第57話 ユキの実力
「では、今日の訓練を始める。」
今日の訓練は弓の訓練のあとの実戦訓練だった。
「では、一番隊、撃て」
一番前の列にいた兵達は弓を構え、一斉に撃ち始める。兵達が撃った矢は的の真ん中に刺さることもあれば、はたまた的を外れ、どこかへ飛んでいったりもした。
「終了、次だ」
終了の合図と共に一番前にいた兵達は弓をしまい、その後ろの列と瞬時に交代する。
「二番隊、撃て」
その調子で俺は最後の五番隊の番がまわってきた。
「五番隊、撃て」
俺は渡された弓に魔力を巡らせスピードをあげる。
「す、凄え」
俺は矢を的確に真ん中に命中させていく。そしてそれを見た五番隊の兵達は目を大きく見開いて手も止まっていた。
「終了だ。 」
弓に巡らせていた魔力を解くと、弓を横のほうにかけておく。
「お前凄いなぁ、凄い奴だとは思ってたが」
そう言って話しかけてきたのは三番隊の部隊長を勤めるナル先輩だった。この部隊の構成は一番隊から五番隊まであり、兵の優秀さの度合により部隊への配分が決まる。
「ありがとうございます。」
「次は模擬戦だ。お互い頑張ろうな」
「はい、」
その時、
「お父さん、次は何するの」
「模擬戦だ。ユキはそっ」
「私もやりたい。」
「え、それは」
「いいじゃないか、いいじゃないか。俺が相手してやる」
そう言ってナル先輩が笑顔を浮かべる。
「でも、迷惑では」
「そんなことないぞ、それにそんな弱く見えるか」
「いや、それはそうですが、、、」
「そろそろ始めるぞお、全員タッグを組め」
全員が近くにいた相手とタッグを組み始めるのに対し俺とは誰ともタッグを組んでくれないので仕方なく隊長とタッグを組むことになった。そしてユキとナル先輩もタッグを組んだ。
「では、始め」
俺はユキの試合が気になるので、隊長を即効で気絶させるとユキとナル先輩の試合を見に行った。その時まわりで試合をしていた兵達が驚愕の表情を浮かべ手が止まっていた。
「やぁぁ、」
「はぁ」
俺が二人の試合をしている所に来ると、丁度今始まった所だった。
「あ、ちょっと待って」
「えっ、、、あ、ウィル君か。試合はどうしたんだい」
「え、終わらせてきたんですけど」
「え、もう」
「はい」
「そ、そうか。まあ、改めてユキちゃん行くぞ」
「うん、」
「始め、」
ナル先輩の合図で始まった試合だが、試合は終始ユキが圧倒して終わった。
「やぁぁ」
ユキは狼の魔物だけあって爪が鋭い。弱く放たれたナル先輩の斬撃をギリギリで躱すと先輩の背後にまわり爪を振りかざす。
グシャァ
爪で引っ掻かれた傷はくっきりと体に刻まれる。
「ぐ、」
今度は加減も忘れて剣をユキに向けて斬りつける。ユキも瞳が紅く染まりスピードをあげる。ちなみに言うが、ユキは戦闘モードでは眼が紅く染まり髪も紅く染まる。
「やぁ、」
ユキが爪を振りかざした瞬間、
「そこまでだ」
俺は先輩の剣を叩き折り、ユキは体を抱き止めた。
「ユキ、本気になってどうするんだ。先輩も、こんな小さな子相手に熱くなりすぎですよ」
「ごめんなさーい」
「すまない」
「さ、そろそろいいでしょう。隊長のところに行きましょう」
俺は二人を連れて、さっき気絶させた隊長のところへ歩いて行った。




