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神様の恋愛事情  作者: ゆうた
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第1話: 孤独な神様

よくこんな論争を耳にする。神様はいるとか、神様はいないとか、心の中にいるんだよとか。全く…。神様に会って、何がしたいんだろうか。神様だって、人間のような生活がしたい。そこまでご利益があるわけでもないのに…。俺は宮原黒人みやはら くろと。男子高校生して、神様である。ーーーーー

厨二病だと思う者もいるだろう。笑いたければ笑えばいい。そんなことで天罰は下さない。というか、下せない…。ただ、1つの神様として、直接人間界を見守ってるだけにすぎない。神様はどんなことでもできる、自由の塊だなんて考えてる者はいないだろうか。そんなことはない。全くもってない。むしろ、自由を欲している。神様であるゆえ、人間と密接な関係を持ってはいけない。神様ということを知られてはいけない。俺は人間界では常に孤独なのである。自ら孤独になっているのである。孤独になろうと努力し、孤独になっているのだ。これは、これまでの神職の中で、最上級に辛いものといっていいだろう。友達が欲しい。恋人が欲しい。人間界にいる間なら、少しでも人間のような生活をしたい。神様にだって感情はある。これが、俺の願いだった。前置きが長くなってしまったが、これが俺の全てである。


第1章 いつもの日常


朝、目が覚める。いつもの日々の始まりである。家族はみな神職で忙しいため、人間界の家には俺とあいつが2人で住んでいる。

コンコン。お、来た来た。

「どうぞ。」

「クラウド様、ご朝食をお持ちに参りました。」

「ここでは黒人って言っただろ。」

「そうでした!すみません、黒人様。」

彼はルイザ。神様に仕える神官、といったところだろうか。人間界に行く神様は、必ず神官がついていくものなんだと、父上が言っていた。彼には結構お世話になっている。彼のおかげで助かった事例も少なくはない。頼りになる神官だ。クラウドというのは、神界での名だ。黒人は、神様だとバレないように使ってる偽名。だからこそ、人間界ではクラウドの名は使わないよう、決めていたのだ。

さて、ルイザの朝食を食べ、高校へ行く。伝門高校、ここが俺の高校だ。父上の話によると、ある程度の名門校らしい。徒歩で15分。遠すぎず、近すぎず、父上が選んだ場所だ。今日も、通学路を歩いていると、聞き覚えのある声がした。

「おっはよー!!黒人くんー!!!」

俺の防災班の班長であり、生徒会副会長の、西浦瑠衣にしうら るい。1年上の先輩で、班長は代理だ。フレンドリーな性格で、根暗な俺を学校に馴染ませようと、積極的に声を掛けてくる。俺が神様でさえなければ、とっくに仲良くなれていたんだろう。

「あぁ…おはよぅ…」

孤独にならなければならない。そのために、こうする他ないのだ…。

「どーしたのー?元気ないよー?」

元気はいいんだ。ただ、こうしてるだけなんだ…。悲しくなるからほっといてくれ…。

「いつものことだよ…疲れてるから先行ってくれる…?」

「そっかー、じゃあまた、学校でねー!」

笑顔で走り去っていく彼女。毎日こんな様子なのだ。父上との約束で、見守りは中学3年生から10年。それを過ぎたら、神界に戻らなくてはならない。あと9年もこんなことが続くのか…。そう考えるたび、憂鬱になるのだ。

学校でも、似たようなことはある。

「よぉ、宮原。一緒に飯食わねぇ?」

彼は畑垣健一はたがき けんいち。よく俺に話しかけてくる、男子の1人だ。親父さんが大工かなんからしく、かなりゴツい体をしている。頭も良く、性格も良く、なかなか凄いやつなのだが、その口調、声色、見た目のせいで誤解されることが多い。「いや、遠慮しておくよ…」

