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HAWK  作者: 大藪鴻大
16/19

烏とマグノリア

 新年あけましておめでとうございます。今年も、隙あらば物語を投稿していきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いいたします。


 さて、新年早々、謝らなくてはいけないことがあります。「年末も正月も関係なく投稿していきたい」と宣言していたにもかかわらず、実行できませんでした。もし、楽しみにしていた方がいたならば、この場を借りて謝罪したいと思います。大変、申し訳ありませんでした。

 この物語も、もうすぐ終わります。前回と同じく、最後にはおまけコーナーも設けるつもりですので、よろしくお願いします。

男の後を追うのは簡単だった。男は周りを全く警戒していないようで、隠れながら尾行するのも馬鹿らしくなるほどだった。いつも思うことは、尾行されている人にこちらは見えないのだろうが、第三者はきっと隠れながら道を歩く俺たちのことを不審に思い、その奇妙な光景に笑いたくなるのではないかということだった。

やがて、人通りが少なくなる。全く人通りがないところでぶつかるというのも、怪しまれるということで、ここで行動に移すことにする。俺は足を踏み出し、ゆっくりと速度を上げていく。もう少しで、ぶつかる。そう思ったとき、男が振り返った。笑っている?男にぶつかる。倒すつもりでぶつかったのだが、男はビクともせず、むしろ、こちらの体勢が崩された。

「大丈夫か?」

 目尻に皺を寄せ、男が笑う。目の下に刻まれた深い皺が印象的だった。俺は、男の気を引くために、言葉を考える。

「すいません。よそ見をしていて。怪我してないですか?」

「優しいんだな。だが、この荷物は渡せない。」

 男が身体を捻り、すぐ近くまで来ていた鳶を突き飛ばした。いや、男は軽く押しただけだった。鳶が大きく後ろに跳んだのだ。男はなにがおかしいのか、また目尻に皺を増やし、笑う。

「作戦は失敗だな、鳶。」

「何であんたがこんなくだらない仕事してんだよ。」

「雑用の出来ないやつは、大きな仕事も出来ない。」

「そうかい。だったら、失敗するわけにはいかねえな。」

 男と鳶はどこか親しげに話をする。二人は顔見知りなのだろうか。だが、仲間と言うことでもなさそうだった。俗に言う、腐れ縁というやつだろうか。鳶が、構える。腰に手を伸ばしている。

「物騒なことはないんじゃなかったのか。」

 思っていたことが口から出てきた。鳶と男がこちらを見る。見られても、困る。鳶が構えを解く。

「まあ、依頼された仕事ってわけでもないしな。ここであんたと揉めて、運び屋との関係が悪化するのもなんだし、鷹もいるし、今日は見逃してやるよ。」

「鷹?そこにいるやつの名前か。」

「そうだよ。俺の弟子なんだよ。いい名前だろ。」

鳶が文字通り胸を張る。男がこちらを見る。男の眼は、人を威圧する眼ではなかった。その眼に意味などなかった。全てを受け入れ、全てをあるがままに捉える、そんな眼をしていた。

「鳶が鷹を産むということか。なかなか、面白い。」

「こいつ、この間、烏と勘違いされたんだよ。笑えるだろ。」

 先程の緊迫はどこにいったのか、いつの間にか鳶と男は道の真ん中で世間話を始めていた。まるで、偶然会った昔の同級生同士みたいだった。

「知っている。雀の『子供』が愚痴をこぼしていたらしいぞ。変なやつに邪魔されたって。」

男が再びこちらを向く。目を細める。なぜか身体が固まる。

「んだよ。また弟子かよ。あいつ、何人弟子とるつもりだ。」

 どうやら、弟子のことを『子供』と呼ぶらしい。鳶の弟子が鷹。鳶の『子供』が鷹。なるほど。

「『マグノリア』がいたらしいな。」

 男が俺に話しかける。やや低めの声は、威圧感がないものの、ある種の重量感を伴っていた。何と答えたらいいのか分からず、首を傾ける。

「そいつは大丈夫なのか。」

「まあ、大丈夫だろうな。その女が『マグノリア』って決まったわけじゃないしな。実際、その女は烏とこいつを勘違いしたんだぜ。むしろ、『マグノリア』じゃないって思うのが普通だろ。」

 代わりに鳶が答える。マグノリア?そういえば、そういう名前の花がある。烏を知っている女のことを『マグノリア』と呼んでいるのだろうか。

「マグノリアに関する情報はないのか?」

 男がこちらを見る。目尻に皺を増やし、笑う。

「残念だが、ほとんどない。若い女性であるということと、業界の人間ではないという情報しかない。あとは全部デマだ。烏を見つける手掛かりだというのに、烏と同じくらい情報がない。おもしろいだろ。」

「あっ、言うんじゃねえよ。こいつに情報収集させようとしたのに。先入観植え付けられちまったじゃねえか。」

 悪かったと男は肩をすくめる。鳶は軽く舌打ちをする。鳶は鳶なりにいろいろ考えていたらしい。

 結局、男の荷物を奪うことなく男と別れた。鳶の横顔を見ると、どこか満足げな表情をしていた。もしかしたら、あの男と会うことが目的だったのではないか。


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