二萬~麻雀部結成②~
「橋本 竜伍はいるか!?」
勢いよく扉を開けて、1-Cクラスに入ってきた人物は、まさかの眼鏡先輩だった。 昨日の麻雀勝負で、俺の手牌が酷すぎて怒りに来たのだろうか…? だとしたら逃げ去りたい!
眼鏡先輩の後ろには、かの女神である庭白マリアさんも居た。 彼女は俺と目が合うとニッコリと笑って手を振ってくる。 …うん、一刻も早く彼女の元へ行かなければ。
「えっと…、何の用でしょうか…?」
俺は眼鏡先輩の凄みのある顔に恐怖しながら、恐る恐る近づいていき、腰を低くしながら要件を伺う。 すると、
「麻雀部に入らないか?」
「「えっ?」」
眼鏡先輩の唐突な質問に、俺と雀は目を丸くしながら驚いていた。 えーと…、俺いま勧誘されてる? あんなにダメダメだったのに?
「もちろん、部に入れば私と勝負し放題。 ――そして、勝った暁にはいくらでも『裸』を見せてやろう」
「入ります!」
即答だった。 なぜ俺が勧誘されているか理解できないが、『裸』が見れない部と見れる部があるとしたら、当然見れる可能性のある部に入るのが世の理だ。
「ちょっ、竜伍!? 僕との約束は!?」
「そうそう、菅崎――ぜひお前も入部してもらいたいのだが?」
「あー…、こいつは将棋部所属なんでダメですよ。」
「ふむ、そいつは残念だな…。 よし、竜伍。 私が手とり足取り教えてやる」
「マジっすか!?」
「ちょ、僕との約束――」
雀は体を震わせながら怒りを露わにしていたが、俺はそれを無視して眼鏡先輩の後について行き1ーCクラスを出ようとする。
すまない、雀…。 綺麗なお姉さんが手とり足取り教えてくれるって言うのに逃げるなんて、俺にはできねぇ…。 次からは約束を守るから許してくれ。
「もう、竜伍のバカ…! ――決めた! 僕も麻雀部に入る!」
半ばヤケクソのように吠える雀は、麻雀部に入ることを俺たちに伝えてくる。 その時、眼鏡先輩の口元がニヤリと笑っていた。
――ふっ。 どうやら雀も裸を見たいという欲望には逆らえないんだな。 という思いで、生暖かい視線を雀に送っていたら、すげぇ睨まれた。 蛇に睨まれた蛙ってこんな気持ちだろうか……。
「よし、じゃあ行くぞ!」
眼鏡先輩の喝により、怯んでいた俺の足は再び動き出し先輩の後へと続く――のだが、どこに向かっているのだろうか? 麻雀部の部室は、こっちの方向ではなかった気が…。
「えーと…、どこに向かっているんですか?」
俺は、眼鏡先輩にそう聞くと、彼女は口元を歪めてこう告げる――。
「生徒会室だ」