三萬~新生雀士現る~
生徒会長との死闘を繰り広げた後、正式に麻雀部と認められて数日が経った――。
俺と雀は相変わらず、二人一緒に地獄の坂道を登りながら登校している――前と変わったことといえば。
「もう、竜伍――。 また朝からゲームしてる…」
「ばっか、ちげぇよ。 これも部活の一環だっての」
そう言って俺は自分のスマフォ画面を、隣りで歩いていた雀に見せる。 雀は訝しげにしながら、スマフォの画面の覗き込む。
「あっ、これって…」
「そう! これは、麻雀のゲームでランキング戦もできるんだぜ!」
ドヤ顔で言う俺を鬱陶しく思ったのか辟易する雀だった。 俺はそれに構うことなく、続けてゲーム――否、麻雀の部活動を行う。
対戦相手はランダムで選ばれて、試合形式は東風戦で行われる。 勿論、東家から始まる『親』もランダムで選ばれる。
今現在、3局目でちょうど俺の『親』番からだった。
「よーし、逆転狙うか!」
トップとの差は1万5千点で、俺の現在の順位は3位。
普通の人ならば逆転を諦めるかもしれないが、俺は違う――なぜって? それは俺が『国士無双』で『地和』をできる人間だからだ!
先日、6万4千点の巻き返しをした俺は、神に愛されている存在なのだと思い込んでいた――。
15連敗するまでは。
「だー、ちくしょー!? なんで、ゲームだと『国士無双』できないんだよ!?」
役満すら完成できないことに俺は嘆く。 それだけじゃない、『一翻』を獲得してアガることすらできなかった。
「はぁ…、あのね竜伍。 あんなのは、たまたまの偶然なんだから、それに過信するのはやめた方がいいよ?」
俺を憐れむような目で警告する雀――ははーん、さては嫉妬しているな?
生徒会長との勝負でいいところを見せれなくて、俺の『W役満』が羨ましくて仕方がないのだろう。 ここは俺が大人になるべきだ。
「な、なにその目…?」
俺が仏のような悟った顔で眺めていると、雀は不思議そうな顔をして首を傾げていた。 そうこうしている内に、学校へと到着する。
「まぁいいや。 それと、さっきも言ったけど放課後、僕は用事あるから教室で待っててよ!」
俺たちは違うクラスなので、教室の前で別れて、各々自分の席へと着席する――。
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「あー、暇だ…」
授業が終わった後、雀の言いつけ通りに教室で待っている俺は、机に頬杖ついて窓の外を見ていた。 ――雀のやつ、放課後に用事あるなら各自で部室に行けばいいじゃねえか…。
なぜ頑なに、自分と一緒に行きたがるだろうか。
登校の時だってそうだ。 俺が朝に弱いからということで毎日起こしに来てくる――まあ、そのおかげで無遅刻無欠席なのはありがたいが…。
そのくせ、俺が「連れションしようぜ」と誘った時は、もう首がはち切れんばかりに左右に振るのだから訳が分からない。
まあ、うだうだ考えても仕方がないと思った俺は、ポケットからスマフォを取り出して麻雀ゲームのアプリを起動させる。
「どうすれば、また『国士無双』できるかなー…」
なんか、必殺技みたいでカッコイイ名前だったので一発で覚えた。 ――『国士無双の竜伍』という通り名がついたらどうしよう。
そんなしょうもないことを考えていると、麻雀ゲームの対戦開始画面が、「世界中のプレイヤーを検索中」ではなくて、「近くのプレイヤーを検索中」になっていた。
「あー、やっちまった…」
近くのプレイヤーを検索するモードだと、半径500Mぐらいしか通信できない。 これでは対戦相手が見つからないので、俺は慌てて対戦をキャンセルしようとすると――。
『☆ゼロ★が入室しました』
という文字が画面に表記されていた――。




