夢だ!
ここは一体……。
私の名前は天宮薫。
ごく普通の一般のOLだ。
今日もマニュアル通りの仕事をこなし、同僚達とたわいない無い話をしながら自宅に帰る。そして、ビールをチビチビ飲みながら一日を終えるのだが……。
今、目の前にある現状が理解出来ない。
出来る訳が無い。
ああ、そうか。私は今夢を見ているのか。
それなら納得だ。今日はトラブルもなく大して疲れも無かったが、寝落ちしてしまったらしい。
やけにリアルに感じる缶ビールを一気に飲み干し、目を瞑る。
夢だがこの居心地の悪い夢は勘弁してほしい。
このまま寝てしま…………
「救世主様!!どうか我々にお力を!!」
……えませんでした。
てか、救世主って何よ!?
まてまてまて!これは夢だ!そう!夢なのだ!
現実ではない!!落ち着け私!!
落ち着いてよく周りを見ろ!!
今、私の周りには得体の知れない黒のローブと白のローブを着た不気味な人物が数人。
さらにその後ろには王様仕様のコスプレしたいい大人が一人。
そのコスプレ男を守るように立っているイケメン二人。
その二人も訳わからないコスプレ仕様。
我ながらイタイ夢だ。
「救世主様! どうか勇者様のお怒りをお鎮め下さい!」
ローブ連中がこれまた意味不明な事をあれこれ言ってますど、勇者の怒りを鎮めろって……。
普通、魔王を倒せとかじゃないの?
ああ、そうか。私の夢だからなぁ……。
うんうん。よしよし。落ち着け私、落ち着くんだ私。
「救世主様!! どうか我々の願いを!!」
……ローブ連中めちゃくちゃうるさい。
もっと声のトーン落としてもらえないかな。
「おい。この男は本当に救世主なのか?」
イケメンコスプレの一人が私を睨みながらローブ連中に問い出すが、今、私の事男って言った?
男って言ったよね?
「もちろんでございます!ミスト様!
この方は救世主様でございます。見た目こそはひ弱な男性に見えますが、彼は正真正銘救世主様なのです!」
うん。こいつら私の事男だと思ってる……。
夢なのにムカつくな。
どこをどう見て男と間違える?
ふ・ざ・け・ん・な!?
いくらこれが私の夢であろうとも、言って良い事と悪い事あるよね?
確かに私は男と間違えられる事がある。
公共の女子トイレに入れば悲鳴を上げられる事もある。
スカートはいたら周りの視線が冷たく刺さった事もある。
同僚と買い物してたら、その彼氏に殴られそうになった事もある。
まぁ、言いだしたらきりはないが……。
だからといって、何が悲しくて自分の夢まで、こんなコスプレ野郎やローブ連中に男だと間違えられるなんて!!
なんたる侮辱!!
殴って良いですよね。
うん。これは私の夢だから殴って良いハズ。
「私は可憐な・・・女だぁぁあ!!」
目の前のローブの一人を投げ飛ばす。
ついでに、いけ好かないコスプレ野郎ミストの顔めがけてグーパンで殴りつけた。
おお!!何かすっきり!!
日頃のストレスが解消出来そうだ。
思わず顔がにやけて腹にも一発足蹴りしてしまった。
…………それにしても、殴った右手が痛い。
何故だ?
足にも変な柔らかいような堅いような感触も?
「これ夢だよなぁ?」
首を傾げて周りを見回すと、皆が皆、顔面蒼白しながら私を見ている。
やだ。恥ずかしい。そんなに見つめないでよ。
そして、殴り蹴り上げたコスプレ野郎は……。
何とも言えない気持ち悪い表情でこちらを見ている。
恋する乙女のような、先程睨み付けていた顔が一変して……。
うわぁ・・・鳥肌立ってきた。




