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六萬~始まりの終わりは、新たなるはじまり~

 10月――俺が桐竜高等学校に入学してから半年が経過した。


「しっかし、人生ってのは分からねぇもんだな…。 ずっとゲーム三昧だった俺が、高校に入ったら麻雀をすることになるなんて――」


 それもこれも、部活動紹介の時に『国枝 順』という眼鏡先輩に出会ったのが事の始まりだった。 彼女に麻雀で勝てば『裸』が見れるという不純な動機だったが、今となっては感謝している――そんな先輩に放課後、校舎裏で呼び出しをされたのだが、当の本人はまだ来ていない。


「うぅ…さみぃー。 先輩、何の用なんだ…?」


 凍える手をさすりながら、順先輩が来るのを待つ。 約束の時間はとっくに過ぎていた――。


「…もしかして、告白とか?」


 呼び出された場所が場所だけに、ついそんな憶測をしてしまう――相手は麻雀一筋の順先輩だというのに……、正直彼女が告白するシーンなど想像つかない。


「そんなはずがないよな――」


「何がないって?」


「うわっ!?」


 俺が独り言をしていると、突如として背後に現れた順先輩。 首を傾げながら、俺がブツブツ喋っていた内容を聞きだそうとしてくる。


「な、なんでもないですよ…! ところで、何でこんなところに呼び出ししたんですか?」


 今日は部活動が休みということで、麻雀部員は解散という形になっていたのだが、俺だけ先輩に呼ばれたのである。


「あー、そのなんだ…。 調子はどうだ?」


 一瞬、羞恥に顔を染めてから取り繕うように咳払いをした順先輩は、俺の体調について問い掛けてきた。 俺は先輩の意図に気付き、正直の気持ちを伝える――。


「そう、でうね…。 正直、不安です――この半年、先輩方にみっちりしごかれましたけど、やっぱり『半年』っていう短期間だけでは、敵わないんじゃないか…って不安に押しつぶされそうです」


 俺は緊張と不安で震えている拳をぎゅっと握りしめる――そう、明日には『麻雀甲子園』という4人1組のチーム戦で闘う大会がある。


 そのチームに順先輩はいない――。


「そんな不安そうな顔をするな――お前には、頼もしい仲間がいるだろう?」


 順先輩の言葉にハッとした俺は、頼りなるチームメイトを思い出す――。


菅崎かんざき すずめ』――「彼女」は、俺の幼馴染で大切な親友。 得意な戦法は『七対子チートイツ』(同じ牌を2枚ずつ7組揃えることでアガれる役)。 それを利用して、同じ牌を4枚揃えて『カン』したりなど点数の上乗せも得意とする。


『庭白 マリア』――彼女は天使の導きとやらで、「エンジェルナンバー」という占いのようなものを酷使してシチュエーション毎に最善のアガリをすることができる頼りになる先輩。


 そして順先輩の代わりに出場するのは『☆ゼロ★』…ではなく『鳥海とりうみ みお』――俺が連れてきた桐竜高等学校麻雀部の5人目で、実力は痛いほど知っている。 彼女は「ゼロサムゲーム」という他人の運を強制的にゼロ和にしてしまうという特性を持っている……敵では恐ろしかったが、味方になればこれほど頼もしい存在はいない。


 ――でも。


「明日の大会は、『チーム戦』です――持ち点が『10万点』で一局ごとに削られた分は引き継がれる……俺が足を引っ張れば、皆が敗けてしまう」


 歯の根がカチカチ鳴って、不安の気持ちが勝手に絞り出されていく――そんな情けない俺を見かねた順先輩は、俺の手を引っ張って何処かへと連れ出そうとする。


「ついてこい――その腐った根性、叩き直してやる」


 寒い冬場とは真反対に、篝火を強く焚き、轟々と怒りを燃え盛らせる先輩の後に、俺は必死でついていく――。

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