俺も一緒に食べたい。神様だとバレなきゃいいじゃないかと何度も父上に言ったことがあるが、ダメだと拒否された。頑固な父上である。

「そんなこと言わずによぉ〜みんなで食うと、楽しいぜ??」

そんなこと分かってる。食事だって、神界で家族と食べた方が何倍も美味しかった。そんなこと言えるはずもなく、また自分から拒否してしまうのだった。

「みんなっていっても2人だし…俺はもう1人で食べるから。」

「そうか…。じゃあ、またいつかな!」

はぁ、友達ができたら、どんなに楽しいだろう。考えても叶わないなんて分かってるのに、それでも考えてしまうのだ。


第2章 女神様


高校2年になり、クラス替え。1人1人自己紹介をしていく。

「畑垣健一だ!みんなよろしくな!」

畑垣も一緒なのか。ちょっと安心感。

「では、次の人。」

「宮原黒人…。1年間よろしく…。」

一気に暗くなるクラス一同。とりあえず、今年は大丈夫だろう。気がつくと、自己紹介も終盤にかかってきていた。

「では、次の人。」

松井彩香まつい あやかです。1年間、どうぞよろしくお願いします。」

「へっ…?」

あまりに驚き、つい変な声を出してしまった…。一瞬、なにがなんだか分からなくなり、顔が一気に熱くなるような感じた。

ーーーーーー何故こんなにも、ドキドキするのだろう。澄んだ黒い瞳。綺麗なポニーテールの黒髪。ハキハキとした、でも優しく包んでくれるようなその声。まるで女神様のような彼女。その全てに、心を奪われてしまったようだ。これは…一目惚れ…?…どうやらそうらしい。どうやら俺は、人間界に来て始めて、恋をしてしまったらしい……。

孤独にならなくてはいけないと分かっていても、この胸の高鳴りは抑えられなかった。彼女と1年間、同じクラスになれる。それだけで、嬉しかった。始めて、父上の約束を破り、孤独から離れ、恋をしようと思った。

昼休み、俺はルイザの昼食も食べず、松井彩香さんの所へ行った。

「君が…松井さん…?」

「そうだよー。君は確か…宮原君だっけ?」

「そう…覚えててくれてたんだ…」

「当たり前じゃない!これからよろしくね!!」

目の前で彼女の笑顔を見ると、胸が破裂しそうになる。多分俺の顔は真っ赤だろう。

「うん…よろしく…」

「あ、そういえばさー、『ギャラクシー・ウォーズ』の第3弾、見たー?」

「『ギャラクシー・ウォーズ』…?それは何…?」

「えっ?知らないの?超有名な映画だよー」

そりゃ知らないわけだ。基本的に、外出はしない。映画館にも行かない。だから、映画なんて知るわけがないのだ。

「うん…知らない…」

「そっかー、残念〜」

「彩香ーー!!サッカーしようよー!」

「いいよー、ちょっと待っててー」

「じゃあね、宮原くん!」

「うん…じゃあね…」

その日の夜。俺はルイザを呼んだ。

「何でしょうか、クラウド様。」

「黒人だって言ってるだろ…。あのさ、ルイザ。お前、『ギャラクシー・ウォーズ』って、知ってるか…?」

「はい、存じ上げております。『ギャラクシー・ウォーズ』とは、大変人気な人間界の映画でございまして、現在第3弾まで放映しております。」

「見たい。」

「は…?今、何と…」

「その映画を見てみたい。」

「それはかなり難しゅうございます…。」

「なぜだ。」

「はい、映画は映画館でしか放映しておりません。なので、映画館にいくほか…。」

「それ以外に方法はないのか。」

「あることはありますが…。」

「なんだ。」

「レンタルショップでDVDをレンタルし、テレビを購入し、ここで見るのです。」

「じゃあ、それでいいじゃないか。早く見たいんだ、俺は。」

「かしこまりました。ですが、なんでいきなり、映画なんかを見たいと思ったので?」

「…ルイザには…分からねぇよ……」

「…そうですか。分かりました。では少々、お待ちください。すぐ買ってまいります。」

「ありがとう。…頼んだよ。」

それから1時間半後、息をゼーゼー切らして今にも倒れそうなルイザと、なんと、松井彩香さんが来ていたのだ!!

