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HAWK  作者: 大藪鴻大
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乱入

 先に述べておきますが、私個人としては、どんな理由であれ、人の命を奪うという選択はするべきではないと思っています。物語の中とはいえ、このような行動を看過していることをここでお詫びしたいと思います。

 

 さて、「タイムトラベル」の話でしたね。前回も述べた通り、物理学的な話はほとんど出てこないということ、私個人の勝手な解釈が混在してしまうということをご了承ください。

 今回は、準備として「パラレルワールド」について話をしたいと思います。「パラレルワールド」とは、「平行世界」という意味で、時間軸上同じ地点であるにもかかわらず、同じ三次元空間には存在しない世界のことです。とりあえず、この世界ではない、別の世界があると考えてください。

 そして、その世界は、私たちが選択することによって生まれます。例えば、今日は友人と遊びに行くか、一人で遊びに行くか、私たちはどちらか一方しか選べず、その日のその時間には、どちらかの人生しか生きることができません。実際には、その選択肢は多岐にわたります。

 しかし、過去に遡れば、その時間上で別の選択を選ぶということも出来るわけです。そして、別の選択肢の先には、別の展開があるはずです。つまり、過去に遡ることができたと仮定したとき、別の選択をした自分が経験することができただろう「仮定の世界」が「パラレルワールド」です。要するに、タイムマシンがなければ、その存在を確認できない世界だということです。

 ここで、私は面白いことを思いついたのです。続きは、また次回。

俺は少女に誘導され、倉庫の中に進んでいく。倉庫の入り口を見ていた中学生の集団がまず俺に気が付き、異変に気が付いたスーツ姿の男たちが一人ずつ振り返る。

「ねえ、子供が一人、盗み聞きしてたんだけど。どうする?」

 少女がスーツ姿の男に向かって話しかける。男たちは表情を変えなかった。こんなことには慣れているのかもしれない。

「余計なことはしなくていい。」

 男たちのうちの一人が、抑揚のない口調でそう言った。

「何よ。そんなこと言って、あとで困るのあんたたちだからね。」

 少女は男の一言が癪に障ったのか、怒りの籠った口調で言った。それを聞いた俺は、なぜか安心した。おそらく、俺という存在が、拳銃を目にして何も言えなくなってしまい怯えている中学生たちや、ちょっとした一言で感情を顕わにする少女よりも、スーツ姿の男たちに近いと感じたからだろう。あいつらは俺の仲間だという考えが、頭の片隅で光った。

「いじめにしては、随分大掛かりなんだな。」

 その場に立ち尽くす中学生たちに向かって発したその言葉は、静寂の漂う倉庫に響いた。中学生たちはその声に共鳴するように、身体を震わせる。

「君、今の立場分かってんの?何勝手にしゃべってんのさ。」

 少女が拳銃を押し付ける。先程と同じ動作だったが、今度は恐怖を感じることはなかった。慣れたというべきなのだろうか、それとも撃たれることはないと高をくくっているのか。

「なあ、いまさらこんなことしても意味ないんだよ。俺が何もしないで、ただ観察してただけだと思ってるのか?もう警察には筒抜けだよ。」

 咄嗟に考えた嘘であるにもかかわらず、声が震えることなく、滑らかにそう言えた。少女は動揺したのか、さらに拳銃を突きつける。

 このハッタリが、どのくらい効果があるのかは分からない。ただ、隙をつくり、あわよくば逃げ出すことが出来るのではないか、と考えていた。

甘かった。世の中、そんなに単純ではない。

「だったら、俺たちは既に捕まっているはずだ。なのに、俺たちは捕まっていない。どういうことか分かるよな。」

 スーツ姿の男が連絡事項を告げるように静かに言った。ハッタリは全く効果がなかった。

「それにしても、大したガキだな。そこで縮こまっているやつらより、よっぽど度胸がある。」

 そう言いながら、男はスーツの胸ポケットから拳銃を取り出す。先端には、長い筒状の物が付いている。ああ、あれが減音器か、とそこまでは冷静に関心を持つことが出来た。それをこちらに向けたとき、思考が停止した。

