二萬~番外編~
「――さて、いつでもいいぞ」
俺は緊張と興奮で喉がヒリヒリと乾き、ゴクリと生唾を呑む――そう俺たちは今、2人っきりの状況だった。
先程、生徒会長との死闘が終わった後、眼鏡先輩が「竜伍に教えることがある」と告げて、マリアさんと雀に帰宅するよう促していた。 雀は俺と一緒に帰宅するつもりだったらしいので異議を唱えていたが、先輩の命令という事で、しぶしぶ帰っていった。
現在、麻雀同好会――改め麻雀部の部室にいるのは、俺と眼鏡先輩しかいない。
「ほ、本当にしてもいいんですか…?」
後でセクハラとかで訴えられる事を恐れる俺は、消え入りそうな声音で喋る。
「ああ、約束だからな――どこでもいいぞ」
その一言で、俺の脳内は一瞬で理性を失う。 息を荒げながら、俺が狙うポイントは1つ――2つの丘の頂辺に君臨するさくらんぼ。
俺はそれ目掛けて、人差し指で突っつこうとすると――。
「そこか…。 ――ちょっと、待っていろ」
眼鏡先輩が寸手のところで俺にストップを掛ける。 ――エサを食べようとすると、飼い主に「待て」と言われた犬の心境が分かった気がする…。
「こっちの方がいいだろ」
そう言った眼鏡先輩は右手に、お椀形が2つ繋がっている紺色の布を持っていた――って、それはもしや伝説のブラ○ャーでは…!?
俺は今まで都市伝説だと思っていた物体を目の当たりにしていた。 てか、なんで眼鏡先輩はブラを取ったんだ…?
「――この方が、指の感触に残るだろ?」
まさかの、俺のためにブラ○ャーという布1枚の隔たりを無くしてくれるなんて…アナタは神ですか!?
思わずこぼれそうになる笑いを噛み殺しながら、漢らしい眼鏡先輩の意思を尊重した俺は震える手でさくらんぼに接触する。
「あっ…」
制服の薄い布1枚から触ったそれは、独特のしこった弾力を持っており、それを押しつぶすと先輩の肩がビクッと震えて甘い声が漏れ出す。
常に凛としている眼鏡先輩とは正反対の可愛らしい側面を見た俺は、さらに理性を失い、服の上からでも分かる張りのいい曲線の2つの丘に五指を沈めようとする――。 すると。
驚天動地――まさに、天と地がひっくり返ったように俺の視界が真っ逆さまになる。 何事かと思い辺りを見渡すと、地面に仰向けで寝ている状態だった。
「調子に乗るな。 この続きがしたければ、私に『勝つ』ことだな――」
眼鏡先輩が覗き込むように顔を近づけて、先輩の長い髪が俺の顔に当たる――シャンプーの甘くていい香りがした。
どうやら俺は、投げ飛ばされたらしい。
「もっと強くなれ、竜伍――私はお前に期待しているぞ」
そう言い残し、颯爽と部室から退室する眼鏡先輩――俺はそれを眺めた後、意識が朦朧として気を失ってしまう。
――後日談。
あの後、一日中気を失っていた俺は家に帰ることができなかったので、両親や幼馴染の雀が心配して警察に連絡。 翌日、部室で発見された俺は、笑いながら失神していたので、『悪霊に取り憑かれた』と判断される――。
これが後に桐竜高等学校の七不思議の1つ――『神隠し』として扱われることを俺はまだ知らない。




