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HAWK  作者: 大藪鴻大
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愚かな少年

 この少年、前回の話を読めば分かるのですが、「成績は優秀だった。」とはっきり言っています。感情がないから、客観的な分析のみでそう判断したのでしょう。私だったら、謙遜してしまうか、傲慢になってしまいそうです。

 今回からすこし物語の雰囲気が変わります。前回までは、少し退屈だったかもしれませんが、今回から徐々に物語に動きが出てきますので、楽しんでいただければ幸いです。

 さて、「前書きを充実させる」と宣言した手前、何かしなければいけないのですが、少し長くなってしまったので、今回は次回から始める「前書きテーマ」を提示するだけでにしたいと思います。

 ズバリ、テーマは「タイムトラベル」。理由は?と尋ねられると、過去にやったゲームに感化されてテーマ設定をしただけです。そういうわけで、実は全然詳しくないです。専門的な話もなく、勝手な妄想と空想の話になってしまうと思うのですが、「全く的外れだけど、そんなこと考えているんだな。」と思ってお付き合いいただけると幸いです。

そんなある日、いつも通りいじめられているあいつと話していると、あいつに話しかけてくるやつがいた。体格がよく、髪を金色に染めた男と、身体も目も細く、髪を赤く染めたずる賢そうな男だった。おそらく、あいつをいじめているやつらなのだろう。彼らは俺を訝しげに見ると、笑いながらあいつに話しかけた。どこぞの倉庫に来いだのなんだのと言っていた。

そんな話を俺の前でしていいのだろうかと思いつつ、そうか、俺は数にカウントされていないのか、と思った。こいつの前で何を言っても、きっと誰にも言わないだろう、と。実際、その通りだ。あんなこと言ってたんだよ、と言ってその人のいないところで盛り上がる同級生の行動が理解できないくらいだ。そんなの目の前のそいつには関係ないだろ、と思っていた。それを聞いて盛り上がるやつも、何でそんなに盛り上がれるのか不思議だった。

 二人が去っていくと、そいつは変な笑みを浮かべた。きっと心の中が混乱しているのだ、と分かった。いじめへの恐怖と、俺にいじめられている現場を見られたいたたまれなさがごちゃ混ぜになっているのだろう。そいつは、頭を下げ、その場を立ち去ろうとする。

「なんなら、一緒に行ってやろうか?正面切って対峙するのは勘弁してもらいたいが、側にいてやるよ。」

 気が付けば、そんな言葉を口にしていた。愚かだ。そんなことは分かっていた。ただ、力になりたいと思っていた。そして、なんとかなるだろうという思春期特有の無謀な甘い考えもあった。


 俺は、家に帰り着替えると、早速出かけた。養い親は、珍しく外に出る俺を不思議に思ったようだが、友達と勉強してくる、というとなんとか納得したようだった。

 待ち合わせの公園に行くと、あいつは制服姿で待っていた。どうやら、そのままここに来たらしい。すぐに、目的地に向かう。

 目的地は古びた倉庫だった。周囲に人影はなく、なにをしても誰にも見つかりそうもないところだった。いじめる場所としては絶好の場所ともいえる。それじゃあ、ここで待っててよ、と言われ、俺は倉庫の入り口に無造作に置いてあったコンテナの後ろに隠れた。倉庫の奥に向かうそいつの背中は、あまりにも小さく、そのまま倉庫の闇に溶けてしまうのではないかと思われるほどだった。

 やつらは数分もしないうちに来た。直接姿を見たわけではないが、足音が聞こえた。ざっと五人くらいか。倉庫の奥に向かうので、そちらを見る。

 予想通り、五人があいつを取り囲んでいた。一体、何をしていじめているんだ。悲しいことに、俺の頭にあったのは、そいつをどう救うかではなく、いじめの現状を知ることだた。なにやら五人は話しこんでおり、いくら待てども何かが始まる気配はなかった。

 さらに、倉庫の外から足音が聞こえてきた。また来たのか。一体何人でいじめているんだ。しかし、今度の足音は先程とは様子が違った。今度の足音は革靴だった。俺は中の様子を窺う。スーツを着た男が三人。短い髪にサングラスをかけ、三人とも同じような外見だった。

そういえば、SPは個人を特定されないように皆同じような格好をするんだっけ、とどうでもいいことを思い出す。SPがこんなところに来るはずがない。だとしたら、そいつらが何者なのか、簡単に予想がつく。男たちのうちの一人が、ダークブルーのスポーツバッグを持っていた。

あいつも含め六人の中学生が、スーツ姿の男たちと話しこんでいた。体格の良い、金髪の男が、あいつの肩を強く叩き、前に押す。スーツの男の一人が、バッグを地面に置く。あいつが、それをゆっくりと抱える。茶髪の目の細い男がスーツの男から封筒らしきものを貰っていた。

なるほど。どうやらあいつは、犯罪の片棒を担がされようとしているようだ。いじめるのをやめてやるから協力してくれよ、とかなんとか言って、あいつに犯罪を犯させようとしているのか。そして、自分達は何のリスクもなしに金を手に入れる。

警察に連絡すべきだろうか?いや、今連絡するのはまずい。あいつは、得体のしれないバックを持っている。もし、あの中に麻薬か何かが入っているなら、それだけで犯罪だ。周りの五人も、自分達は無関係だと言い張るだろうし、あの三人の男たちにしても同じだ。だからといって、放っておくのも得策じゃない。

どうする。どうすればいい。一番いい方法はなんだ?いや、何考えているんだ。このまま、見て見ぬふりをすればいいじゃないか。そうすれば、俺には何の問題もない。わざわざ危険を冒してまで、あいつを救う必要なんてないじゃないか。

「ねえ、こんなところで何しているの?」

 心臓が強く脈打つ。走り出そうと足に力を込めたが、こめかみに何かを押し付けられた。

「残念。このまま帰すわけないじゃない。」

 拳銃だった。俺は拳銃を押し付けられていた。不思議なもので拳銃を押し付けられただけで、まるで釘で固定されたかのように、身動き一つ取れなくなった。

「とりあえず、お兄さんたちに挨拶に行こうか。」

 拳銃を突きつけているのは、俺と変わらないくらいの年齢の少女だった。初めて感じた感情が恐怖なんてな。情けないな。


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