第12話 謎の鞭使い
僕はミアと合流した後、他の選手の観戦をしていた。
「ん、あいつは」
「え、どれ」
舞台を見ると廊下でぶつかった男が舞台に登っていく途中だった。男と相手の選手が舞台に立って、審判が合図をだすと男は手から鞭のような物を取り出す。そして相手の選手に向けて振りかぶるが、相手の選手は鞭を避けて剣を斬りつけようとする。しかし、
「ふ、」
鞭は直線に伸びていたが急に直角に曲がると避けた選手の背中を打つ。すると相手の選手の背中は鞭の当たった部分が黒く焼け焦げ煙を上げる。
「はっ」
男がまた鞭を打つと今度は当たった所が凍り付いていく。そしてそのまま打ち続けられた相手の選手は体じゅうが焼けたり凍ったりと変に怪我をして運ばれていった。
「あの男、おかしいな」
「え、いまの運ばれた人、、」
「いや、鞭使いだ」
「え、なんで」
「あいつの鞭の動き方は異常だ。まるで触手」
その時僕は凄く嫌な気持ちになった。僕達はその後、試合が終わると観客席を出る。その時鞭使いの男が僕を見て笑った。
「ねえ、クレイ。昼間の男って知ってる人」
「いや、恐らく知らない」
夕食後、席に座り昼間のことを考えているとミアがそう話しかけてきた。
「恐らく、、、」
「昔、あんな奴を見たことがある。魔物だったが人のように知性を持っていてなおかつ魔法に関しては人よりも優れていた」
「え、そんなのがいたの」
「ああ、出来ればそいつじゃなければ良いんだが」
僕は結局遅くまで考えたが結果は分からずその日はもう寝ることにした。
次の日学校に来た僕達は昨日と同じ控え室に入る。すると、
「クレイ選手。試合が始まります」
そう知らせに来たので、
「分かりました」
そう言って舞台にむかった。
「お、お願いします」
今日は昨日と違って凄く緊張している女の子だった。
「始め」
審判がそう言うと女の子は短剣を二本構え斬りかかってくる。僕は短剣を一本は躱し、もう1本は魔力で縫い付けた。
「く、」
試合が始まると真剣になるタイプの子だったようで縫い付けられた短剣はそのまま捨て置き残っていた短剣に魔力を纏わせ刀身を少し長くする。
「やっ」
長くなった短剣、いやもう剣と言っていいそれを女の子は器用に操り僕に斬りかかる。僕はそこで、
「濃霧」
今の魔法では無い魔法であたりを隠す。すると思った通り女の子は途端に不安になったのだろう。座り込んでしまう。僕は女の子に近付くと、
「はい、君の負けだよ」
「私の負けですね」
女の子がそう言うと僕は魔法を解く。すると、
「勝者。クレイ選手」
審判がそう宣言すると僕は舞台を飛び降りそのまま控え室に戻った。そしてそのまま観客席に向かった。
「お、ミアだ」
今日はそれほど緊張してないのかゆったりと歩くミア。
「始め」
審判が合図するとミアは昨日より多くの矢を一本一本操りながら相手を瞬殺した。この勝負には流石の僕も相手が可哀想になる。
「勝者。ミア選手」
審判が宣言するとミアは急いで控え室に戻るとすぐに僕の所に来た。
「ねえ凄かった」
「ああ、ミアって魔法はそこまで使ったこと無かったんだよな」
「ええ」
色々とミアの才能には驚かされっぱなしだと思った。そして今日の試合が終わると僕達は家に帰った。ちなみに今日も鞭使いの試合はしっかりと観戦した。