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小夜物語  small tales of long night   第15話   鬼婆の縄  A hag  knits rope (日本昔話より)

作者: 舜風人

むかーしのことじゃった。


ある村に小さな女の子がたった一人で住んでいた。



その女の子のおっとうはある日山へ樵に行って大きな木に押しつぶされた死んでしもうた。


その女の子のおっかあはそれを苦にして、病気になり、やがてほどなくして


おっとうのあとを追うように


亡くなってしまった。



女の子はたったひとりになり


これからどうしようかと考えた。


そうして

思いついたのは


おっかあが生前言っていたこんなことだった。


「いいか、おっとうは死んでしもうた。

  おらもいつ死ぬかもしれん、


もし、おらが死んで、お前ひとりになったら、


そんときはなあ、この縄をなって、売ってくらすんだぞ。いいか」


女の子は思い出して


おっかあのしていた


「縄ない」を見よう見まねでしてみた、



でも、、、


どうしても女の子の手力では弱すぎて


きりりと縄目を編むことができなかった。


編んでも編んでも、、


すぐにばらけてしまって


使い物にはならんかったのじゃ。


「おっかあ、おらにはどうしても力が足らん。


 おっかあ、おら、どうしたらいいだべ」


女の子は泣きながら遠くの夜空を見つめた。


すると、、


ススキが原の遠くから

かすかに


「泣く子は誰だ。泣く子は取って食ってしまうぞ」


という声が風に乗って聞えてきたのじゃ。


そうして


その声は次第に近づき


家の戸口に


口の大きく裂けた、ざんばら髪の、鬼婆が立っていた。


「ここの家の子か?泣いてるのは?


泣いてる子は取って食ってしまうぞ」


女の子は必至で涙をこらえて


「おら、泣いてなんかいねえ」といった。


「そうか?泣いてた声がしたような気がしたが、、


おお、ここに稲わらがあるじゃないか。


ちょうど、腹が減ったからこれでも喰って腹の足しにするか」


鬼婆はそういうと



稲わらを手づかみにしてむしゃむしゃと喰い始めた。


喰い終わると鬼婆は


「お前、、どうやら縄ないをしてたようだな。

さあ、続きをするがよい。

あそんでると今度はお前を食ってしまうぞ」


女の子は「でも縄の材料の稲わらをお前様が喰っちまったから


縄も編めないよ」というと、


鬼婆は


「おお、そうか、と言って口から稲わらの一本一本をするすると吐き出して


見せたのだった。



女の子はその稲わらに触ってみると、


その稲わらは、とってもやわらかくなっていて


まるで絹糸みたいで


女の子はするするとまるで手力もいらずに縄を編めたのでした。


出来上がった縄はぴんと張っても全く切れない


上出来の縄でした。


それを見た鬼婆は


「泣く子はいねえか。泣く子は取って食ってしまうぞ」とうたいながら


満足そうに


又、、山の方へ帰っていったそうです。




それから、女の子がどうなったか。


そして、鬼婆がどうしたか。


それは、、、、、


残念ながら伝わってはおりません。



昔々の


遠い遠い村での


お話でした。











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私の作品で、、続き物、連作、シリーズものを、すべてお読みになりたい場合には、「小説家になろう」サイトのトップページにある「小説検索」の欄に、読みたい連作シリーズ作品群の「共通タイトル名」を入力して検索すれば、全作品が表示されますので、たやすくお読みになれます。
















































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― 新着の感想 ―
[一言] 鬼婆とは見かけばかり。どうやら、本性は優しいもののけのようですね。 なんだか、うるっとしてしまいました。
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