一萬~刺激を追い求めて④~
「なんだ、この人だかりは…?」
俺が麻雀同好会の部室(部活動紹介のプリントに記されていた)に訪れると、そこでは沢山の人が群がっており騒然としていた。
――やはり男性が多い。
これは男の宿命というか、本能に近いようなものなので仕方ないことなのだろう。 実際、俺も足を運んでいるわけだし、彼らを責めるべきではない。
俺はそう思って同志達に近づくと、どうやら二列に並んでいるらしく、順番で麻雀の勝負を行っているらしい。 どうやら俺が最後尾のようだ。
「ポン!」「チートイツ! 7000オール」
女性の甲高い声が部室の中から聴こえてくる。 多分、部室内では鼻息を荒くしている男達が先程の女性と勝負しているのだろう。
――やべえ、ポン、とかチート…? ってなんだ。 俺、麻雀のルール知らねぇ…!
このままではあの美人なメガネ先輩と勝負することすら出来ず、一蹴されて部室から追い出される…! どうすれば…!?
「ハァ…、やっぱり竜伍もここに来ていたんだね。」
頭抱えて悩んでいると、隣から聞いたことのある声が俺の鼓膜を振動させる。
「雀…! やっぱり、お前も男だったんだな!」
男とは思えない可愛らしい顔しているから、実はゲイなんじゃないのか?と心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。 なぜなら、ここにいるってことが何よりも証拠だからだ。
「な…! ぼ、僕はもちろん男だ! か、勘違いしないでよね!」
雀は顔を真っ赤にしながら腕を組んで威圧していた。 なんか変なツンデレ要素も加わった気がしたんだが、俺は気にしない。
今の俺の感情は、息子が初めてエロ本を読んでいるところを目撃したオカンと同じ心情だろう。 ――大きくなったな…。
「な、なにしているんだ!?」
人の成長を目の当たりにした俺は、しみじみとした思いで雀の頭を撫でていると、ネコの気分を害したように睨まられてしまった。
「とっ。 すまん、悪ノリしすぎた。 許してくれ。」
俺は両手をパッと挙げて、敵意がないことを示す。
「…ふん! 次からは、僕に許可を取ってからするように!」
あれ? こいつ、実はまんざらでもなかったのか…? まあいいや。
「ところで雀。 お前、麻雀のルール知ってるか?」
結構、博識なところもあるし、何でもは知らないけど知っていることだけ教えてくれる羽○さんみたいに教えてもらおうと思っていたのだが、
「…………知らない」
長い沈黙のあと絞り出すような小さい声に、俺はそれ以上質問することをやめた。 やはり雀でも知らないってことは、麻雀の認知度は低いのだろうか。
そんなことを考えていると、長蛇の列がいつの間にか嘘のように短くなっていた。
「くそっ! なんだよ、あの化け物みてぇな強さ…! あんなのに勝てるわけねぇだろ…!!」
「俺たちコンビが、こんな一方的にやられるなんて…!」
明らかに麻雀経験者と思われる人物が部室の扉を荒々しく開けて、とぼとぼと帰路についていた。 5分感覚で、次々と人が退場していく。 ――へぇ、麻雀って案外早く勝負が決まるゲームなのか。
ついに長蛇の列がなくなり、最後尾にいた俺たちの出番がやってきた。




