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一萬~刺激を追い求めて③~

 体育館では既に全校生徒の8割が並んでおり、みんな部活について友達と会話していた。 中学から続けていた部活と同じものを選ぶ者、友達と同じ部活を選ぶ者、面白い先輩がいて興味本位で選ぶ者、…新しく部活を作ろうとする者。


 意気揚々と話している彼らは、実に楽しそうに喋っている。 けど俺は違う。


 特に得意なものなんてないし、運動だって苦手だ。 手先は不器用だし、自分におあつらえ向きの部活なんてありゃしない。 そう考えるだけで憂鬱だ。


「はぁ…、早く家帰ってゲームしてぇ」


 そんな俺の希望を打ち砕くように、先輩方の部活動紹介が始まる。



『それでは、これから部活動紹介を始めます。 まずはじめに、野球部からお願いします』


 放送委員の生徒らしい人物がアナウンスで、野球部の方々に部活の紹介を促す。 すると、壇上に強面の男性が立ち、周りには15人ほどの部員が一列に並んでいた。


 強面の男性がマイクを使って喋り始める。


「えー、野球部の主将を任されている田辺といいます。 我々野球部は、去年惜しくも県大会準優勝により全国大会に出場することはできませんでした。 ――とても悔しい思いをしました。 長かった髪は坊主にされ、彼女はできず、血反吐を吐くぐらい練習をしたのに、全国大会に行けなかった…」


 田辺という先輩は、悲しそうな面持ちで当時の悔しさを想起させるような喋りをしていた。 顔を俯かせて、泣いているのかなかなか喋らない。


 そんな彼を見ている全校生徒は、どんな反応をすればいいのか困惑していると、壇上に立っていた先輩はスっとポケットから『何か』を取り出した。


「これは――県大会が行われた会場の『土』です」


 それってただの土じゃねえか!


「我々は甲子園に行けなかった悔しさで、怒り狂って、この土をかき集めました。 おかげでポケットがパンパンです。」


 捨てろよ!


「我々は誓いました! 次は、こんなゴミではなく、甲子園の土を持ち帰ることを!!」


 趣旨変わってんじゃねぇか! と心の中で思わず突っ込んでしまった。 そんな俺と同じ思いだったのか周りの生徒達もクスクスと笑っていた。


 ――なるほど。 部活動紹介であえて笑いを誘うことで、入部者を集める手もあるのか…。 まあでも、坊主にはなりたくないから入部はしたくない。


 部活動紹介は堅苦しいものだけだと思い込んでいたが、野球部の先輩方のおかげで他の部活動紹介も興味津々になった俺は、聞く耳を持って舞台に釘付けになった。


 卓球部は、舞台上に卓球台を持ち運んできて、部員二人が高速ラリーを続けているなか、もう一人の別の部員が台の下をリンボーの要領でくぐり抜けるというコントをしていた。


 サッカー部は、チャラ男のような先輩達が多くて日焼けしている部員ばかりだった。 なんでも、週末は電車に乗って海まで行き、ビーチサッカーをするらしい。 砂場でやるサッカーは、足腰だけではなく体幹も鍛えられるそうだ。 そしてなにより――ビキニのチャンネー達と戯れることができるらしい…ゴクリ。


 バスケットボール部は、有名な漫画スラムダ○クで一番人気のあるシーンを完全再現していた。 正直、クオリティが凄くてとても感動した――思わずバスケがしたいです! って叫びそうになるほどだった。


 次々と部活動紹介が進んでいき、終わりが近づいてくるなか、放送委員のアナウンスで聞きなれない部活を耳にする。


『それでは最後に、麻雀同好会の方々、紹介をお願いします』


「マージャン?」


 マージャンってあの、金を賭ける大人の遊びのやつだろうか? それを部活動と認定してもいいのか…?


 他の生徒も『麻雀』という聞きなれない単語にザワザワと波風を立てていた。


 その雰囲気を大して気にする様子もなく、麻雀同好会の部長らしき女性が壇上に立ち、マイクを手にして大きく息を吸っていた。



『私に麻雀で勝てたら服を脱ぐ!!』



 世界が止まった。


 まさか奴はスタ○ド使いなのか、と思い体育館に設置されている時計を見たが、秒針はカチコチと懸命に動いていた。


 それではこの静けさは一体なんだ…? 心当たりがあるとすれば、壇上に立っている女性が麻雀の勝負で負けたら脱衣するという宣言を聞いたからだと思ったが、さすがにそれはないだろう。


 どこの現実世界に、麻雀勝負でストリップする女子高生がいるというのだ。 まだ、俺がスタンド使いだったという方が信憑性が高い。 ――ただしライトのほうだがなぁ!


 …落ち着け、俺。 あまりにもファンタジーの出来事に直面したせいで、テンションがおかしくなって正しい判断ができなくなっている。


 つまりあれだ。 これは放課後、麻雀同好会の部室に赴いて、話を詳しく聞くべきではないだろうか。


 ――うん、きっとそれが正しい判断だ。 決して、DTな俺が女性の裸体見たさに勝負しに行くわけではない、決して!



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