「ま…ままっまっ松井さん!?なんでここに!?あと、ルイザ!!どうしたんだよ、お前!!」

「宮原くん…?この子、ルイザ…くん?っていうのかな…。お友達?」

ここで、執事とか神官なんていうわけにはいかない。しもべ?違う。友達?ルイザ、見た目子供っぽいからなぁ…。うーん…これしかないか…。

「まぁ、後輩って…ところかな。」

「そっか。でも、後輩くんにあんまり無理させちゃダメだよ〜。この子、道で倒れてたんだから。私が助けてあげなかったら、どうなっていたか…。」

道で倒れていたルイザを、松井さんが助けてあげた…。どんな偶然だよ…ってか、松井さん、優しい子だなぁ。ってか、ルイザが道で倒れてた!?

「ルイザ、どうした!?大丈夫か!?何かあったのか!??」

「いいえ…黒人……「先輩」…大丈夫です…何とか…こちらの方は…先輩の同級生…の方…ですか?」

そっか、先輩と後輩って設定だから、先輩って呼んでくれてるのか。こんな状況なのに…。

「ああ、クラスメートの松井彩香さんだ。それよりルイザ、一体どうしたっていうんだ。」

「ちょっと……テレビが…1人じゃ、とても重すぎて……すみません、先輩。」

「ええっ!?テレビ!?ルイザくんの運んでたのってテレビだったの!?ーー黒人くん〜〜??後輩にこんな可哀想なこと、押し付けてたのー?ひど〜い!」

ガガーン…!!会って初日で嫌われるとは…。一気に絶望の淵に追いやられる俺。すると、ルイザが思いがけないことを言った。

「違うんです…松井さん…。これは…先輩への…日頃の感謝を込めて……プレゼントだったんで…知らなくて当然ですよ…」

「そうなの?黒人くん」

「そう…みたいだね…。まさかプレゼントもらえるなんて、思いもしなかったから…。ありがとう、ルイザ。」

ルイザナーイス!!!よくやった!!ありがとう!!修羅場乗り切れた〜〜!あとで何か好きなもの買ってやるからな!!! あと、気のせいかもとスルーしていたが、「黒人くん」って呼んだか今!?

「あとさ、今、俺のこと、黒人くんって…」

「うん!呼んだよ!だってもう、友達じゃん!」

「えっ…?友達…なの……?」

「私はそうだと思うんだけど…違うの?」

やばいやばいやばい、嬉しすぎる…。ここは天国だ〜。

「違くないよ。よろしくね、松井さん。」

「彩香さん、でいいよ〜。よろしくね!」

「……よろしく…『彩香さん』…。」

俺は今、告白級のことをされているような気がした。呼び方変えるだけで…こうも変わるのか…。すると、彩香さんが例のDVDを見つけて、手に取った。

「あと、この『ギャラクシー・ウォーズ3』は、ルイザくんが一緒に見ようとしたの?」

「黒人先輩が見たがっていたので…買ってきてあげたって感じですね…。」

「そうなんだー。実はねー、今日、黒人くんとも、『ギャラクシー・ウォーズ』のこと、話してたんだよー。」

「えっ…?……あぁ…そうでしたか…。」

察しのいいルイザには、気づかれてしまっただろうか。俺が急に『ギャラクシー・ウォーズ』を見たいと言い出した理由も、俺の松井さんへの想いも…。

「ねぇねぇ、黒人くん。今からさ、一緒に見ない?『ギャラクシー・ウォーズ』。」

「へっ…??今…から……!?」

「そうだよー、なんか用事でもある?」

「全然ないよ!!!でも………」

「でも〜〜?」

「…心の準備が……!!!」

「そんなー、緊張しなくてもいいのに〜すぐほぐれちゃうと思うしさ、早く見ようよ〜。」

多分ほぐれないな…。だって、好きな人と、会ったばかりなのに、家で、映画を見るんだぜ!??奇跡に奇跡が重なって、そのまた上に奇跡…ぐらいじゃないと起こらない、超超奇跡じゃないか!!??こんな恵まれていいのだろうか…いつか天罰でも下るんじゃ…あ、そういえば俺が神なんだっけ。考えてみれば、孤独になろうとしてたはずなのに、いつの間にか仲良くなって、家まで来て、映画まで見ようとしてるんだよなぁ…。これって、運命の人…?運命は神が決めるもんじゃないから分からない。神だって、奇跡を起こせるわけじゃないからね。はぁ〜映画かぁ〜。どうしよっかな〜。見たいなぁ〜!!

