六萬~始まりの終わりは、新たなるはじまり⑤~
東二局目――順先輩の親番である。 俺は一発逆転を狙うために、またもや国士無双を狙い続ける……それが地獄を見るとは知らずに。
不本意ながらも『女喰らい(ガールイーター)』という異名を持つ俺は、持ち前の特性を活かして配牌時に一向聴やテンパイはしているのだが……アガることができない。
順先輩はことごとく俺の捨牌に「ポン」や「チー」、「カン」(同じ牌を4つ揃えること)などを利用して運の流れを変えてくる。 いつもならとっくにアガれているのに、まだ一回もアガれていない…!
「ロン。 自風牌で、1500点だ」
ぐ…! 一翻だけの安手だが、親のボーナスで1.5倍…そして親は継続される――順先輩は、どうやら最短最速でアガリ続けるつもりか…?
そして1500点奪われた俺は、しぶしぶもう片方の靴下を脱いで先輩に渡す――受け取った先輩は、プロ野球選手の内野手のごとく華麗に送球していた。 ひどい。
東二局目2本場――順先輩は親でアガったので引き続き親番…そしてまたアガられたら連荘として「300点」が追加される。 このままではヤバい……、順先輩の流れを断ち切らないと…!
「ツモ。 タンヤオ、1500点――プラス300点で計1800点だ」
意気込んで色々な工夫をしてみるが、徒労に終わり、またしても順先輩に先を越されてしまう――どうしてだ!? なぜ、こんなにポンやチーをされる…?
「まだ理解できてないようだな。 お前は、戦況を一気にひっくり返すほどの恐ろしい力を持っている――だが、そうするには『国士無双』に便るしかない。 狙いが国士無双だけだと、分かっているならば対策は簡単だ」
捨牌に目星をつけてポンやチーをするのみ――そして、相手の待ち牌が分かっているので、放銃(相手にロンされること)することもない……。
無敵だと思っていた国士無双に、こんな弱点があったことに気づかされた俺は沈んだ表情を浮かべる――なら、俺はどうすればいいんだ……?
自身の必殺技を封じられて、落ち込んでしまう――そして順先輩は、そんな俺に容赦なく制服の脱衣を求めてくる…。
「お前は今、ー4300点されている。 早く、制服を脱げ」
……制服も千点棒扱いだったのを思い出し、俺はボタンに手を掛ける――その瞬間、ハッと思い出した。
そうだった…俺は、今日体育の授業とかないから、オカンが買ってきたダサいTシャツ(なぜか手羽先がプリントされてるやつ)を着ているんだった……!
こんなの順先輩に見られたくない……! そう思った俺は制服の上着の代わりに、そのダサTだけを勢いよく脱いで、ボール状に丸めて窓から遠投した――。
「ほう。 自ら服を脱いで投げ捨てるとは――感服したぞ」
俺の真意を知らない順先輩は勘違いしくれた――そして彼女の背後にある窓から、手羽先が空を舞っているというカオスな景色だったが、忘れるとしよう。




