二萬~麻雀部結成⑥~
俺たち6人(5人と1匹?)は、麻雀同好会の部室へと移動する――ただそれだけなのに、大勢の視線が俺たちに突き刺さる。
…理由は明白だった。
生徒会長は、石岡くん(ペス)の背中に跨り、乗馬のように匠に乗りこなしていた――そして、石岡くんは羞恥プレイなのか分からないが、顔を赤らめながらハァハァと興奮していた。 …彼はただのドМなような気がした。
俺は、クラスメイトが犬の真似事をしている様を見るという過酷な時間がやけに長く感じたが、実際は10分も経ってなかった。 …そして、ようやく麻雀同好会の部室へと辿り着く。
「ふふ…、じゃあ勝負の場を整えてもらおうか」
生徒会長の偉そうな言葉にうんざりしながらも、眼鏡先輩とマリアさんは全自動卓の準備をして、四つの牌を卓の上に並べていた。
「席の決め方は前と同じでいいだろう。 ――竜伍、お前から引いてみろ」
なぜ俺から? という疑問が浮かんだが、眼鏡先輩の有無を言わさない鋭い視線に耐え切れず、俺は素直に従う。
裏返っている牌を指で弾いてひっくり返すと――『東』という文字が書かれていた。
「ふふ…、やはり貴様は面白いな。 ――よし、じゃあ次は菅崎の番だ」
こうして次々に牌を裏返し、各自、指定の席へと着席する――『東』に俺が座り、その右に『南』である雀が座り、俺の真正面に座るのは『西』の生徒会長…、そして最後に『北』を引いた石岡くんが俺の左に座る。
次に眼鏡先輩からサイコロ二つを渡されたので、俺はそれを転がすと出目は――『2』と『5』。 合計は『7』。
だからえーと…、俺から左回りに1ずつ数えていくと――『7』という数字は生徒会長の場だった。
「ふふ…どうやら、私が『親』のようだね」
な、なに言ってんだコイツは…!? 俺は、お前に育てられたわけじゃないぞ…? ――ハッ!? まさか、俺の両親は金で雇われた家政婦で、実は生徒会長が本当の『親』だったのか――。
「そんなわけないでしょ」
雀が俺の頭部にチョップを繰り出し、間違いを指摘する。 …殴らなくてもいいじゃねぇか、と俺が不満げに雀を見ていると、雀はハァ、とため息をついて『親』について説明してくれる。
「『親』に選ばれた人は、アガった時に貰える得点が増えるっているルールなんだよ。 昨日の先輩達との勝負では、一回で勝敗が決まるものだったから『親』の存在はいらなかったけど」
なるほど…つまり『親』になれば、相手との差を大きく広げることができるってことか。 ――しかし、得点ってなんだ…? 基準が分からない。
「そこは、私が説明しよう――本来、麻雀は各自25000点を所持しており、この得点を奪い合いのを目的としたゲームだ。 基本、一回のアガリで最低1000から最高48000点まで奪うことが可能だ」
なっ…!? 最高48000点って、一発逆転も狙えるってことか…!?
「――ま。 一度に48000点獲得できることはそうそうないがな」
俺の希望を打ち砕くように、現実はそう甘くないことを告げる眼鏡先輩。 ――そして彼女は俺の方を興味深そうに眺めていた。
……? ははーん、さては俺に惚れているな?