかちょっとヤな感じだ。初対面なんだし、せっかく誘ってくれたんだからもうちょっとフレンドリーにしたらいいのに。 


「あはは。初心者の割に殺伐としてるね! もちろん違うよ。ボクは遺跡探検専門だから、戦闘はあんまり得意じゃなくってね~。キミ達には護衛をお願いしたいんだ~。

 まだ遺跡内で襲われた、って話はないんだけど、たまに魔物らしき影は見たりするから、念のため用心しておきたいんだよね~」


「護衛、ね……。ま、いいさ。で、報酬は?」


 笑顔で答える男に、カンは相変わらずの仏頂面で、フレンドリーなんて言葉のかけらもなかった。


「エリアの初踏破ボーナスや発見レポートの報酬はボクが7で君達が3だよ。これが護衛の報酬だね。あ、少ないなんて言わないでよ? 分かんないかもしれないけど初心者に対しては破格の提示だからね。で、キミ達の分は好きに配分決めてよ。

 後、遺跡の隠し通路とか、僕が見つけた僕の場所だから、絶対に他言しないって約束してほしいな~」


 わたし達二人で三割、かあ。でも彼がいなかったらそもそもそこに行けないわけだから、考えようによっては結構もらえてるのかも。


「後、これはシステム上のルールだからしょうがないんだけど、死んじゃったりして発見に立ち会ってなかったり、遺跡から街に帰らなかった場合はレポートの報酬は入らないから気を付けてね。

 ……あ、心配しなくてもこのゲームでPK(プレイヤーキル)ってできないから、発見を独り占めにするためにボクがキミ達を殺したり、なんてことはしないよ~」


 あ、そうか。PKされるなんてそんなこと考えてなかったけど、言われてみればありうるかも。でもシステム上PKがないから問題はない、と。よかった。


「分かった。わたしはその条件で良いよ。カンは? 何か他に問題ある?」


 カンに目を向けると、彼は黙って首を横に振った。


「おっけー。じゃ、決まりだね! ボクはドッポ。よろしくね」


 細い目をさらに細めて嬉しそうに笑うと、ドッポは色白でふっくらした手を差し出した。その手を握って、わたしも答える。


「わたしはリン。見ての通り初心者だけど……遺跡に行ってみたかったし、頑張るね! よろしく!」


「よろしく。それじゃあさっそくソリドゥス南の遺跡に出発しよう! ついてきて!」


 元気よく言うドッポに続いて、わたし達はソリドゥスの街を出た。


 行きたいなって思ってた場所に行けて、しかも遺跡に詳しい人が普段行けない場所に案内してくれるなんて、すっごくラッキーだ。


 いきなりドタキャンされてどうしようかと思ってたけど、ドッポもいい人そうだし、これはこれで楽しくなりそう。遺跡探検、頑張ろうっと。

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