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二萬~麻雀部結成⑦~

 眼鏡先輩と俺は数秒見つめ合っていたが、彼女は見飽きたのかプイっと顔を違う方へと向けていた。 …分かっている、眼鏡先輩は照れているだけだ。 決して俺の顔が気持ち悪かったから、視線を逸らしたわけじゃない。 うん、きっとそうに違いない。


「じゃあ高宮城から、牌をとれ」


「…言われなくても分かっているさ。」


 眼鏡先輩が指示を出していることに気に食わない生徒会長は、嫌々ながら牌を4枚ずつ取っていく。 それに習うように、石岡くん、俺、雀の順番で牌を掴んでいく。


「よし、これで配牌は終わったな。 それと点数計算なんだが、竜伍は全くの初心者だから勝手がわからないはずだ――なので、私が点数の申告をしてやろう」


 そう言って眼鏡先輩は俺の背後につく――まるでスタ○ド使いにでもなった気分だ…! 今なら5秒だけ時を止めれそうだ。


「…いいだろう。 ただし、一切助言はするなよ」


「無論だ」


 生徒会長の忠告に、何の異議も唱えない眼鏡先輩は腕組みをしながら堂々と立っていた。 ――眼鏡先輩が後ろにいるだけで、すごい心強い…!


「じゃあ、私は菅崎ちゃんを見守るわね」


 そう告げたマリアさんは、雀の後ろに立っていた――な、なにぃ!? あの、たゆんとした大きな胸が背後に存在してるなんて、羨ましい…!! 俺と席を交替してくれぇ!


「ほほう…、私では不満か、竜伍…?」


「いえ、滅相もございません」


 俺がマリアさんの巨乳を羨ましそうに見ていたので、眼鏡先輩がパキパキと指の骨を鳴らしながら睨んできたので俺は全力で否定した。 まだ、死にたくありません。


「ふん、まぁいい…。 高宮城、勝負は『東風戦トンプウセン』でいいか?」


「それで構わない」


 『東風戦トンプウセン』とは、『親』が一巡したらゲームが終了となるらしい。 どうやら『親』は交代制らしい――なんだか複雑な家庭に生まれた気分だ…。


「では、ゲームを開始するとしよう」


そう言った生徒会長は、山から牌を一つ取り、手牌が14枚になる。 ――生徒会長は何かを考えるように、トントントンと指で卓を突っつきながら、しばらく逡巡した後、「九萬」を川に捨てる。


 次に石岡くんの手番となり、彼は山から牌を取ったあとすぐに「三萬」を捨てる――すると。


「ポン」


 生徒会長はそう告げて、石岡くんが捨てた「三萬」を自身の区域へと持っていき、卓の右端に「三萬」の文字が三つ並ぶ。


「あのー…。 そろそろ、その『ポン』とか『チー』の意味教えてくれませんか?」


 俺は、昨日から勝負の蚊帳の外だったので、もっと対等に戦いたいという思いが溢れてしまって、つい勝負の最中だというのに、説明を求めてしまった。


 生徒会長は信じられないものを見た目でこちらを一瞥した後、眼鏡先輩に視線を送っていた。


「仕方ないだろう。 竜伍は昨日、初めて麻雀をしたばかりだ――そういうわけで、助言はしないが解説はしてもいいだろうか?」


 ふぅー、やれやれと言った様子で生徒会長がため息を吐きながら、眼鏡先輩の要求をしぶしぶ承諾していた。 …なんだか、無知な自分が恥ずかしい!


「ふむ、では説明しよう。 『ポン』とは、自分の手牌に同じ絵柄の牌が二つあった場合、自分以外の誰かがその絵柄と同じ牌を川に捨てた場合、『ポン』と宣言して自身の手牌として扱うことができる。」


「そして『チー』についてだが、『チー』は数字が二つ並んでいる牌を持っている場合宣言することができるが、注意として『左に座っている人が捨てた牌のみ』という条件がある。」


「――例えば、自身の手牌に「二萬」と「三萬」を持っているとしよう。 そして、左に座っている人が「一萬」か「四萬」を川に捨てたら『チー』を使える…というわけだ。」


 丁寧に解説してくれた眼鏡先輩は長いあいだ喋ったせいか、ふぅ、と嘆息していた。 ――マジすんません! 分かりやすく説明してくれてありがとうございます!


(ん? …待てよ)


 俺は眼鏡先輩に感謝すると同時に違和感を覚えた。 ……昨日の勝負もそうだったが、『ポン』や『チー』ができる確率って大体どのぐらいだろうか? 『一巡目』からできるものなのだろうか…?



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