「残念だ。もっと別の形で会いたかったな。」

 嘘だろ。俺、死ぬのかよ。そう思ったのは一瞬だった。死んだら、全てが消える。言い換えると、生きていても、やがてすべて消える。だったら、どうでもいいじゃないか。俺はゆっくりと深呼吸をする。

 次の瞬間、俺は肘を曲げ、少女の腹部に肘打ちを喰らわせる。突然のことで、防御が出来なかった少女は、呻き声を上げる。すかさず、拳銃を奪い取り、少女に突きつける。スーツ姿の男たちは、何もせずにそれを見ていた。

 俺は愕然とした。男たちは俺が抵抗をしても何もしようとしなかった。それどころか、全く動じていない。釈迦の手の上の孫悟空とは、まさにこのことだ。

「終わりか?」

 いつの間にか、残りのスーツ姿の男たちも拳銃を構えていた。三つの銃口が俺を狙っていた。少女が何か叫んでいるが、男たちは聞き入れようとしない。

 一人の中学生が命を張っても、何も守れないのか。命は重いとはよく聞く言葉だが、本当は鳥の羽より軽いんじゃないか。俺は歯を噛みしめる。

「スイマセーン。お取り込み中、失礼しまーす。」

 スーツ姿の男のうちの一人が、中学生の集団を見る。中学生たちは息を飲み、震え上がる。こちらに銃口を向けたまま、入口を見やった男が何かを見つけたのか、動作を止める。他の三人も、入口を見る。

「えーっと。なんかたくさんいるんだなあ。どれがターゲットだ?あっ、大丈夫です。もう分かりました。」

 先程と同じ、場違いな口調と声色の声が聞こえるが、スーツ姿の男たちが邪魔で、その姿を見ることは出来ない。スーツ姿の男の一人が、入口付近に銃口を向ける。男が身体を捻る。影がその男に飛び込んでくる。そのまま膝をつき、前に倒れ込む。

「全然、遅ぇ。チンタラすんなよ。」

 残りの二人が、その影に銃を向けようとする。影はまず、右の男を切りつけ、そのまま左の男を切りつけた。男たちは声を上げることなく、その場に倒れ込む。男たちが倒れ込むと、影の姿がはっきりしてきた。

 男は黒いコートを着ていた。そのコートの奥が暗く、顔は見えなかった。手にしているサバイバルナイフのようなものから、何か液体がつたい落ちていた。黒コートの男は、手首を回すと、ナイフをこちらに向けてきた。

「俺を出し抜くなんて、少しはできるみたいだな。でも、囲まれてちゃあ、話にならねえよ。どうだ?助けてやったから、そいつは俺に譲ってくれないか?」

 静寂。そして、いくつもの悲鳴が響く。中学生たちが一目散に倉庫の入り口に向かっていく。それを黒いコートの男は皆いなくなるまで見送っていた。

「とまあ、ギャラリーもいなくなったことだし、そいつを渡してもらおうか。」

 俺は少女を見る。少女は男をまっすぐ見たまま、視線をはずそうとしなかった。身体が震えている。

「渡せって。」

 行動に移そうとしない俺に痺れを切らしているのか、男はナイフを持っていない手で促し始める。俺は、少女から銃口を離し、力を緩める。男の首が傾く。

「いやだ。」

 手の中にある拳銃の銃口は、男の見えない顔を狙っていた。わずかに震えているのか、狙いが微妙にずれる。

「逃げろ!」

 少女は、しばらく躊躇していたが、立ち上がると走り出す。男の横を通り過ぎるとき、正面を向いていたにもかかわらず、タイミングよく、男の手が少女の腕をつかんでいた。

「ご協力ありがとうございました。」

 男は少女を引き寄せると、首元にナイフを突き付けた。少女は短く息を吸う。

「離せよ!」

 なんだ?

「いやだね。めんどくさい。」

「撃つぞ!」

 どうして、こんなにムキになっているんだ?

「どうぞ、ご勝手に。」

 銃口は男の見えない顔を狙ったままだった。引き金を引けば、男は死ぬ。引けるのか。俺は、この男を殺すつもりなのか。殺すのか。男は微動だにしない。虚勢を貼っているようにも見えなかった。指が震え、うまく動かなくなっていた。引き金を引くか引かないか、その判断は、もう俺の意志ではできなくなっていた。


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