三萬~新生雀士現る②~
「おぉ…、すげぇ偶然だな」
俺が「近くのプレイヤーを検索する」モードを選んでしまったと同時に、半径500M以内(つまりこの学校内の誰か)にいた人物も同じことをしていたのだ。
「てか、俺が第三者として乱入した場合もあるな…」
元々この学校内で、麻雀のアプリで対戦をしようとしていた人物がマッチングしている最中に俺が割り込んでしまった――とか考えていたが、それは杞憂だった。
いくら待てど、4人の内2人――『ファイブドラゴン』と『☆ゼロ★』しか入室していなかった。 ちなみに俺がファイブドラゴンである。
「あ…、対戦が始まった」
この麻雀アプリのゲームでは、「近くのプレイヤー」とマッチングする場合、2人以上プレイヤーが決まっていたら、一定時間が経過したあと、残り足りない人数をCPUとして補い、4人対戦が開始されるのだった――。
「お手並み拝見といきますか…!」
俺は指の骨を鳴らして、ポキポキ、という音を出す――運がいいことに俺から『親』番だった。
「さて、と…」
アガリまで必要な牌は残り3つの状態――今は『親』なので、是が非でも誰よりも早くアガって連荘したいところである。
よし、俺の手牌には『一翻』があるので、積極的にポンやチーを狙っていこうという魂胆である。 俺は「六萬」を捨てる。
すると、『チー』をされる――宣告したのは「☆ゼロ★」だった。
「ゼロってやつ、なかなかやるな…!」
初手で『チー』をするということは、すでに彼も『一翻』を獲得しているからこその戦略。 しかも、先日の生徒会長のインチキとは違い、これはゲーム対戦なのでイカサマの仕様がないのだ。
それから5巡した後、最初にアガったのは――『☆ゼロ★』だった。
「あー、くそ! やられた…!」
俺がアガれるまで必要な牌が後1つという状況で、先に『☆ゼロ★』にしてやられた――しかも、俺が捨てた牌で『ロン』されたから、俺の責任払いかよ!
現在の順位――『☆ゼロ★』28900点、『昨日、離婚しました』25000点、『明日から本気出す!』25000点、『ファイブドラゴン』21100点。
CPUにすら負けて、俺が最下位だった。 ――てか、CPUの名前悲しすぎんだろ…! 製作者の悲しい背景が浮かんできて、泣けてくるわ!
そんな俺の心境を嘲笑うかのように、次々と『☆ゼロ★』だけがアガって点差が離れていく――1度もアガることができず、結果は惨敗。
結果――『☆ゼロ★』50000点、『昨日、離婚しました』25000点、『明日から本気出す』24000点、『ファイブドラゴン』0点。
0点って! この『☆ゼロ★』って奴は、本当にタチが悪い。 俺の捨てる牌にばかり狙いを定めており、ロンされまくりでこの有様である。 …泣いてもいいだろうか。
このやるせない気持ちの鬱憤を晴らそうと考えた俺は、「うがー!」と叫びながら半径500Mにいる奴全員にいちゃもんつけようと教室を出ようとすると――。
「あれ…? 竜伍、そんなに怖い顔してどうしたの?」
用事があると言っていた雀とバッタリ出くわした。 そこで俺は、ふと気が付く。 雀→麻雀部員→用事ある→半径500M以内…全ての点と点が繋がった――。
「『☆ゼロ★』は貴様だったのかー!?」
「えぇ!? 誰それっ!?」
とぼけようとする雀だったが、それに惑わされる俺ではない…! 先程の屈辱を晴らすために、俺は雀にクロスチョップをおみまいする――。




