二萬~麻雀部結成⑮~
雀が『親』番となり、最後の局となる――場は静寂になり、牌と牌がぶつかりあいカチ、カチという音だけが木霊している。
俺は結局、眼鏡先輩から助言らしいアドバイスを貰っていない――俺は思案する。 どうすれば、眼鏡先輩のさくらんぼにツンツンすることができるのか。
間違えた。 どうすれば、トップとの差1万2千点を埋めることができるのか…。
そういえば眼鏡先輩が、麻雀では最低1000点から最高48000点まであるって言ってたような…。 『一翻』を獲得すればするほど、点数が増えているので、どうやって『一翻』を獲得するか考える。
現在分かっている『一翻』の獲得方法は――『リーチ』、『三元牌』(白、中、發)、『自風牌』(今回は「北」、『場風牌』(東風戦では「東」)を3枚揃えること。
完成形をイメージすると――「東」「東」「東」「北」「北」「北」「白」「白」「白」「中」「中」「中」「○」「○」 ※○は何でも可
これで『リーチ』も加われば、『5翻』も獲得することができる――! よし、やってやるぞ…!
俺はそう意気込んで、雀から反時計周りに配牌が始まり、計13枚の山から牌を取る――すると。
「ま、またかよ…?」
現実はそう甘くなかった――俺の手牌は、昨日の麻雀勝負と同じくバラバラの牌が集まっていた…『一翻』すら獲得できていない惨状だった。
「ふ、ふははっ、はははははは!!」
「!?」
突然、後ろに立っている眼鏡先輩が大声で笑い出すので、俺は何事かと目を丸くしながら彼女を見つめると。
「あー…、すまん。 ――やはり、私の目に狂いはなかった」
一体、先輩はどうしたというのだろう。 ……いや、笑うのは当然か。 俺の配牌があまりにひどすぎて、滑稽で笑い声を我慢することができなかったのだろう。
俺は軽く口を尖らせて、不満げな表情を浮かべながら手牌を眺める。
「あー、待て。 そう誤解するな――おい、高宮城! 助言ではなく、解説ならばしてもいいのだったな?」
眼鏡先輩は何を解説するつもりなのだろうか…?
「よし、では解説をしよう。 ――実は麻雀には、特定の牌を集めると高得点を得ることができる」
生徒会長から了承を得た眼鏡先輩は、部室の奥からキャスターの付いたホワイトボードを持ってきて、図解してくれた。
「その中でも『役満』と言って、揃えるのは最上級に難しい」
眼鏡先輩はホワイトボードに特定の牌で組み合わされたグループを幾つも書き出していった。 例えば『緑一色』は、ソウズの2、3、4、6、8と發のみで組み合わされてて、文字通り見事に緑で埋め尽くされたグループだった。
「へー、こんなに種類あるんですね」
10種類ぐらいの組み合わせがあったので、俺は驚嘆する――あれ? この牌がバラバラに集まってるやつって――。
「そうだ。 気付いたか、竜伍――お前はあと一つ必要な牌をツモれば、『役満』を手に入れることができる」
「「「な、なにぃー!?」」」
眼鏡先輩の言葉に驚愕する皆は、信じられないような目でこちらを見ていた。 ――うん、実際自分が一番信じられない。
まさか大失態だと思っていたものが、実は一番揃えるのが難しいものだったなんて――。
「役満でアガることができたら、竜伍――お前がトップだぞ」
マジっすか!? 最終局面で、大チャンス到来かよ――!?
俺はホワイトボードに書かれている『国士無双』というバラバラの牌で組み合わされているのを見ながら、自分に必要な牌はなにか探していると――。
「――あっ。」
配牌が終わって、雀から反時計周りに順番が回ってきて俺の手番の時――『国士無双』が完成していた。
「ツ、ツモ――『国士無双』」
…でいいんだよな? 皆が信じられない目で俺を見ている――人ってありえないものを目の当たりにした時、こんなに口を大きく開けるのか…。
石岡くんに至っては、口を開けすぎて顎が外れたみたいで痛み苦しみながら喜んでいた――なに? 自給自足なの?
「…ふっ。 竜伍――お前は本当に得体の知れない男だな。 それは『国士無双』だけではない」
皆が驚きで静まり返った中で、眼鏡先輩がイチ早く我に返り解説してくれる。
「一巡でツモアガリすることを『地和』と言って、これもまた――『役満』だ」
はっ? えっ、つまりなに? 俺は『役満』2つでアガったってこと?
「これを『W役満』と言って――64000点獲得できる」
ろくまん…よんせんてん…?
「えぇっ!? 最高48000点じゃなかったんですか!?」
「あぁ、私も今困惑している――長年麻雀をやってきたが、『W役満』を見たのは初めてだ…!」
今現在の4人の点数――橋本竜伍「88000」、生徒会長「19800」、石岡ペス「ー6900」、菅崎雀「ー8000」
圧倒的な差をつけて、『橋本竜伍』の勝利だった。




