表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

言うならばそう、事件。

【難易度★★★☆】新型迷宮が出現

  探究院は「氷覚の迷宮」と命名した模様。内部では凍り漬けの人形やエレメント型のクリーチャーなどが確認されており、現在も調査が進められている。


【速報】皇龍の牙、解散か

  ギルド広報にて「皇龍の牙」のメンバーリストに欠員が見られた。これに対し、絶対王は「大変な事があった。しばらくはそっとしておいて欲しい」とコメントしている。



  このニュースを見た私は、どたどたと乙女らしさの欠片もない音を立てて階段を上がり、お兄ちゃんの部屋に向かった。

「お兄ちゃん!!ヤバいよこれ!!」

  お風呂上がりなのか、タオルをぼさぼさのひよこ頭に巻いてタンクトップとジャージのズボンと言うだらしない格好で寝転がっていたお兄ちゃんに、リストフォーンを突きつけた。

「見てよこれ!あのクロトさんが弱気になってるよ!!この世の終わりだよ!!」

「はぁ?あの子が?……まぁ、そう言う時もあんだろ」

  木枯 幽鳴(こがらし ゆうめい)……つまり私の兄は大きく欠伸をして、乱雑に積まれた漫画の山から週刊誌を取り出した。兄とは言っても、血は繋がっていないけど。こんなだらだらとした人が、アクティブポジティブプログレッシブが基本の東雲(しののめ)家の血を継いでいる訳がないのだ。

  お兄ちゃんはクロトさんと同じ『塾』で育ったものの、いつまでたっても独り立ちしないでいたダメ異能者である。しかしそれに目をつけたお父さんが「立派に育てて跡継ぎにしよう!」と引き取ってしまい、現在に至る。

  ちなみに、お父さんはお兄ちゃんのあまりのダメっぷりに絶望して今ではうつ病患者だったり。なんかもう、笑う所じゃないのに笑えてきてしまう。

「……つーかお前、いつもの集会?あれ行かねぇの?ついでにナードで最近出た「トラミートバーガー」買ってきて欲しいんだけど」

「ああもう、ドラミートだかトラミートだか知らないけどそれどころじゃないって!!このままだと私の週1のお楽しみが!!クロトさん摂取記念日が無くなっちゃうよおお!!」

  私……東雲リノンは、熱心な絶対王信者だった。クロトさんが出てくるひさのき先生の全年齢向け同人誌は全て買っているし、皇龍の牙が温泉旅館を開けば週1で通う様になった。

  買い出しで街にやってきたクロトさんの写真アルバムの数は10個にも登っている。嫁いでもいいと思うぐらいにクロトさんが大好きな私は、とても悲しんでいた。

  バンダナがズレるのもお構い無しにヘドバンを続けていると、リストフォーンが鳴った。

「うえぇ……」

  くらくらする頭を押さえて見てみると、メールが一件届いていた。


送信者:緋影 奈楽

件名:どうした?

予定時間2秒オーバー

気をつけたし


  くらついていた私の頭はたった16文字のごく短いメールで冴え渡り、心臓はまるで余命宣告を受けたかの様に跳ねた。

「ヒィィ!?私死にたくない!!行ってきまーす!!」

  お兄ちゃんの部屋の窓を開け、私は玄関へと飛び降りた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