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三萬~新生雀士現る⑥~

「教室には、何処にもいない…か」


 ってことは他に居るとしたら、職員室や生徒会室とかか…?


 うーん、職員室にはきっと先生たちしかいないから、スマフォで麻雀ゲームをしている可能性は極めて低い気がする…。 てか、『☆ゼロ★』が先生だったら入部させられないから意味ないような…。


 そして生徒会室だが…、先日、怖い思いをしたので個人的に絶対行きたくない。


 どっちから行くか迷っていると、俺はふと気付いた――半径500Mといっても、決して横だけではないことに。


 つまり、『円』ではなく『球体』として考えるべきだった。


「そういえば、まだあそこは探していなかったな…」


 俺が向かった先は――『屋上』だった。


**********


「えーと…アナタが『☆ゼロ★』ですか?」


 屋上へと辿り着いた俺は、ベンチに座ってスマフォの画面を開いている『女性』に質問する――すると彼女は、スマフォの画面から俺へと視線を移し、眉根を寄せて睨んできた。


「はっ…! もしかして、アンタが『ファイブドラゴン』? ダッさ!」


 ……それは名前がダサいって意味だよな? 俺の容姿のことじゃないよな…?


「…何? 麻雀で勝てないからって、力ずくで報復するつもり? 上等よ、そのケンカ買ってやるわよ!」


 そう言った彼女は、ベンチの裏にかけてあった白い棒――否、松葉杖を取り出して、先端をこちらへと向けていた。 敵意も含めて。


 よく見たら彼女の右足首には、包帯が巻かれていた――。


「…いや、俺はケンカしにきたわけじゃない――アンタ、麻雀強えだろ? だから、麻雀部に入部してくれないか?」


 俺はハンズアップして敵意がないことを示しながら、目的を包み隠さず露呈する。


「はっ…! 私が麻雀部に…? なんで、そんなことやらないといけないのよ?」


「えっ…だって、麻雀が好きだからこのゲームをやっているんじゃないのか?」


 俺がそう告げると、『☆ゼロ★』は豆鉄砲を喰らった鳩のように、目を丸くしながらこっちを見ていた。


「はっ…私が麻雀を好き? そんなわけないでしょ? こんな運ゲーでクソゲーなんて」


 その言葉を聞いた瞬間、視界が赤く染まったような気すらした。


「じゃあ、なんでお前は麻雀やってんだよ!?」


 俺が退屈で仕方なかった日々を変えてくれた『麻雀』を、つまらないと言いながらプレイする彼女の心理が分からない俺は声を荒げる。


「――『勝てる』からよ」


「…はっ?」


 彼女から返ってきた言葉の意味が分からない俺は、口を開きながら呆ける。


「…私はケガをする前は、スポーツ万能でおまけに美人で、敵なしの完璧超人だった――交通事故に遭うまでは。 そこから、私の人生は一気に転落。 イージーモードが一気にハードモードになった感じ? 今だって階段登るなんて一苦労するはめよ」


 淡々と話す彼女だが、会話の内容は悲惨で想像するだけで沈んだ気持ちになった俺は、彼女の顔が見れなくて俯くしかなかった。


「全てを失った私だけど、唯一残っているものがあった――それは『運』よ。 運だけが、私に味方してくれる…麻雀は私に優越感を与えてくれる道具でしかないのよ」


 俺はどうすればいいか分からなかった。 彼女の麻雀をバカにする言動に腹が立っているはずなのに、それ以上に彼女を救いたいと想っている自分がいた――。


「……しろ」


「はっ、なんて?」


「――俺と麻雀の勝負をしろ…! 俺が勝ったら麻雀部に入部してくれ…! 負けたら、なんでも聞いてやる…!」


 俺は歯が割れるほどキツく奥歯を噛みしめながら、決闘を申し込む――。



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