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HAWK  作者: 大藪鴻大
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鳶が生むもの

 今、物語を制作しているのですが、実は、いろいろ悩んでいます。

 というのも、今、制作している物語は、完全オリジナルではないのです。むしろ、原作というべきものにほとんど依存している物語なのです。ただ、そこに自分なりの解釈とアレンジを加えているだけのものです。芥川龍之介の『羅生門』みたいなもの、といえば聞こえはいいですが、簡単に言ってしまえば、二次創作というやつです。

 なので、その物語を完成させたところで、どこにも発表できないわけです。ただ、「この物語を皆さんにも見てもらいたい。」、という気持ちもあります。

 完成したら、投稿したい。でも、投稿するにはいろいろ問題がある。そういうわけで、今、悩んでいます。

鳶の言葉を真に受けたわけではないが、高校で俺は部活動をしなかった。勉強に集中したいからという理由もあるにはあったが、最大の理由は、美術部の部員がかなり多いということだった。他の学校には見られない現象のように見えたが、ただ所属しているだけ、という部員がなぜか多かった。

おかげで、美術部はただの溜まり場になっており、美術部に所属したのはいいものの、美術室に足を運んだのは一日だけだった。

 俺は、高校で學校生活は終わるものだと思い込んでいたが、養い親は大学まで行っていいよ、と言いだした。そんな費用があるのか、と尋ねると、国立に行けばいいじゃない、と言ってくれた。

養い親は俺に期待しているようだった。期待されるのは、悪気がしなかった。ただ、なんでここまでしてくれるのか、よく分からなかった。人のために無償で何かをするということをどうして出来るのか、俺にはよく分からなかった。


 その後、体育祭というイベントがあった。盛り上がるやつもいれば、そうでもないやつもいた。その日、俺はずっと空を見ていた。雲ひとつない、快晴だった。傍から見ていたら、陰気なやつにしか見えなかっただろう。

正確には、空を見ていたわけではない。空の彼方で旋回する鳥を見ていた。その鳥は、ゆっくりとある一定の軌道に沿って旋回していた。時折、甲高い声が空を貫き、ここまで聞こえる。猛禽類であることは分かったが、その鳥が一体何であるのかははっきりしなかった。ただ、数が多く、よく見かけるのは鳶だ、とは思った。

すっかり空が橙色に染まったころ、体育祭が終わり、俺は下校した。すると、校門の外で鳶が待っていた。

「お疲れ。なかなか健闘していたじゃねえか。」

 まるで、友人や家族の一人のようなことを言う。一体あんたは俺にとってのなんなんだ。返事をすることなく、その場を立ち去ろうとする。

「一〇〇メートル走は決勝進出。結果、三位。陸上部が二〇〇メートルや四〇〇メートルに分散していたことを考慮しても、なかなかの成績だ。騎馬戦では騎手で、四人抜き。馬がヒョロヒョロだったにもかかわらず、蹴散らした数は一、二を争う。」

 鳶が今日の体育祭の評価をする。一体どこで見ていたのだろうか。鳶に評価されると、なぜだか偉業を成し遂げたように聞こえる。

「流石だな、鷹。」

 俺は鳶を見る。鳶と視線が合う。鳶は笑みを浮かべる。作り笑いだ。

「おまえの名前だよ。そういや、名前付けてなかったなあ、と思ってよ。『鳶が鷹を生む』、っていう諺あるだろ。ちょうどいいなと思ってつけたんだけどよ。気に入ってくれたか。」

 ちょっと待て。鳶は着々と俺を巻きこむ準備をしている。警察に言うべきなのではないか。変な男に付きまとわれていると、相談しようか。捕まえることは出来ずとも、少しは効果があるのではないか。

「俺の名前は、タカヒロだ。」

「知っている。しかも、名字は鷹西っていうんだろ?なおさらぴったりじゃねえか。名前に鷹が二羽もいる。」

 いつの間にか、俺は鳶と一緒に歩いている。何で知っている、とは思わなかった。いまさら、名前がばれたくらいで驚かない。俺の名前くらい、簡単に調べられるのだろう。

「何でも知ってそうだな。」

「そりゃ、そうだ。鷹は俺の弟子だからな。弟子のことは何でも知っておかなきゃいけなねえ。当然、弟子を守るのも俺の役目だ。」

「それじゃあ、質問がある。」

「ファミレスじゃなくていいのか?」

 鳶が笑みを浮かべる。見え透いた作り笑いだ。

「過去に俺の身に何が起きた?」

 鳶の笑みが消える。笑みが消えたからといって、不快になったということではないのだろう。もともと、作り笑いだ。

「俺が孤児だったのも知っているんだろ。だが、俺にも親がいたはずだ。その経緯を知らない。もしかしたら、あんたが俺に必要以上に付きまとうのも、それが関係しているんじゃないのか。知っているのなら、教えてくれないか。」

 鳶が目を細める。その表情は、まさに獲物を狙う鳶のようだった。こちらの心の内を窺う目だ。

「知って、どうする。」

「どうもしないさ。ただの興味だよ。」

「知ったら、おまえは後戻りできない。俺はそれで一向に構わないが、おまえはそれでいいのか。」

 鳶が立ち止まる。俺は数歩先に行き、振り返る。

「これは、丸暗記のお勉強とは違う。覚悟は出来ているのか。人生の大転換に、おまえは耐えられるのか。」

「そこまで言われたら、なおさら気になる。」

 虚勢ではなかった。かといって、実感がないわけでもなかった。ここまで話を引っ張られたら、何か重大なことが隠されていることぐらい容易に想像が出来る。ただ、今回もいつもと同じだった。だからどうした、と。

鳶が短く息を漏らすと同時に、短く笑い声を上げる。そうだよ。おまえはそういうやつだったよ、とつぶやく。

「なあ、やっぱり俺の弟子にならないか。部活だって、ろくにしてないんだろ。部活だと思ってよ、修業しないか?」

「質問に答えろ。」

「答えてやるよ。俺の弟子になったらな。」

「断る。」

「あのなあ。確かに、おまえには才能があるよ。おまえなら、上手く生きていける。だけどな、まだまだなんだよ。今のままじゃあ、足りないものの方が多いんだよ。誰かに頼らなきゃいけないんだよ。」

「それでもいい。」

 鳶が、軽く首を左右に振る。流石に呆れたのではないか。俺は期待した。過去のことを聞けないのは心残りだが、このまま、俺に幻滅して、鳶が俺のもとを去っていくのは好都合だった。

「仕方ねえな。やっぱ、どんなに頭がよくても、実際、経験しないと分かんねえよな。」

 鳶の目が冷たくなる。身震いがする。まるで、温かい部屋から吹雪の外に出たときみたいに、身体が震え、固まった。あの日、鳶と初めて対峙した時と同じだった。気が付けば、俺たちは人通りのないところにいた。

「喧嘩したことあるか?ねえよな。ないから、そんな堂々としていられんだろ。」

 マズイ。逃げろ。そう何度も念じるが、身体が動かなくなっていた。なんで、こんなときに限って怖がるんだよ。


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