六萬~始まりの終わりは、新たなるはじまり⑨~
「ほう…。 やるな、竜伍――だがこっちも負けてないぞ」
そう言った先輩は、山から取った牌と自身の牌三つを組み合わせる――まさか…!?
「カン!」
順先輩はこれで、計4回のカンを行った――つまり、役満の『四槓子』である条件を満たしたのだった。
俺はテンパイ、順先輩は単騎待ち(手牌が一つのみの状態)――互いに必要な牌は、残り一つのみ…!
どちらが先にツモれるか――まるで対峙している剣士が、居合抜きで相手より早く抜かなければ、という緊張感がヒシヒシと伝わってくる。
俺は震える手をなんとか動かして、山から牌を取る――だが、待ち牌である「六萬」ではなかった。
「くっ…!」
思い通りにいかなくて落胆した俺は、机に肘をついて額を押さえながらため息を吐く――次は順先輩の番だ。 もしツモられたら、俺の負けは確定だ…!
順先輩は落ち着いた様で、ゆっくりと山から牌を取っていく――俺は、嗚咽が漏れそうになるのを必死で飲み込みながら、ただ見ることしかできない。
「――ふむ。 残念だ」
順先輩は面を伏せて悔しそうに唇を歪めながら、取った牌をそのまま河へと捨てた――あっぶねー!! なんとか命拾いした…!
死刑を宣告された囚人はきっとこんな思いをしているのだろう。 そんなことを考えながら、助かったことに安堵する。
だが、まだ安心するには早い――勝たなければ意味がない…!
俺は深呼吸した後、キッと鋭い視線を山へと向ける。 篝火を強く焚き、轟々と燃え盛らせながら牌を掴む――。
そして手にした牌は――「六萬」だった。
「ツモ!!」
俺は手にした「六萬」を卓上へと叩きつけ、自身の手牌を次々と倒していく――すると、それを見た順先輩の顔はみるみる豹変していき、歯が割れるほどキツく奥歯を噛みしめていた。
「竜伍、貴様……! 私を馬鹿にしているのか…!?」
順先輩の拳が卓上へと叩きつけられ、ドゴッという音が辺りに響き渡る――そして順先輩は、俺の手牌を指差してこう言った――。
「たったの『1300点』の安手じゃないか…!?」




