二萬~麻雀部結成⑧~
まぁ、考えていても仕方がない…。 俺は今一度、自身の手牌を確認する。
「二萬」「四萬」「五萬」「七萬」「リャンソー」「ヨンソー」「ヨンソー」「ロクソー」「ハチソー」「ハチソー」「キュウソー」「よんぴん」「ごぴん」「ろくぴん」
うん、昨日の勝負の時より、いい牌がきている。 アガリまで『三つ』必要な状態か…悪くない。
一人満足しながら頷いていると、背後に立っている眼鏡先輩はどことなく残念そうな雰囲気を醸し出していた……眼鏡先輩は俺が負けて、裸になってほしいのだろうか。
ふっ、そんな残念そうにしないでも俺は眼鏡先輩になら裸を見せ合いっこしても構わないというのに。 俺は口の端を吊り上げながら、「ロクソー」の牌を捨てる。
「チッ」
……気のせいだろうか。 「ロクソー」を川に置いた瞬間、後ろに立っている眼鏡先輩が舌打ちしたような…。
どうやら隣にいた雀にも聞こえていたようで、俺の背後に幽霊でもいるかのように怯えながら見ていた。 うん、やっぱり代わって欲しい。
そんな眼鏡先輩とは反対に、雀の後ろで見守っているマリアさんは「どれどれ~」と言いながら、前屈みになりながら雀の手牌を覗いていた――羨ましいっ…! 背後からおっ○いが迫ってくるなんてどんなシチュエーションだよっ!
多分、並大抵の男子なら麻雀に集中することができず、ペースを乱されることだろう…だが、強靭な精神を持った俺ならばそんなものには惑わされない。 俺なら、迫ってくるおっ○いを背もたれのように背中を預けて、麻雀に集中することができるだろう。
「おい…貴様、麻雀を舐めているのか…?」
マリアさんの胸部に夢中になっていた俺は、眼鏡先輩に頭部をアイアンクローされて、ギギギと顔が麻雀卓に向くように強制される。 はい、すいません! 集中できてませんでした!
心の中で謝っていると、雀は「一萬」を川に捨てる。 次に生徒会長の番となり、彼はまた何かを考えるように指で一定のリズムを刻みながら、「イーソー」を川に捨てる。
次にペ…石岡くんの手番となり、彼はなんの迷いも見せず「ゴソウ」を捨てた――すると。
「ポン」
「「!?」」
俺と雀は生徒会長の発した言葉に驚愕する――また、ポンだと…!? 二回連続でポンをすることができるなんて、眼鏡先輩と同等の実力の持ち主なのか、よほどの強運なのか…?
俺は焦った。 奴らに勝利するには、こちらも『ポン』や『チー』を駆使して、早くアガリ続けなければならない…!
俺は『チー』をしようにも、左の席に座っている石岡くんが捨てる牌は、生徒会長に持ってかれるので、誰が捨てても『ポン』ができる手牌にしなければならない。
そして俺は「ななぴん」を川に捨てる。 ……その瞬間、寒気がした。 背後に立っている眼鏡先輩が、鬼のような形相で俺を睨んでいるのがヒシヒシと伝わってくる…もうね、背中の冷や汗が滝のように流れて漏らしたみたいになってるんすよ。
俺は助けを求めるように、隣りにいる雀を見たが、奴は俺を見捨てるかのように知らんぷりで山から牌を取っていた――ふふ…、俺には仲間なんて誰一人いないんだ…。
そんな絶望している最中、雀の後ろにいたマリアさんがこちらを見ながら、(がんばって!)と両手で拳を作りながら小声で応援してくれた。
――女神がいた。
そうか、俺には仲間はいないがマリアさんという女神がついていたのか…! ――もう絶望する必要なんかない…!
俺は思わず、ピンクの魔法少女服を着た彼女が思い浮かんでしまったが胸にしまっておく――俺は胸に希望を抱きながら、再び、麻雀卓へと向き合う。
そして雀が「ヨンソー」を川に捨てたのを見逃さない。
「ポン!」
――決まったぜ! ヒーローが土壇場で登場したかのように、俺はグッと親指を立ててドヤ顔をしていた。 すると。
「あー…、すまない竜伍」