「どうしたの?黒人くん。さっきから黙っちゃって。…大丈夫?」

はっ!すっかり浮かれてしまっていた!!

「ごめん、大丈夫だよ。見ようか。」

「うんっ!!」

彼女のそのとびっきりの笑顔はまるで一瞬光を放ったかのようだった。これさえ見れたなら、もういいや。そう思わせるような輝かしい笑顔だった。そして、俺たちは、映画を見た。宇宙戦争もの…だろうか。ちらと隣を見てみると、目を輝かせながら必死に画面を見ている彼女の姿があった。

「ほら見て、ここ、ここ!!私のオススメシーン!!この悪役、かっこよくない!?」

「うん…確かにかっこいいね!」

楽しそうに話してくれる君の方が何倍も可愛い。そんな風に言いたいぐらいだけれど。

「見て、綺麗な宇宙…ロマンがあって素敵だよね〜……。」

君の方が素敵だ、なんてセリフ言えるわけない。宇宙が素敵ってことは、天文部かな?

「そういえば彩香さんは、天文部員なの?」

「違うよー。私は女子サッカー部。黒人くんは?」

確かに、今日も他のクラスの女子とサッカーしに行ってたな…。俺の部活!?俺は…

「あはは…帰宅部……かな…。」

部活なんて入ったら、バレる可能性大だし、当時は孤独になりたがってたんだ。…?…今は、どうなんだろうか…?

「部活は入った方がいいよ〜楽しいし!!」

「そっか…考えとくね。」

「絶対だからね!」

絶対と言われると厳しいなぁ…。でも…

「わかった、わかった。」

期待を裏切るわけにもいかない。

そんなこんなで、雑談まじりの映画鑑賞も、ついにフィナーレを迎えようとしていた。彼女の目には涙が。確かに、感動する話だった。

「いい映画だったね…。」

「でじょ?でしょ?いい映画だったでしょ!?うう〜。」

涙まじりの彼女は、必死に答えてくれた。幸せなひと時も、もう終わり…か…。すると彼女が、スマホを取り出した。映画鑑賞中、電源を切っていたらしい。スマホを見た彼女は…慌てふためき、言った。

「やっば、もうこんな時間!?私、帰るね!」

「家は…どこらへんなの?」

「3駅ぐらい離れてるんだよ〜。結構遠いんだ〜…。」

「そうだね…かなり遠いね…。」

「うん、だからもう帰るね!!じゃあね、黒人くん!また学校で!!」

「…うん、またね!!」

笑顔で走り去っていく彼女。あぁ…夢が終わる……でも、また明日学校へ行けば…また、彩香さんと話せる、夢のひと時を味わえる!!早く明日にならないかな〜。そう思いながらガッツポーズをした俺を、ルイザは微笑ましい笑顔で眺めていた。

次の日、彩香さんと話せる〜と、ウキウキだった俺は、人間界生活のなかでもトップ級で上機嫌だった。

……昼休み、一気に気分が落ちた。

「あいつ…!!なんで……!?」


ーーーーーーー 第2話に続くーーーーーーー


あとがき

初めて恋愛小説を書き始めました!ゆうたです!第1話、どうでしたでしょうか?最初からストーリー構成や登場人物を考えるのは、なかなか難しく、でも、とても楽しかったです!!あなたはどのキャラクターが好きですか?是非、コメント欄に書いてくださいね!!感想なども是非!!それでは、第2話をお楽しみに!!!


次回予告

「ルイザ……今日の俺はいつになく本気だぜ…!!」

黒人に一体何が!?昼休み、黒人が見た衝撃の光景とは一体…!?仲良くなり始めた黒人と彩香、2人の関係に進展はあるのか!?人間関係が目まぐるしく変わる第2話!!お楽しみに!!

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