一萬~刺激を追い求めて②~
地獄の坂道を15分ほど登り続けて、ようやく俺たちは桐竜高等学校の校門へと辿り着いた。
「あー…、しんど。 これが三年間も続くのか…」
毎日登校するのに辛い思いをすると想像だけで辟易してしまう。 しかし、隣にいる雀はまったく疲れを見せず、早く教室に行こうと促していた。
ちょっとは休ませて欲しかったが、確かに校門前でつっ立っているのは他の生徒に邪魔になりそうだし、俺はしぶしぶ雀の後についていく。
「じゃあ、僕はこっちだから。 また後でね!」
1-Bと書かれた札のところで、俺と雀は別れる。 雀は1-Bのクラスで、俺は1-Cのクラスだった。 幼馴染の俺たちは、なにかと隣同士になることが多いのだが、高校生ではクラスが隣同士なのだ。
「おー。 また後でな。」
あの心臓破りの激坂を登ったというのに、疲れを一切見せない雀に手を振りながら、俺はゆっくりと1-Cの教室へと入っていく。
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「あー、お前ら。 先日話した通り、今から体育館に移動して先輩方の部活動紹介があるから、それを参考にして、今週の金曜日までに入部届けを私に提出すること。 以上、解散!」
朝の激闘に勝ち抜いた俺は、常に睡魔との闘いを繰り広げており、気がつけばあっという間に4校時が終わって、今から部活動紹介が始まることを担任の『前川』先生が告げていた。
彼女は凛とした佇まいで、堂々とした物言いをする女教師だ。 口調がたまに雑というか荒々しい感じで女王様をイメージさせる。 そんな彼女に踏まれたいと願っている男性がいるらしい。
「はぁはぁ。 前川様の、あの美しい生脚で踏まれたい…!」
――というか隣の席にいた。
彼は石岡くんと言って、丸坊主でいかにも真面目な生徒だと思われがちだが、実は違う。 彼は入学当初(一ヶ月前)、高校生デビューとかやつで女子にモテたいがために髪を茶色に染めてロングヘアーにしていた。
それを不愉快に思った前川先生が、石岡くんを呼び出し、校則違反だと言って自前のバリカンで直接髪を刈ったらしい。
それから新生石岡くんが誕生した。
どうやら彼は、バリカンで自身の髪を刈っている前川先生のゴミを見るような鋭い視線が目蓋に焼きついており、あれから忘れることができないらしい。 ――それはトラウマなのでは…? と思ったが、彼が頬を朱に染めて息を荒げていたので、これ以上はツッコまないようにしようと心に誓ったのだ。
「…そういえばさ、石岡くんはなんの部活に入んの?」
「はぁはぁ。 ボクは、部活に入るんじゃなくて作るつもりだよ」
「えっ、それって!?」
もしかしてS○S団とか、奉仕部とか、学園生活支援部とか作るつもりなのか!? それならぜひ、俺も入れてくれ――と言おうとした時。
「前川様ファンクラブを作るつもりなんだ。 よかったら、橋本氏もぜひ――」
俺は速攻彼から離れて、足早に体育館へと移動した。




