三萬~新生雀士現る⑦~
「はっ…! 私に麻雀で勝てるつもり…? 昨日の勝負で実力差が分からなかったの?」
俺の脳裏には、昨日の『0点』にされた苦々しい記憶が呼び覚めされる――だけど、俺は拳を強く握って『☆ゼロ★』を睨みつける。
「今回も、昨日と同じ結果になると思うなよ!」
「はっ…いい度胸ね。 いいわ、叩きのめしてあげるわ!」
勝負成立――俺たちは、今起動している麻雀ゲームのアプリを一度落として、再起動させる。 その次に、もう一度「近くのプレイヤーを探す」ボタンを押して、マッチングを開始する。
『ファイブドラゴン』が入室しました。
『☆ゼロ★』が入室しました。
スマフォの画面に俺たちプレイヤー名が表記されると、互いの視線が交差して、火花を散らしながら睨み合う。
「私に挑んだことを後悔させてやる…!」
ニヤリと白い歯を覗かせながら笑う彼女――それを見た俺は、不覚にも胸がドキっとしてしまう……いかん、いかん! アイツは敵だ…!
彼女の美貌に目を奪われて戦意を喪失しないように、俺は自身のスマフォ画面に集中する――すると、麻雀の東風戦が始まり『親』がランダムに選ばれる。
今回の親は――『ファイブドラゴン』が選ばれていた。
よし、ここで一気に差を広げてやる! そう思った俺は、配牌された自身の手牌を確認すると――思わずこぼれそうになる笑いを噛み殺そうと唇を噛む。
(きた、きたきた…!)
手牌に「一」や「九」の数牌、そして「東」や「南」などの方角が書かれた牌がいくつもある――これは『国士無双』の一歩手前の状態だった。
(自分が親の状態で、『国士無双』でアガれたら、相当点差が開くはず…!)
それに一巡でアガれる『天和』や『地和』でアガれたら…! そう期待を膨らませながら、山から牌を取るが「八萬」という文字だった。
違う…! 俺が待っているのは、それじゃない!
ガックリと肩を落としながら、「八萬」を河に捨てる。 それから、次々と順番が回り3巡目――ようやく「發」が手に入り、『国士無双』が完成する。
「ツモ! 『国士無双』!!」
麻雀ゲームなので言う必要はないが、思わずテンションが上がってしまった俺は笑みを浮かべながら宣告していた。
俺はどうだ、と言わんばかりに『☆ゼロ★』にドヤ顔をする――けど、彼女は焦った様子もなく飄々としていた。
「へー…、ただの無能ではなかったわけね。 これなら退屈せずに済みそうだわ」
「はぁ…?」
こいつは数字が読めないのだろうか…? 今現在、スマフォ画面に表示されている各々の持ち点数は――『ファイブドラゴン』73000点、『☆ゼロ★』9000点、『昨日、離婚しました』9000点、『明日から本気出す!』9000点。
役満+親でアガった俺は『48000』点獲得し、2位との差は『64000』点で、ぶっちぎりの一位である。 誰がどう見ても俺の勝利が目に見えている。
それなのに、『☆ゼロ★』のこの余裕の表情――何か秘策でもあるのか…?




