一萬~番外編①~
僕の名前は菅崎 雀。
桐竜高等学校に入学してから一ヶ月が経ったのに、僕の親友である橋本 竜伍は何の部活にも入ることはなく、携帯ゲームにのめり込んでいた。
そんな彼を見て、このままでは廃人になってしまうと予感した僕は、竜伍を将棋部に誘ったのだ。 ――決して、親友である彼と一緒に将棋を指せれば楽しいだろうなぁ。と思ったわけではない。
彼を将棋部に誘ってみると、面倒くさそうにはしていたが、内心満更ではない様子だったので、僕は竜伍の将棋育成計画を綿密に練っていた――。
それなのに。
部活動紹介で前代未聞の『麻雀で負けたら脱ぐ』宣言をした眼鏡をかけた女性の先輩のせいで、竜伍は麻雀同好会の部室前に来ていたのだ。
将棋のことをあんなに熱く語っていたのに…!! このスケベ!
僕が怒っていることを知らない竜伍は、僕が麻雀同好会に来た理由が裸を見たいからなんだと勘違いしていたのも腹立たしい。
だから僕は決意したのだ。
竜伍が勝てないように邪魔してやろうって。
……けど、僕が邪魔する必要もなく、竜伍はあ○たのジョーを想起させるほど、椅子に座りながらガックリと項垂れていた。
きっと配牌(最初の13枚)が悪かったのだろう。
竜伍の負けが確定したことで、僕が麻雀をする必要はなくなった――はずなんだけど…。
明らかに初心者の僕たちを舐めきっている眼鏡の先輩に、一泡吹かせたいという気持ちが芽生えてしまう。
だって、考えてみて欲しい。
本来、麻雀は各自持ち点が25000点持っており、平均4000点を削り合うのを4~8回ほどくり返して順位が決まり勝敗がつくのだ。 ――つまり何が言いたいかというと、麻雀は1、2回負けるのは当然で、最後に多くの点数を奪取した人が勝者になる。
それなのに、右の席に座っている眼鏡の先輩は、一回でも負ければ敗北という特別ルールに、なおかつ僕と竜伍、そして対面に座っている庭白さん(肌が白くて綺麗な女性)相手を三人に勝負を挑むというのだ。
……舐められてる。
こんなにハンデをつけられて負けでもしたら、一生恥をかく。
そんなのは嫌だ。
――僕は、菅崎 雀。
将棋部の一員だが、全身全霊をもって麻雀の勝負に挑む。




