六萬~始まりの終わりは、新たなるはじまり⑥~
東二局目3本場――未だに親が継続している順先輩……彼女に対抗するにはどうすればいい……? 一撃必殺である国士無双は無効化されて、アガることすらできない。
……国士無双を狙っていることがバレているのならば、それを逆に有効活用することはできないだろうか? 例えば直前までは『国士無双』だが、途中から他の役に切り替えるとか――。
そう思案したところでハッと気付いた――今一度、国士無双に必要である牌を見つめ直す。 やっぱり…! 国士無双は「1」と「9」の用いた牌を使う――ならば、アレができるんじゃないか…?
対抗策が思いついた俺は、配牌時に『国士無双』のテンパイしていた形を「崩して」いった――。
「――なに…? 「東」を捨てただと?」
国士無双でアガるには、方角の書かれた「東」などの牌は必要不可欠――それを俺は、次々と河に捨てていく。
「……勝ちを諦めたか?」
愚行に走っていると「勘違い」してる順先輩は、俺の一貫性のない捨牌にポンやチーを仕掛けることができない――そして彼女が油断して河に捨てた「白」を俺は見逃さない。
「ポン!」
「な、なに…!? ポンだと?」
普段、飄々としている順先輩が目を丸くして俺をじっと見つめる――それもそのはず。 「ポン」を使用すれば国士無双でアガれない。 ましてや、「白」を三つも揃える必要性がないからだ。
「貴様…! なにを企んでいる…!?」
動揺を隠しきれない順先輩は、睫毛をぴくぴくさせながら俺を睨んでくる――そんな彼女が次に捨てた牌は「三萬」。
「チー!」
2人打ちならば、片方が捨てた牌を利用できる「チー」を使用して、俺は卓の右端に「一萬」「二萬」「三萬」を並べる――。
そしてこの時に、順先輩は俺の狙いが分かったらしく、歯が割れるほどキツく奥歯を噛みしめていた――。
「そうか…! 貴様の狙いは…!」
「――もう遅いです」
俺はそう告げて、山から取った牌をそのまま麻雀卓の上に呈示させて、手牌を次々と倒していく――。
「ツモ。 混全帯么九、三元牌、ドラ1で――3900点」
混全帯么九――別名、チャンタ。 完成形は、「1」「9」「字牌」の順子と雀頭を組み合わせたものである。
俺は見事に「1」と「9」を利用する『国士無双』から『混全帯么九』へと張り替えたのである。 そして2人の得点は――。
順先輩――25400点。 橋本竜伍――24600点。
2人の差は――たったの『800点』のみだった。




