──魔法世界
全てが魔法という原子の集合体で出来ている世界。
その世界では、魔力の力こそが正義であり、全てである。
天使、堕天使、悪魔
この三種族と、人間、この4つの知性ある種族が存在する世界。
その中でももっとも魔力量の少ない種族こそが人間だった。
***********************
「何故.....こんなことをするの?」
少女の周りは焦げた瓦礫と炎、そして死体で埋め尽くされていた。
その少女から少し離れた所に、純白の長い髪を垂れ流した、少年がいた。
その少年の周りには、濃密な魔力が満ちている。
「つまんなかったから...暇だったから。」
「──っ! そんな、そんな理由で!」
「──? だって、人間はいつか死ぬんだから、今殺したって別に大差ないじゃん。」
少年は悪びれずに、何故自分が文句を言われているのかわからない風に言った。
それに対して少女はただ茫然と少年を見つめるしかなかった。
少女には、その少年の言葉が、理性が信じられなかった。
「......やる。」
「なんて言ったの?」
「後悔させてやるぅぅぅ........!!!!!!」
少女はありったけの魔力を自分の体の中から吐き出し、その少年へとぶつけた。
───だが、
「我を守る、白き盾となれ」
少年がたったその一言を紡ぐだけで、少女の魔力は少年の前に現れた白き壁のようなものに、いとも簡単にはじかれた。
「....なんで? なんで? なんで、正しいのは、守ろうとしたのは、私達なのに、なんで最後に悪が勝つの?」
「力こそがこの世界の正義だからだよ。」
「.....そんなの、間違ってる。
そんなの、ダメ。 正義は、優しい心でしょ?」
「正義は、強さだよ。」
少女は自分の中の信念を否定され、正義を否定され、何を信じればいいのかわからなくなった。
「もう、疲れた。 さっさと、殺せば?」
少女は崩れ落ちるように地面に突っ伏した。
実際に、さっきの攻撃で自分が立てる程の力など、もう、ちょっとも残ってはいなかったのだ。
「じゃあ、捕虜にする。」
「──は?」
少年は少女をおんぶすると、さっさとその場所を後にした。