表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/63

三萬~新生雀士現る⑧~

「――ねぇ、アンタ『ゼロサムゲーム』って知ってる?」


「…? えっと…」


 確か、ゲームの参加者がそれぞれに選択する行動が何であれ、得失点の合計がゼロになる…っていうゲーム理論だっけ?


「それと同じで、私たち人間にある『運』の総量も決まっていて、『幸運』と『不幸』が均等になるよう運命づけられている――」


 つまり、何が言いたいんだ…?


 俺は『☆ゼロ★』の言葉の意味が理解できず、首を傾げていると――ある異変が起こっていることに気付いた。


「えっ、コレは……!?」


 スマフォの画面を見てみると、東風戦の第一局の2本場(俺が『親』でアガった為、連荘している)で『☆ゼロ★』が既にアガっていた。


 ――『国士無双』で。


「はぁ…!? そんな、バカな!?」


 俺が先程、アガった手牌と同じだった――しかも、ちょっと待て。 この東風戦の第一局の2本場…まだ、俺の手番が2回周ってきてない。


 つまり、『☆ゼロ★』は一巡で『国士無双』を完成させたってことだから――『地和』もついてくる…ってことは、W役満!?


 スマフォの画面に表記されている『☆ゼロ★』が獲得した点数は、『64000』点だった。 しかも、俺が『親』番の時にアガられたので、64000点の内訳は、親が32000点、子が16000点払わなければならない――。


 現在の順位は、『☆ゼロ★』73000点、『ファイブドラゴン』41000点、『昨日、離婚しました』ー7000点、『明日から本気出す!』ー7000点。


「アンタの『国士無双』っていう『幸運』は、アタシの『国士無双』で『不幸』になり、『ゼロ』となった――アンタの負けよ」


 麻雀の対戦は、誰かの持ち点が『0』点以下になれば強制的に試合終了となる。 俺は、たった二局で『☆ゼロ★』に負けたのだった…。


「こんなの、納得できるかよ!? ゼロサムゲーム? はぁ!? その理論だったら、お前が勝利するのはおかしいだろ!!」


 そうだ、ゼロサムゲームは『参加者』全員の得失点が『0』になるという理論なのだ――だったら、この麻雀勝負は全員が引き分けにならないと、その理論は正しくはない…!


「はっ…、言ったでしょ? 私は、『交通事故』に遭って『全てを失った』って――つまり、私は常に『不幸』という『マイナス』からスタートする……ここまで言えば、アンタみたいな馬鹿でも分かるでしょ?」


 つまり…『☆ゼロ★』だけは、常に『幸運』だけを得ることができるってことか…?


「そんなの……」


「そう、私に勝てる人は誰一人いないのよ――残念だったわね、『ファイブドラゴン』さん」


 そう言った彼女は、負傷した左足を松葉杖で支えながら屋上を去ろうとする。 そして、屋上の扉に手を掛けた後、くるりと振り返り口を開く。


「そうそう、私が勝ったらなんでも言うことを聞く…だったわね。 なら、今後――『私の前に現れないで』」


 彼女は屋上の風でなびく髪の毛を払いながら、冷たい声音でそう言い残して、バタンと扉を閉めて屋上を後にした――。


「……くそっ!」


 俺は、無力で弱い自分に腹が立って、地面を拳で殴る――胸の苦しみと同じくらい、拳がジンジンとしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